エコデザイナーインタビュー:ミカ・オーガニック Vol.3

mika organic
(Photo courtesy of Mika Organic)

絶滅危惧種の動物や自然界の生物を描いたグラフィックが素敵なミカ・オーガニック。
世界各国のグリーンファッションショップからオーダーが絶えない人気のサステナブルブランドですが、デザイナーのミカ・マチダさんは、実は日本からアメリカ・ニューヨークに移住した日本人。
キュートでほんわかした外見とはうらはらに、エチオピアの部族の村を訪問したり、ペルーのアマゾンを探検するなど、実はワイルドな行動派。
釣りや動物や自然を愛する、ピュアで熱いハートを持つミカさんに、エコデザイナーとしての思いからエチオピアやペルーでの体験まで、様々なお話を伺いました。

===================================

Vo.2から続く

先日ペルーに招待されたそうですね。

ペルーのリマで3日間のギフトショーがあり、ペルーのものづくりのスキルを見て欲しいということで、アメリカから40-50人くらいの企業やデザイナーがペルー政府に招聘され、そのひとりとして参加しました。
オーガニック素材や天然染色の技術は素晴らしく、良い素材はあったのですが、私は大量生産しませんので、彼らの求める取引量には合いませんでした。
ただし、「MINKA」というペルーのフェアトレード団体が作っているハンドスパンのアルパカ素材がとても素敵で、今後仕事につなげたいと思っています。
彼らはオーガニック認証は取っていませんが、アルパカは山に放し飼いで、山に住む女性たちが昔ながらの伝統的な方法で糸を作っているので、認証がなくてもオーガニックであることがわかりました。

その後に、アマゾンのジャングルに行ったそうですが、そのときの話を聞かせてください。

フェリーで24時間かけて、ペルーのアマゾン上流のジャングルに行きました。
生命の根源というか、森が生きているという感じで、その迫力に圧倒され、地球はアマゾンに支えられていることを納得しました。
人間がいない場所で、地球が本来持つ強さを感じました。

mika organic

まず驚いたのは、とにかく虫の量がすごいということです。
行く前にその話は聞いていたので、強力な虫除けを持っていきましたが、せっかくオーガニックの服を着てナチュラル化粧品を使っていても、そのうえから強力な虫除けをかけなければならないので悲しかったですが、そうしなければ、体中の血を蚊に吸われて死んでしまいそうでした。

周りが暗くなってしまうほどの大量の蚊が飛んでいるのですが、ある時間を過ぎると一気に蚊の数が1/10くらいに減るのです。
アマゾンにはアマゾンの時間のリズム、自然のサイクルというものがあるのだと思います。
早朝から11時くらいまでは鳥が一斉に鳴くのですが、昼になると鳥の鳴き声は止み、動物の鳴き声が聞こえ、夕方5-7時頃になると蚊が一斉に発生し、夜になると蚊がいなくなり、代わりに耳が痛くなるくらい虫が鳴くのです。
こうした自然の流れを、人間が邪魔してはいけないと思いました。

行く前は、アマゾンには森林や木というイメージがあったのですが、それよりも虫の量や生物たちの音が印象的で、巨大なオウムが群れを成して飛んでいたり、巨大な蛇やワニ、猿がいたりと、ジャングル自体が生きているというか、"生命"を感じました。
人間が太刀打ちできるものではないアマゾンの力を感じ、自然の流れをそっとしておくべきだと思いました。

アマゾンでは、ガイドに案内してもらうのですか

アマゾン川流域の村に住むガイドに案内してもらいます。
ジャングルの中は、もちろん人間が歩く道などなく、草木を切り倒して進んでいき、夜はテントに泊まるという生活でした。
ガイドはその村で生まれ育った人なので、アマゾンのことをよく知っています。
彼は、鳥の鳴き声を聞けばどの鳥かわかりますし、音を出してワニを呼ぶこともできるのです。
どの木からどの薬が取れるのかも知っています。彼は、"薬はすべて森の中にある。ただし、西洋の薬のように早く治すのではなく、森の中の薬は時間をかけて治すのだ"と言っていました。

ガイドが住む村の人たちは、どのような生活をしているのですか

彼らは、Tシャツに短パン・ジーンズという普通の格好をしていますし、服はきれいなものを着ています。若い男の子たちはみんな、脇にシワ模様の入ったジーンズを着ていて、それが彼らにとってのトレンドなのかなと思いました。
トレンドを追えるということは、貧しくない暮らしをしているのだと思います。

mika organic
(Photo by Jason Wyche, courtesy of Mika Organic)

観光客はガイド代を現金で支払います。
彼らは、村からフェリーでイキトスというアマゾン川流域の都市に出て、買い物をしているのだと思います。

主食はプランテーン(料理用バナナ)で、魚も食べます。
アマゾン川沿いなので水は豊富ですし、バナナや作物がたくさん育つので食料も豊富です。

ただ、とても残念なことに、彼らはゴミをアマゾン川に捨てるのです。
食べ物の容器でもペットボトルでもオムツでも、ゴミというゴミすべてを捨てているように見えました。
アマゾン川は濁っているので捨てられたゴミは見えませんが、底にたくさんのゴミが溜まっているのではないかと思います。
しかも、ペルーはアマゾン川の上流にありますから、上流でこれだけゴミを捨てていたら、下流はどうなっているのだろうかととても心配です。

アマゾンの支流はとてもきれいな透明な水が流れていて、ピンクドルフィンなどが生息しているのですが、そこではゴミを捨てている人は見ませんでした。
アマゾン川本流は濁っていて捨てたものが見えないから、捨ててしまうのでしょうか。

アマゾンだけでなく、ペルーの観光都市であるマチュピチュでも、ペットボトルのゴミは大きな問題になっているそうです。
マチュピチュには毎年大勢の観光客が訪れますが、ペルーはまだリサイクルのシステムができていないので、ペットボトルが埋立地に山積みされているそうです。

それに、アマゾン流域の村では、最近人口が非常に増えているそうです。
30年間で6倍に増えているそうで、新しくできた村がたくさんありました。
村を作るためには森を伐採しなければなりませんから、多くの木が切り倒されているのだと思います。
学校では、"バナナの木を切ったら3本植えなければならない"と教えられているそうですが、バナナ以外の木についてはどうなのかわかりません。
もちろん、多くのエリアは保護区になっているので、伐採はしていけないことになっているのですが。

以前エチオピアに行ったときは、サステナブルな生活をしていることに感銘を受けましたが、アマゾンでは、貧しくないがゆえに起こるゴミ問題、人口増加の影響、観光による途上国の環境被害など、色々なことを考えさせられました。

Vol.4に続く

2010/06/21

  • ピックアップ記事