H&M、有機フッ素化合物(PFCs)の使用を
2013年1月から全面禁止
(Photo by Evan Agostini/Elevation Photos, courtesy of H&M)
ファストファッションブランドのH&Mが、有機フッ素化合物(パーフルオロ化合物:PFCs)の使用を、2013年1月から全面禁止することを発表しました。
有機フッ素化合物類とは、人工的に作られた化学物質。
耐火性や油、シミ、水を弾く性質があるため、撥水加工やシミ防止加工が施された服、撥油性の食品用容器包装、焦げ付き防止加工の鍋など、さまざまな製品に広く使われています。
ところが、有機フッ素化合物は分解されにくく、環境中に長期にわたり蓄積します。
そのため、自然界には存在しない人工化学物質であるにも関わらず、河川、海、地下水、土壌、水生・野生生物体内など、自然界のあらゆる場所から検出されています。
そして、食物連鎖の下位から上位の生物へと生物濃縮されるため、食物連鎖の最上位にいる人間の体内にも多く蓄積されています。
生物の体内に長く蓄積された有機フッ素化合物は、生殖不全や発育不全などを引き起こす可能性があります(米環境省)。
今のところ、人間には「明らかな悪い影響は見られていない(米環境省)」とされていますが、動物で明らかな兆候が見られるのですから、人間にも起こり得るでしょう。
有機フッ素化合物のうち、有毒性が高いとされるパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)は、欧州では使用が禁止されていますが、アメリカや日本では不可欠用途以外は原則禁止とされるに留まっています。
同じく有毒性の高いパーフルオロオクタン酸(PFOA)は、アメリカでは環境省より自主的な段階的廃止が呼びかけられ、主要化学メーカー8社が2015年までに排除することを約束しています。
しかし実際には、未だ最適な代替物質が見つかっていないため、多くの企業が危険性を認識したうえで使用し続けています。
動き始めたアパレル業界
繊維生産で有機フッ素加工物を多く使用するアパレル業界では、昨年環境団体のグリーンピースが業界の有害物質事情を調査暴露した報告書「ダーティランドリー」を発表して以来(詳細はこちら)、有害物質規制を強化する動きが見られます。
パタゴニアやナイキ、アディダスなど、ダーティランドリー発表以前からPFOSやPFOAを規制しているアパレル企業はありますが、機能性を求めるスポーツ・アウトドアアパレルで両物質の完全排除を実現している企業はまだありません。
機能重視でないとはいえ、有機フッ素化合物の全面禁止を表明した企業はH&Mが初めてでしょう。
ただし、H&Mは、有機フッ素化合物の代わりに使用する「代替物質は撥水性と安全性の両基準を満たす」としていますが、どのような物質を使用するのかは公表していません。
機能性も安全性も兼ね備える物質が本当にあるのなら素晴らしいことですが、規制強化をアピールすることが優先され、安全性が十分に検証されないまま代替物質が採用される可能性が懸念されます。
H&Mは、ファストファッションでありながら、環境・社会負荷削減に力を入れている稀有な企業。
1995年から有害物質削減に取り組み、2011年には3万回以上の化学物質検査を行っています。
私たち消費者にできることは、環境や自分の体に負荷を掛けてまで、本当に撥水性のある服が必要なのか、購入する際に立ち止まって考えること。
既に持っている服や古着で対応できるのならば、新たに購入する必要はないでしょう。
物で溢れ返る現代社会。
必要でないものを購入することで、環境が汚染され、気候変動に繋がり、私たちや子供たちが生き難い世の中になっていくということ、頭の片隅に置いて行動しましょう。
H&M
ウエブサイト:http://www.hm.com/
2012/09/12