デニムと環境の関係

denim
(Photo by Shooting Nouns from flickr.com)

いまや持っていない人なんていないであろう、定番アイテムのジーンズ。
実は、環境への負荷がとても高いってこと、ご存知でしょうか。

リーバイ・ストラウス社が行ったジーンズのライフサイクルアセスメント(環境・社会への負荷テスト)によると、1本のリーバイス501が繊維から商品になり、販売され着用されて捨てられるまでに、なんと、

  • 車で125km走ったのと同じ量(32.3kg)のCO2
  • シャワーを53回(1回7分)浴びたのと同じ量(3,480.5ℓ)の水
  • プラズマテレビを318時間見続けたのと同じ量(400メガジュール)の電力

が消費されていることがわかったのだそう(リーバイスウエブサイトより)。
たった1本のジーンズでこの量とは、驚きです。

また、同アセスメントでは挙げられていませんが、素材となるコットンの栽培時、あるいは生地・製品の染色時に使われる有害物質が環境を汚染していることも、見逃せない事実。

デニムは色落ち具合によってかっこよさが大きく変わってくるので、「染め」や「洗い」がとっても大切。
でも、そうした作業には大量の水や有害物質を使用するため、環境への負荷が高くなってしまうのです。

デニムといえばインディゴですが、あの藍色を出すためには「インディゴ」という天然顔料を使用します。ところが、インディゴは色落ちしやすいため、さまざまな化学薬品(定着剤)を使用して色を落ちにくくしなければ、売り物になりません。
同時に、何度も染め直して独特の色味を出したり、特殊加工やわざと色落ちさせて使い込んだ風合いを出すために、何度も洗いをかけたりします。
もっとも、扱い難い天然インディゴに代わり、最近では化学薬品で作られた合成インディゴという染料を使用することが多く、現在のジーンズはほとんどが合成品といわれているほど。
それをさらに洗ったり薬品で色落ちさせたりして加工を加えるのです。

洗うということは当然水を多く使用しますが、アメリカなどの先進国を含め世界中の多くの地域が深刻な水不足に陥っている状況で、デニム生産のために大量の水を使用するのは問題です。
また、加工の際に使用した薬品や有害物質をきちんと処理せずに廃水してしまえば、それが海や川に流れ、水中生物の生態系を侵すだけでなく、地中に滲み込み、土や地下水を通して私達が食べる農作物や水にも影響を及ぼします。

それに、ほとんどのデニムはコットン素材から作られていますが、コットンの原料となる綿花は栽培の際にたくさんの水や農薬を必要とする植物であることも、環境負荷が高い大きな要因。

だからこそ、多くのデニムブランドが、少しでも環境負荷を減らすようにと、懸命に努力しています。

ルームステイトデル・フォルトなどのオーガニックデニムブランドはいうまでもなく、Jブランドやセブン、ジョーズ、ペイジ、アーネストソーン、チップ&ペッパーなど元々エコをコンセプトにしていない人気デニムブランドでも、100%オーガニックコットンのジーンズを続々投入。
さらに、デニム大手ブランドでも、企業全体としてオーガニック化やエコ化が加速しています。

リーバイスは、「リーバイス・エコ」というオーガニックコットンやリサイクルコットンを使用したデニムラインを展開するほか、生産時の有害物質を削減すべく、工場に厳格な基準を設定。遵守していなければ、その工場との取引は行わないという厳しい規則を設けています。

ギャップ社は、08年12月、傘下の「ギャップ」「オールド・ネイビー」「バナナ・リパブリック」3ブランドのデニムの洗い工場に対し、厳格な廃水基準を設定。
09年秋に発売された「1969プレミアムデニム」には、ポケットの裏に以下の文言を記載し、「クリーン・ウォーターマーク」を表示しています。

「The water used in the process of washing & dyeing these jeans has been specially treated to ensure it is safe & clean when it leaves the factory.」
(このジーンズの洗い・染め工程で使われた水は、特別な処置を施し、安全できれいな状態で廃水していることを保証します。)

でも、何よりも知っておかなければならないのは、ジーンズを購入した後に、洗いや染色の時よりもはるかに多いエネルギーが消費されるということ。
ジーンズが生まれてから捨てられるまでのライフサイクルの中で、エネルギー消費量や水量が群を抜いて高いのは、家庭で洗濯する時なのです(リーバイスのライフサイクルアセスメントより)。

つまり、オーガニックコットンも排水基準も大事だけど、消費者である私たちができる限り洗濯を減らすよう、気をつけなくてはならないのです。
それが、環境負荷を減らす最良の方法なのです。

ジーンズは、はいているうちに色落ちもくたびれ加減も良い感じになってくるもの。
洗濯せずにはき続けることで、地球にもやさしく、見た目もかっこよくなり、一石二鳥。
環境のためにも、おしゃれのためにも、お気に入りのデニムはできるだけ洗わず、はき続けましょう!

2009/08/31

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