H&M、2012春夏コンシャス・コレクション
発売開始
(Photo by Kacper Kasprzyk, courtesy of H&M)
サステナビリティに力を入れるファストファッションブランド、H&M。
恒例となった春の「コンシャス・コレクション」が、発売開始となりました。
これまでのコンシャス・コレクションと異なるのは、レッドカーペット・ドレスが加わったこと。
「エクスクルーシブ・グラマー・コンシャス・コレクション」と名付けられた、環境に配慮した素材のフォーマルドレスの数々。
全世界で100店舗のみの限定販売で、199ドル、299ドルとH&M標準よりはるかに高い価格で販売されています。
特に、オーガニックコットンとシルク製のロングドレス(下写真:299ドル)は、1,000着限定でシリアルナンバー入りです。
(Photo by Kacper Kasprzyk, courtesy of H&M)
使用している素材は、オーガニックコットン、オーガニックヘンプ、リサイクルポリエステルなど。
2011秋冬シーズンから導入しているオーガニックヘンプは、まだ市場にあまり出回っていない稀少な素材。
ヘンプは元々農薬や肥料をあまり必要としない植物ですが、ドラッグの大麻との混同から栽培規制を行う国が多く、オーガニック認証システムも確立していないため、認証済ヘンプを入手するのは難しいのです(詳細はこちら:ヘンプ)。
同社が採用したことでオーガニックヘンプが世界的に普及すれば、繊維市場の環境負荷削減に大きく貢献することになるでしょう。
コレクションの発売に先駆け、ミシェル・ウィリアムズ、アマンダ・サイフリッド、ヴィオラ・デイビス、クリスティン・デイビスなどの著名セレブが、レッドカーペット・イベントでこれらアイテムを着用したことでも話題になりました。
ミシェル・ウィリアムズが着用したアイテムは、彼女のために特別に作られたものなので、同じ商品は販売されませんが、似たようなトップスとスカートが販売されています。
その他3名の女優が着用したドレスは、限定店舗にて販売されています。
(Photo by Terry Richardson, courtesy of H&M)
通常の「コンシャス・コレクション」も、広告写真をテリー・リチャードソンが手掛けるなど、力を入れています。
レディースは、ピンクをメインカラーとするフェミニンなコレクション。
100%リサイクルポリエステルの春らしい花柄のブラウス、97%オーガニックコットン・3%伸縮素材の総レースのミニドレスなど、女性らしいアイテムが揃っています。
(Photo by Terry Richardson, courtesy of H&M)
メンズは、変わらず人気のプレッピー。
ラペルにパイピングの入った55%オーガニックコットンのジャケット、オーガニックコットンとリネンのパンツなど、着回しやすい定番アイテムを揃えています。
コンシャス・コレクションの発売開始と同時に、同社はサステナビリティ・レポートを発表。
2002年から公表し、今年で10年目となります。
同社CEOのカール・ヨハン・パーソン氏は、レポート内で「年に10-15%店舗数を増加することが目標」と拡大路線を崩していないものの、次のように述べています。
「この目標を達成するために、世界のより多くの人々に手に届く価格でサステナブルファッションを提供したいと考えている。
そのためには、H&Mだけでなくファッション業界全体が抱える問題、たとえば、気候変動、提携工場における労働条件・賃金、自然資源の長期的な入手可能性などに取り組まなければならない。」
「H&Mの企業規模と世界中での事業展開から鑑みれば、我々は世界的に大きな影響力を持っていることがわかる。
この影響力を無駄にすることのないよう、我々はコンシャスな活動を行うことによって、変化を生み出さなければならないと考えている。」
必要以上に安い価格で大量の商品を提供するファストファッションという事業を行う以上、環境・社会面でサステナブルにはなりえません。
しかし、パーソン氏が述べているように、同社の影響力を駆使すれば、サステナビリティの概念を世界に普及し、気付きを生み出すことは可能です。
いずれ、多くの人がサステナビリティの重要性に気付けば、ファストファッションという業態は立ち行かなくなるでしょうが、そうなるまでには時間がかかるでしょうし、少なくとも、何も対策を行っていない他のファッションブランドと比べれば、同社の活動は意義あることといえます。
服やバッグや靴を買うのなら、一生使えるもの、子供や孫の世代にも引き継げるものを選ぶのがサステナブルですが、それが難しい場合は、社会に変化を起こすために努力を続けているH&Mのコンシャス・コレクションを購入し、できるだけ長く愛用するとよいでしょう。
H&M
ウエブサイト:http://www.hm.com/
2012/04/13