エコデザイナーインタビュー:ミカ・オーガニック Vol.4
(Photo courtesy of Mika Organic)
絶滅危惧種の動物や自然界の生物を描いたグラフィックが素敵なミカ・オーガニック。
世界各国のグリーンファッションショップからオーダーが絶えない人気のサステナブルブランドですが、デザイナーのミカ・マチダさんは、実は日本からアメリカ・ニューヨークに移住した日本人。
キュートでほんわかした外見とはうらはらに、エチオピアの部族の村を訪問したり、ペルーのアマゾンを探検するなど、実はワイルドな行動派。
釣りや動物や自然を愛する、ピュアで熱いハートを持つミカさんに、エコデザイナーとしての思いからエチオピアやペルーでの体験まで、様々なお話を伺いました。
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Vo.3から続く
エチオピアは、どのようにサステナブルだったのですか。
エチオピアでは、首都のアディスアベバから、車付きのガイドを雇い、南部の部族の村に連れて行ってもらいました。
部族の人たちはモノがないので、すべてを再利用していました。
たとえば、空き缶は食器に、ペットボトルのキャップはアクセサリに使っていました。だから、ゴミがまったくないのです。
部族の人たちだけでなく、普通の暮らしをしているエチオピアの人々もモノを上手く再利用していました。
部族の村に行く途中で、普通の人たちが暮らす村をいくつか通り過ぎたのですが、行く先々で子供たちが「ハイランド、ハイランド」と言って近寄ってくるのです。
ハイランドというのはペットボトル水を販売している企業の名前なのですが、彼らは水が欲しいからではなく、ペットボトルを水筒として使いたいからボトルを欲しがるのです。
エチオピアには、水は十分あるのですか。
乾燥地帯ですから、水は十分にはありません。
もう3年も雨が降っていないため、川は干上がっています。
部族の村に行くまでに、何度か川を越えたのですが、川には水がまったくありませんでした。
飲料水は、井戸から地下水を汲み上げて利用しています。
(Photo courtesy of Mika Organic)
彼らは、3-4時間かけて歩いて井戸に行きます。
多くの人が順番待ちをしているので、水を汲むために半日ほど待たなければなりません。
そして汲み終えたら、来た時と同じ時間をかけて重い水を家まで運びます。
でも、彼らはそれを苦とは思っていないのです。
水汲みは女性の仕事ですが、井戸に行くまでの間や水の順番を待つ間が社交の場になっているようで、楽しそうでした。
水がなければ農業ができませんが、食料はどうしているのですか。
政府が穀物を提供しているので、それを食べて生活しているそうです。
エチオピアはコーヒー栽培で有名な国ですが、コーヒーが育つのは北部です。北部は雨が多く、作物がたくさん育ちますが、南部は乾燥地帯なので貧しい生活を強いられます。
北部からコーヒーが入ってくるので、旅行者は南部でもおいしいコーヒーが飲めるのですが、水がないために牛やヤギを育てられないので、ミルクは手に入りません。
彼らの生活スタイルは、どのような感じなのですか。
部族の人と、部族ではない南部の村の人、都市部の人の生活スタイルはまったく異なります。
南部の村の人はとても貧しく、溶けてしまいそうなほど薄くなったTシャツを着ています。
彼らは痩せていますが、飢餓状態というほどではなく、みなとても元気で、笑顔が素敵でした。
先進国の人に比べてモノはありませんが、とても人間らしい生活をしているように見えました。
1986年にエチオピアの北東地域で大飢饉があり、その時の印象が今でも根強く残っているため、エチオピアはとても貧しいという印象がありますが、今はそこまで貧しくはないそうです。
でも、私たちが近づいていくと、南部の村の子供たちは物乞いをします。
アメリカでいう1セントくらいのお金を欲しがるのですが、ガイドはお金をあげることは彼らのためにならないので、あげるならペンやTシャツなど彼らのためになるものにして欲しいと言っていました。
私は服は3着しか持って行かなかったので何もあげるものがなく、飴などをあげました。
ニューヨークという都会に住む私にとっては、エチオピアでは夜が暗いということすら新鮮でした。
本来、夜は暗いものなのに、ニューヨークでは夜でもカーテンを閉めないと寝られないくらい明るいですから。
人間が本来するべき生活とは何かを考えさせられました。
彼らは、電気の明かりに頼らず、太陽や星や自然のサイクルに従って生きています。
そのため、視力などとても優れた能力を持っています。
夜、道を歩いていたら、いつの間にか周りに大勢の人がいて驚いたことがあったのですが、都会から来た私たち旅行者が暗さに対応できないだけで、彼らは暗いところでも見える視力を持っているのです。
首都のアディスアベバでは、もっと豊かな暮らしをしています。
大学やホテルがあり、タクシーが走り、人々は普通の生活をしているように見えました。
でも、アディスアベバさえ、夜は暗いのです。
街頭は少しありますが、街全体を煌々と照らすほどの電力がありません。
電力は水力発電で賄っているのですが、3日に一度は停電してしまうそうです。ホテルなどは発電機を完備しているので、停電になっても電気は供給できるそうですが。
部族の人たちの暮らしは、どうでしたか。
彼らは、村や都会の人とは全く違う生活をしています。
エチオピアにはたくさんの部族がいますが、それぞれの部族が異なる文化の下に暮らしています。
私が訪れたのはハマー族という部族ですが、彼らはヤギの皮一枚で作った服を着て、貝殻などで作ったジュエリーを身につけています。
髪には、バターと泥と香料を混ぜたものを塗りこみ、ドレッドのような髪型をしています。そこに鳥の骨や羽を埋め込んだり、白い色を塗ったりして、美にはとてもこだわっています。
(Photo courtesy of Mika Organic)
彼らの生活は本当にサステナブルでした。
家は土や葉でできていて、食器は土で作ったものです。
服やジュエリーも自分たちで手作りしたものをおしゃれに着こなしています。
ただ、ジュエリーに使うビーズは貴重で、ケニアから輸入したものを購入しているそうです。
(Photo courtesy of Mika Organic)
バッグはひょうたんの実で作ったものですが、それぞれに柄や飾りが美しく、とてもおしゃれです。でも、すべてがサステナブルなのです。
靴は男女ともに車のタイヤから作ったものを履いていますが、その一足を壊れるまでずっと履き続けるのです。
美にこだわるところは先進国の人と変わりませんが、サステナブルに美を楽しんでいるところが大きく違うと思います。
それが実現できるのは、プラスチックなどサステナブルではない物質を作る人がいないからではないかと思いました。
地球上のすべての人が彼らと同じような考え方で生活すれば、世界はサステナブルになると思います。
部族の村を訪れて、人間の根源的な生活を垣間見た気がします。
Vol.5に続く
2010/06/24