H&M財団、支援のテーマを消費者の投票で決定

H&M vote for difference
(Photo Courtesy of H&M )

ファストファッションのH&Mが、創業者一族が出資する財団「H&Mコンシャス財団」の今後数年間の支援活動のテーマを、消費者や従業員の投票で決めることを発表しました。

支援総額は、約77億円 (5億スウェーデン・クローナ)。

「女性の自立」「自然資源の保全」「自立支援による貧困削減」「水の浄化」「教育を受ける権利の創出」の5つの中から、緊急性が高いと思われるテーマ1つを、「変化のための投票(Vote for Difference)」と題したウエブサイトから投票できます。
期間は1週間(10月22~29日)、 誰でも投票できます。

終了後、投票数が最も多い3つのテーマが選ばれ、世界的に有名な3つの国際的な非営利組織と提携して、支援を行います。
それに加え、H&Mの店舗がある国でも、テーマに沿った地域独自の支援活動が行われる予定だそう。

このキャンペーンには、ヴァージングループ創始者のリチャード・ブランソン氏や、スーダン出身のスーパーモデルで米難民審議会のメンバーでもあるアレック・ウェックさんなど、世界各国から7人の著名識者が参加。
各人がテーマを1つ選択して意見を述べています。

投票開始当初は、「水の浄化」と「自然資源の保全」が拮抗していましたが、3日目の現在、「水の浄化」が34%と圧倒的に多く、「教育を受ける権利の創出」が18%、「自然資源の保全」と「女性の自立」が17%、「自立支援による貧困削減」が13%となっています。

面白い企画、でも人気がない理由

77億円分もの支援先を消費者や従業員に決めてもらうというのはなかなか面白い企画ですし、財団の透明性を高めるという点でも良いことですが、このキャンペーン、なぜかほとんど報道されておらず、あまり人気がない様子。

なぜなのでしょう。

ひとつは、投票者にとって直接的なメリットがないことでしょう。
購入した商品の収益の一部を寄付したり、投票した分だけ支援額が増えたり、市民の社会貢献プロジェクトに寄付したり、という消費者参加型のコーズマーケティングはよくありますが、このキャンペーンはただテーマを選ぶだけ。

たとえタダでも、社会のための投票に時間を割こうと思う人は、まだそう多くはないのでしょう。

もうひとつは、選択肢が5つしかなく、どれもが重要なテーマであることでしょう。
5つから1つに絞るならまだしも、3つも選ばれるなら、いっそ5つ全部を選び予算を5分割すれば良いのでは、と思われたのかもしれません。

さらに、キャンペーンのプロモーションが少なく、投票期間は一週間とかなりの短期であること。
あくまで財団の活動ですから、派手なマーケティングはできないのでしょうが、H&Mのウエブサイトにリンクが貼られている程度で、通常のキャンペーンと異なり動画などもなく、かなりシンプルです。

もう少し良いやり方があったのかもしれませんが、H&M顧客の中には、こうした問題が起こっていることを知らないもいるでしょうから、たとえメディア露出が少なくても、こうしたキャンペーンを行うことは大切なことです。

H&Mは、ファストファッションでありながら、サステイナビリティに真剣に取り組んでいる企業。
たくさん資源を使って低価格でたくさん売るビジネスモデルですから、たとえその収益で社会貢献をしても、持続可能とはいえないでしょう。
しかし、それを補うかのごとく、オーガニックやリサイクル繊維を多用し、デニム生産における水の使用量を削減し、生産時の搾取がないよう、厳格な労働基準を定めるなど、持続可能性の追求に注力しています。

できる限り必要でないモノは買わないほうがよいですが、どうしても欲しい、でも品質が良く高いモノを買う余裕がない、という場合は、申し訳程度に社会貢献活動を行う他ブランドよりは、H&Mを支持する方が有意義でしょう。

いずれにしても、投票は無料です。
これぞと思う分野に、社会を変えるための一票を投じてみてはいかがでしょうか。

H&M Vote for Difference
ウエブサイト:http://makeadifference.hm.com/

2013/10/24

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