米連邦取引委員会、
グリーンウォッシング規制を強化
グリーン、サステナブル、エコ・・・環境にやさしいことを示すための言葉はたくさんありますが、そういった言葉を使用している商品や企業の中で、本当に環境にやさしい活動を行っているものはどれだけあるでしょうか。
アメリカでは、こうした言葉を不正に利用する"グリーンウォッシング"行為が行われないよう、連邦取引委員会が「グリーン・ガイド」と呼ばれる環境関連のマーケティングガイドラインを設定しています。
しかし、このグリーン・ガイドは1992年に作られたもので、96年と98年に更新されて以来、手を入れられていませんでした。
2000年以降グリーン関連のビジネスが急速に増え、「再生可能」や「生分解可能」などの言葉が頻繁に使用されているものの、ガイドラインではこうした言葉に対する明確な定義や指針は出されていませんでした。
そこで、取引委員会は2008年初からグリーン・ガイド見直しのための公聴会を実施。
3年弱を経て、ようやく今月訂正案が提出されました。
12月10日までの3ヶ月間を公示期間とし、民間の意見を集め、その後公式に訂正版が発表される予定です。
今回訂正があったのは、「グリーン」「環境にやさしい」など環境効率を示す表現、環境関連の認証、「生分解可能」「堆肥化(コンポスト)可能」「オゾン層に安全」「リサイクル可能」「○○無添加」「毒性がない」などの用語に関して。
現状のガイドラインにはない新たな用語「再生可能物質で作られた」「再生可能エネルギーを使用した」「カーボンオフセット」などに関する提案も含まれています。
すべてにおいて厳しくなる新基準
<環境効率に関する表現>
現行ガイドラインでは、環境にやさしいことが公けに認められていなくても、企業側が実証できれば記載しても良いとされていますが、新案では、公認されていない事柄は記載できなくなります。
<認証>
連邦取引委員会規定の推奨ガイドラインに従うこと、環境効率を実証できる認証基準であること、認証取得後もマーケティングに使用する文言や事例を実証する義務を怠ってはならないこと、などの規制が追加されます。
「生分解可能」
現状は「短期間で生分解されること」とだけ記されていますが、訂正案では「廃棄後1年を超えない程度」と期間の制約が追加されます。
「堆肥化可能」
「本来その物質が堆肥化されるの同じ期間」と、期間が限定されます。
「オゾン層に安全」
オゾン層破壊物質の規制に関する変更が反映されます。
「リサイクル可能」
どの程度の消費者・地域が実際にリサイクルできるかにより、リサイクル可能と記載して良いのか、可能な地域を明記すべきかが決まります。
「○○無添加」
無添加であっても、通常その製品にはその物質が使用されない場合には記載できなくなります。
「毒性がない」
現状は環境への毒性のみ言及されていますが、新案では人体にも無害であることが求められます。
「再生可能物質で作られた」
物質名や再生可能の根拠などの記載が必要になります。
「再生可能エネルギーを使用した」
どのエネルギー(太陽光、風力など)をどの程度使用したのかを明記し、少しでも化石燃料由来のエネルギーを使えば用語を使用できなくなります。
また、企業や工場にソーラーパネルなどを設置して再生エネルギーを生み出している場合でも、そのすべてを転売し、自社製品の生産に利用していないのであれば、用語は使用できません。
「カーボンオフセット」
削減排出量などの科学的な証明が必要。オフセット権を購入してから2年以上削減行為を行っていなければその旨の情報開示が必要。法律上削減が要請されている分に関しては用語の使用は不可。
「オーガニック」「ナチュラル」「サステナブル」に関しては、現行では定義されていませんが、新基準でも同様です。
「オーガニック」
米農務省(USDA)の規定に準じること。
「ナチュラル」
製品カテゴリによって定義が異なり、消費者の認識も曖昧、米食品医薬品局も米農務省も明確に定義しておらず、状況によっては正しい表現となり得るため、グリーン・ガイドでは定義せず、個別に判断する。
「サステナブル」
公聴会ではさまざまな意見が出ましたが、環境、経済、社会的なことすべてを含む広い意味があり、個々の製品に対して使われるよりは企業の哲学などに使われる言葉という印象が強いため、環境関連製品のマーケティングガイドラインであるグリーン・ガイドでは定義しない。
このように、新案ではさまざまな用語が訂正されますが、これによって、環境をマーケティングの一環として利用するのではなく、多くの企業が本当に正しい行為をするようになることを期待したいですね。
Federal Trade Commision
ウエブサイト:http://www.ftc.gov/
2010/10/22