ニューヨーク市、
サステナブル戦略「プランNYC」の成果発表
ニューヨーク市が、2007年にサステナブル戦略「プランNYC」を発表してから、早6年。
この間、ニューヨークを「よりグリーンでより素晴らしい都市」にするために、緑地開発、水質や大気質の改善、廃棄物や温室効果ガス排出量削減、環境に配慮したエネルギー・交通の実現など、さまざまな政策が行われてきました。
プランの中には、目標年を2015年、2020年、2030年に設定している項目もあり、まだまだ進行途上ではあるものの、サステナブル化を促進してきたマイケル・ブルームバーグ市長が今年末で任期を終えることもあり、市はこれまでの成果をまとめて発表しました。
2011年に設定したプランNYC実行計画は、10カテゴリ127項目(その後、132に拡大)。
過去7年間で何を達成できたかを、カテゴリごとに明示しています。
- 住宅と地域
目標: 良心的な値段でサステナブルな住居を約100万戸建設する
- 14万5千戸の住居を保全
- 119地域のリゾーニング(地域の特性を残しつつ、交通の便を改良するための開発規制改革)を完了
- クイーンズ区ハンターズ・ポイント・サウス地区の低中所得者向け住宅の開発に着工
- エネルギー効率向上、再生エネルギー発電設備設置のための建築規制法改正(新築・中古物件共)
- 公園と公共スペース
目標: 全市民が徒歩10分圏内に公園にアクセスできるようにする
- 75万本の植樹を達成
- 300エーカー分の緑地を増設
- 遊休地の活用により、229の子供用校庭・遊び場を開発
- 8つの大きな公園の建築計画を策定。うち1つ(ハイランドブリッジ・パーク)は建設着工済
- 市の公団敷地内に、129のコミュニティガーデンを新設
- 土壌汚染地
目標: すべての汚染された土地を浄化する
- 830万平方フィート(77㎡)分の土壌汚染地の浄化計画を策定
- 200以上の課税地において、将来的に30億ドル近くの投資を生み出すであろう、95以上の土壌汚染地再開発プロジェクトを登録
- 地域のために活用する12の再開発可能な土壌汚染地域を設定し、90億ドル分の調査と浄化のための補助金プログラムを設立
- 汚染されていない場所の土を汚染地に再利用するよう促す「NYCクリーン・ソイル・バンク」を設立
- 河川
目標: 市の河川品質を改善することで、レクリエーションの機会を増やし、河岸の生態系を回復する
- 過去10年間で、下水道設備や下水処理場の改善などの水質改善に100億ドルを投資
- 今後20年間で15億ドルを投資し、未処理で下水を放出する比率を削減するグリーンインフラ計画を始動
- 自然の排水道と人工の湿地を活用した、環境にやさしくコスト効率の良い雨水管理システム、ブルーベルトを構築。今後、スタテン島の1/3とブロンクス、クイーンズに拡張予定
- ジャマイカ湾にある、76エーカー分の侵食された塩性湿地を再生
- 水道
目標: 高品質で安定した上水道を保証する
- 3億7,200万ドルを投資し、マンハッタンへの水道管トンネル3号を完成
- 低価格で正確に計測でき、水漏れの探知にも役立つ無線の自動計測器を2009年に導入
- 水源地域周辺の森や土地の購入に、15億ドル以上を投資
- キャッツキル・デラウェア水源の二次消毒設備となる紫外線消毒施設の建設に16億ドルを投資
- 交通
目標: サステナブルな交通手段の選択肢を増やし、交通網の安定と品質向上を保証する
- 市の新しい公共交通手段である、全米最大規模の自転車シェアプログラム「シティバイク」を始動
- 300マイル(482㎞)以上の自転車レーンを敷設
- 鉄道と同様の速さと便利さ、バスならではの流動性を兼ね備えた「セレクト・バスサービス」を都市交通局(MTA)と共同で開発し、5区全域に導入
- 2013年に電気自動車のタクシーをテスト導入し、2020年までに全タクシーの1/3を電気自動車にする
- エネルギー
目標: エネルギー消費量を削減し、クリーンエネルギーを増やし、安定的なエネルギー供給を確保する
- 「よりグリーンでより素晴らしい建築計画」施行のため、サンフランシスコとボストンを合わせた大きさである20億平方フィート(1.9億㎡)分の建物をベンチマーク
- 「建物の環境法タスクフォース」が薦める、建物のエネルギー効率をその他の資源効率を改善する施策を遂行(内40は法制化)
- 「市長の二酸化炭素チャレンジ」プログラムを大学や病院から商業施設に拡張し、10年で温室効果ガス排出量30%削減目標に貢献
- 「エネルギー効率公社」を設立して、建物のエネルギー効率化を促進し、暖房用燃料による汚染削減のため1億ドルの財務支援を発表
- 2,700の街灯をLEDに切り替え
- 太陽光発電容量を2007年の1メガワットから14メガワットへと2007年比で10倍以上に拡張
- 1,000メガワット分のエネルギー効率の良い発電施設を市内に新設するための支援
- 過去数十年で初となる、他州からガスを運ぶパイプライン「スペクトラ・ウィリアムズ・ロッカウェイズ・パイプライン」の開発を支援
- 大気質
目標: 米国内の大都市で最も大気質のきれいな都市にする
- 2008年に空気質調査を実施し、地域ごとの空気質と市民の健康への影響を計測
- 暖房用燃料を重油から汚染の少ない燃料への切り替えを促す「クリーンヒート」を2011年に実施
- 2,000の建物で暖房用燃料の切り替えを促し、PM2.5の排出量を50%削減。年に120人の人命救済に相当
- 廃棄物
目標: 廃棄物の75%を埋め立て以外に転用する
- 現状5万トンを埋立地に廃棄しているプラスチックを含め、リサイクルプログラムを過去25年で最大規模に拡張
- 食品残渣を50%削減するレストラン向けの任意プログラム「食品残渣チャレンジ」を開始
- 気候変動
目標: 温室効果ガスを30%以上削減する。住民、自然環境、インフラの気候変動リスクに対する弾力性を高める
- 温室効果ガス排出量、2030年までに30%削減目標の半分以上となる16%削減を達成
- 350万平方フィート(33万㎡)分の屋根に、エネルギー使用量、冷房コスト、二酸化炭素排出量削減効果のある、反射性の白い塗装を実施
- ニューヨーク市気候変動パネルに、気候変動予測の最新化を依頼。ハリケーン・サンディ後の再建計画に反映
- 温室効果ガス排出量、2030年までに30%削減目標の半分以上となる16%削減を達成
と、盛りだくさん。
6年前に設定した目標を、ひとつひとつ着実に遂行し、達成した成果を細かく報告するニューヨーク市。
市民の税金により成り立つ自治体は、企業以上に透明性が大切。
そして、気候変動という人類全体の大きな問題に取り組むには、長期的且つ広い視野での計画と、それを実践する強い実行力が必要。
ニューヨークは、堅実に大胆にそれを実践し、持続可能な都市に向けて突き進んでいます。
New York City
ウエブサイト:http://www.nyc.gov/
2013/07/22