白熱電球の販売禁止迫る、LEDや電球型蛍光灯(CFL)の環境優位性が議論に

light bulb
(Photo by James Bowe)

ヨーロッパに遅れること2年半、2012年1月1日からアメリカでもようやくエネルギー消費効率の悪い白熱電球の販売が順次禁止されます。

この規制は2007年に設立された連邦法「エネルギー自給安全保障法」に拠るもので、12年1月1日には100ワットの白熱電球、13年1月1日には75ワット、14年1月1日には40ワットと、ワット数の高いものから順に禁止されます。

ブッシュ元大統領がこの法案に署名したときには2012年はまだ先のことと思われ、同法の存在は忘れ去られていましたが、今年に入りスウェーデンのインテリアチェーン、イケアが全米全店で白熱電球の取扱い撤廃を実施したことから、白熱電球販売禁止の是非を問う議論がアメリカ全土で起こり始めました。

欧州と同様、暖かい色味の光を発する白熱電球を好む傾向にあるアメリカでは、蛍光灯の青白い光に抵抗を抱く人が多く、また、電球型蛍光灯に水銀が含まれていることから、人体への影響や使用後の回収の煩雑さを懸念する声が高まり、規制施行前に白熱電球を買い占めようとする動きも出てきました。

さらに、カリフォルニア州が連邦法に先駆けて今年始めから100ワットの白熱電球の生産を禁止する一方で、サウスカロライナ州では2012年以降も州内での白熱電球の生産販売を許可する法案が提出されるなど、州による温度差も出始めています。

また、これまでLEDは水銀を含まないため電球型蛍光灯より安全とされていましたが、カリフォルニア大学の研究チームにより、LEDから水銀や鉛などの有毒化学物質が検出されたとする研究結果が発表されるなど、LEDの環境優位性をめぐる議論も起こりつつあります。

同法では、エネルギー消費効率について言及しているだけで、電球型蛍光灯やLEDといった特定の電球を推奨しているわけではありませんし、冷蔵庫内の電球やビニルハウスで使われれる植物栽培用の電球など、湿度の問題や白熱灯の熱を利用するために他の電球で代替できないものに関しては例外として認められているので、白熱電球が完全に市場から消えてなくなるわけではありません。

それでもこうした議論が起こるのは、代替品の選択肢が少なすぎることが大きな要因でしょう。
トンネルや街灯などに使われる高圧ナトリウムランプは、電球型蛍光灯よりも消費効率は良いものの光の質の問題で白熱電球の代わりにはならず、LEDは価格の問題から一般家庭で白熱電球の代わりに使うことが難しいため、現実的には白熱電灯の代替品となるのは電球型蛍光灯のみという状況です。

一方、環境効率という一側面だけで白熱電球が全世界で一斉に禁止されるのは恐ろしい事態といえるのかもしれません。
科学の力を以ってしても、何が環境や人体への負荷が最も低いかを包括的な視点で判断することは難しいはずです。
確かにエネルギー効率面ではLEDや電球型蛍光灯が優れているのでしょうが、既に議論されているように、水銀など含有有害物質の問題を考えれば人体や生態系への影響が白熱灯より低いとは言い切れないでしょう。
白熱灯の生産販売を一斉禁止する以前に、電力使用量を法で規制すべきなのかもしれません。
経済発展を前提に進む現代社会においては、エネルギーであれモノであれお金であれ、消費削減を謳うことは難しいのでしょうが、環境問題に取り組むには前提をすべて取り払う勇気も必要なのかもしれません。

アメリカから白熱電球がなくなる2014年以降、地球環境はどうなるのか、楽しみでもあり怖くもあります。

Energy Independence and Security Act of 2007
ウエブサイト:http://energy.senate.gov/public/_files/RL342941.pdf

2011/03/01

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