ヘンプ(麻) hemp
(Photo by bartpogoda from Flickr.com)
賛否両論ある素材、ヘンプ(麻)。
なぜ賛否両論なのかというと、規制薬物である大麻との混同・悪用が多いから。
でも実は、ヘンプはとてもサステナブルな素材なのです。
ヘンプは、麻科の植物。
繊維は、服やバッグ、靴の素材になるだけでなく、紙やプラスティック、バイオ燃料の原料にもなり、種やオイルはボディケア用品、食品、薬の原料にもなるなど、幅広い用途で使える植物なのです(Vote Hemp)。
ただし、ヘンプは麻などと同様に硬い素材なので、服の素材としてそのまま使用するには限りがありますが、シルクやカシミヤとの合繊にすると、やわらかく肌触りのよい素材になります。
しかも、ヘンプは栽培が簡単。
早く成長し深く根を張る性質があるので肥料を必要とせず、強い草なので殺虫剤も除草剤もほとんど必要ありません(グリーンファッションより)。
自然にオーガニックで育つ性質を持っているのです。
それに、産業用ヘンプとマリファナとして知られる薬物ヘンプとは、同じ植物ではあるものの、種類が異なります(米農務省:Industrial Hemp in the United States)。
ヘンプに含まれている、精神活性作用を引き起こす成分THC(テトラヒドロカナビノール)は、マリファナには3-15%含まれていますが、産業用ヘンプに含まれているのは1%未満。
また、両者は見た目では区別がつきませんが、栽培方法が異なります。
産業用ヘンプは茎や種を使用するので、茎が上に伸びるように密生状態で育てます。
一方、薬剤用ヘンプは葉と花を使用するので、葉が横に伸びるように間隔をおいて栽培します。
そのため、産業用と偽って薬剤用ヘンプを栽培することは難しいとされています。
にもかかわらず、アメリカの規制薬物法では、THC含有量にかかわらずすべてのヘンプを規制薬物と指定しています(FDA:Controlled Substances Act)。
ただし、産業用ヘンプの栽培・生産可否は州法が優先され、昨今は多くの州で規制が撤廃される傾向にあります。
現在、29州で産業用ヘンプの規制撤廃を求める法案が提出され、17州で可決、ハワイやケンタッキーなど9州で生産・研究用の栽培に関する規制撤廃が実現しています(Vote Hempウエブサイトより)。
諸外国でも、産業用ヘンプの規制緩和は進み、イギリス、ドイツ、オーストリア、スイス、カナダ、オーストラリア、中国、ロシア、ハンガリーなど多くの国で栽培が合法化されています。
日本では、免許を取得している人のみが栽培できます。
なんだか、ヘンプって、人間を試しているように感じませんか。
人間の邪心を抑えることができれば、こんなに優れた素材はない。
でも人間は邪心を抑えることができない・・・ヘンプは人類に課された課題なのかもしれませんね。
米農務省 「米国の産業ヘンプ」
ウエブサイト:http://www.ers.usda.gov/
ヘンプ産業アソシエーション
ウエブサイト:http://www.thehia.org/
Vote Hemp
ウエブサイト:http://www.votehemp.com/
2012/01/20 訂正
2008/07/18