インテリアチェーン、イケアの有言実行

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(Photo by Tanenhaus from flickr)

"エコ"や"グリーン"ということばを目にしない日はないくらい、環境・社会問題対策を訴える企業が多い昨今。

ところが、いかにも環境や社会のことを考えているようにアピールしていても、実はグリーンをマーケティングツールとして利用しているに過ぎなかったり、集めた寄付金やリサイクル製品をどのように処理したのかが曖昧なままだったり。
あまりにエコやソーシャルを訴える企業が多すぎて、本気で環境・社会問題に取り組んでいる企業がいったいどのくらいあるのか、よくわかりません。

そんな中、環境・社会問題対策に熱心なスウェーデン出身のインテリアチェーン、イケアが、長年に渡って続けてきた植林活動の成果を発表し、有言実行を果たしたことを証明しました。

イケアは、2006年6月からアメリカン・フォレストという森林保護団体と提携し、"Plant a tree(木を植えよう)"プログラムを展開。
レジで顧客に1ドルの寄付を求める活動を行うとともに、イケア自身もアメリカン・フォレストに植林費用を寄付してきました。
その結果、4年間でアメリカ全土に150万本の木を植えることに成功したのです。

植林は全米各地で行われましたが、2002年に大規模な山火事が発生したカリフォルニア州マクナリーの森林再生プログラムに74,000本、2006年で起こったアリゾナ州の山火事跡地に15,000本というように、災害地域に対する植林にも力を入れていました。

イケアとアメリカン・フォレストは、今週土曜日の11月16日を"ツリーハガー・デイ(木を愛する日=環境保護の日)"と命名し、各コミュニティでのイベント開催を促しています。
全米のイケア店舗でも、先着数百名に苗木をプレゼントするなど、150万本植林達成記念イベントを開催する予定です。

木材保全はイケアの責任

イケアの木材に対する活動は植林だけに留まりません。
木材を提供するサプライヤーに対し、きちんと管理された森林から採った木材であることを証明するよう義務付けたり、森林の専門家を雇ってイケアの木材を供給する森林の管理や調査をしたり、山火事や不適切な伐採により破壊されてしまったマレーシアの熱帯雨林の再生プログラムに資金援助したり、FSC認証の知名度向上に力を貸したりと、さまざまな取り組みを行っています。

なぜイケアがこんなにも木材に関する取り組みに力を入れているかというと、イケアは木材を大量に使用する家具メーカーだから。
地球の貴重な資源である木をたくさん使用してビジネス活動を行っている企業として、伐採する森林の管理と使用した分を相殺するための森林再生活動に取り組むことは、最低限の責任だと考えているのです。

もちろん、イケアは木材だけを扱っているわけではありませんから、その他の分野における環境活動も行っています。

たとえば、店で販売する電球を環境効率の悪い白熱灯からCFLやLEDに切り替える活動を続けたり、ユニセフとのコラボレーションにより、ソーラーパネル付デスクライトSUNNANを一台売れるごとに一台を電気のない暮らしをする子供たちに寄付したり。

そして、ただ活動をするだけでなく、きちんと結果を追い、その成果を逐次公表しています。
白熱灯の取扱いは徐々に減り続け、今年度中にはゼロにする予定です。
2009年6月に開始したSUNNANキャンペーンは、1年でデスクライト売上個数が50万個以上に。その同数のライトをパキスタン北西部の国内避難民キャンプ、同じくパキスタンで電気のない生活をするバローチスターン州、インドのマハーラーシュトラ州、ラジャスタン州、アンドラ・プラディシュ州、グジャラート州、ウッタル・プラデーシュ州などに寄付しています。

大切なのは結果報告

イケアは、単なるポーズではなく真剣に環境・社会活動に取り組み、そして次々に目標を達成しているのです。

本来、何らかの取り組みを行った場合、その結果を利害関係者に伝えることは重要なことですし、特に企業が顧客を巻き込んで行った取り組みであれば、結果の公表は企業の義務といってもよいはずです。
ところが、エコやソーシャルな活動を行う企業の中で、そうした個別の取り組みに対して、きちんと成果を公表できている企業はどのくらいあるでしょうか。

消費者の側も、単に企業が主催する寄付やリサイクル活動に参加するだけでなく、その結果どうなったのかまで追跡している人はどのくらいいるでしょうか。

ビジネス活動は、地球の資源と人々の支えなしには実現し得ません。
資源の枯渇が懸念され、気候変動が疑う余地もなく私たちの生活に影響を及ぼし続けている現代において、環境問題を考えずにビジネスを行うことはできないはずです。
そして、最終的に人々の支持を得ることができるのは、目先の売上や利益に捕らわれず、正しい活動を行った企業となるはずです。

環境・社会問題を解決するのは簡単なことではありませんが、イケアのように、長期にわたる活動でもきちんと目標を設定し成果を追い続ければ、たとえそれが小さな一歩であっても、本当に意味のある環境対策を実践したといえるのではないでしょうか。

私たち消費者も、厳しい目で企業を見守り、有言実行できる企業の活動を支持することで、市民の力による企業活動の統制ができ、その結果、より良い世の中、より良い製品を得られるようになるのかもしれません。

次にエコ・ソーシャルイベントやキャンペーンに参加するとき、ちょっとその先の結果まで気を配ってみてはどうでしょう。たとえ小さな力でも、本当の意味で社会を変える大きな力となるのかもしれませんよ。

IKEA
ウエブサイト: http://www.ikea.com/

2010/10/12

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