ミリオンツリーズNYC Million Trees NYC
ニューヨーク市内に100万本の木を植えるプロジェクト、ミリオンツリーズNYC。
ニューヨーク市の長期環境計画プランNYCの一環として2007年に開始した、民間団体との協業イニシアチブです。
当初は2017年までに100万本を植える予定でしたが、11年10月に50万本を達成。
11年末に発表されたプランNYC修正実行計画では、13年までに65万本を植え、4年前倒しで目標達成することになりました。
植樹の効果
植樹は、環境・経済・社会的な効果が期待できる、都市政策には欠かせない手段です(参考:ミリオンツリーNYC、米環境保護庁森林サービス課など)。
<環境効果>
- 二酸化炭素を吸収し、気候変動を抑える
- 雨水を吸収して葉や枝に蓄えて洪水を防ぎ、蓄えた水分を大気中に放出して循環する
- 有害物質を吸収し、大気を浄化する
- 建物や道路に日陰をもたらし、都市のヒートアイランド現象を防ぐ
- 鳥や虫などが集まり、生態系を保全する
<経済効果>
- 景観が良くなり、土地の資産価値が10-20%上がる
- 省エネ、節水、省資源、カーボンオフセットなどの環境効果により、1ドルの投資につき5.6ドルの経済効果がある
<社会効果>
- 環境効果や緑地での運動が行われることで、地域住民の健康を促進する
- 緑地でのイベント開催などにより、地域内の交流が生まれる
市民参加
しかし、木は、植えるだけではなく、その後の管理が必要です。
特に、排気ガスや騒音などのストレスに晒されやすく、コンクリートに覆われ土が少ない都市部では、人が手入れをしなければ木は育ちません。
そこで、ミリオンツリーNYCでは、市民のボランティア参加による植樹や植樹後の管理を促しています。
木を植える場所は、公園や公共スペースに48万本、街路樹として22万本を計画しているほか、希望する企業や個人宅など私有地にも30万本を予定しています。
私有地に木を植えたい個人や団体は、市から苗木を無料提供されるほか、木の育て方の講習にも無料参加できます。
また、公共スペースの木や街路樹の植樹作業や世話をするボランティアも随時募集しています。
「アダプト・ア・ツリー」という、木の「養子縁組」プロジェクトも実施しています。
市民が、自宅や会社近くの特定の木の世話を志願する仕組みです。
手続きは、ミリオンツリーNYCのウエブサイトにログインし、サイト内の地図から「アダプト(養子)」したい木を指定するだけ。
アダプトした人は、無料の講習に参加でき、手入れキットがもらえるほか、木の水遣りや草取りなど手入れをする度に、リサイクルバンクという企業のポイントを獲得できます。
リサイクルバンクは、リサイクルや社会・環境に良い行いをするごとに小売店やメーカーの割引クーポンが得られる民間企業によるサービスです。
街路樹は数が多く場所が分散しているため、市の職員だけでは管理が難しく、市民や地域の参画が不可欠です。
アダプト・ア・ツリーにより、特定の木を指定することで愛着が沸き、長期的な管理が期待できます。
多数の木を植えることにより、問題も発生します。
植樹後に、倒木や葉や花により道が塞がれる、日が当たらない、落ち葉の清掃責任が不明などさまざまな問題が起こり始めていますが(NY Times)、市民の積極的な関与により、こうした問題の発生・拡大を防ぐことができます。
現在、ニューヨーク市にある木は、520万本。
そのうち、街路樹は約60万本。
100万本を増やすことは容易ではありませんが、達成できれば、より緑豊かな都市になるでしょう。
人間は生態系の一部ですから、植物や動物と切り離して生きることはできません。
コンクリートに囲まれ自然とかけ離れた生活を強いられる都市部だからこそ、木々との共存が求められます。
世界中の都市でミリオンツリーズ運動が起これば、住民にとっても地球にとっても良い効果が生まれるでしょう。
Million Trees NYC
ウエブサイト:http://www.milliontreesnyc.org/
2012/03/09 訂正
2008/06/27