エコデザイナーインタビュー:ミカ・オーガニック Vol.2

mika organic
(Photo courtesy of Mika Organic)

絶滅危惧種の動物や自然界の生物を描いたグラフィックが素敵なミカ・オーガニック。
世界各国のグリーンファッションショップからオーダーが絶えない人気のサステナブルブランドですが、デザイナーのミカ・マチダさんは、実は日本からアメリカ・ニューヨークに移住した日本人。
キュートでほんわかした外見とはうらはらに、エチオピアの部族の村を訪問したり、ペルーのアマゾンを探検するなど、実はワイルドな行動派。
釣りや動物や自然を愛する、ピュアで熱いハートを持つミカさんに、エコデザイナーとしての思いからエチオピアやペルーでの体験まで、様々なお話を伺いました。

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Vo.1から続く

MIKAさんのコレクションには、X年春夏、X年秋冬といった年毎の履歴がありませんが、シーズンごとにコレクションを作り変えていないのですか。

はい。シーズンごとに全部変えてしまうより、加えていくという考え方の方がサステナブルだと思うのです。一度考えたアイディアをずっと残せますし。
今でもエレファントシャツを買ってくれるお客さんがいますが、シーズンが終わって販売しなくなってしまったら、買いたくても買えないですよね。
アニマルシリーズだけで50点くらいになったら、アニマルのショーをやりたいなと思っているんです。私はグラフィックデザイナーとしてポスターなども製作していますから、ポスターと服とを一緒に発表する、ファッションとグラフィックアートの中間的なショーにしたら楽しいかな、と考えています。

毎シーズン、どのくらいのアイテムが加わるのですか。

シーズンごとに8アイテムずつくらい加えていますが、新しいアイテムをまったく作らないシーズンもあります。
今秋冬は新アイテムを投入しない予定です。
いくつかのアイディアを考えていたのですが、お付き合いのあった生地屋さんがつぶれてしまったりして、秋冬物のサステナブル素材が手に入りにくくなってしまったのです。
秋冬はもともとサステナブル素材のセレクションが少ないのですが、そういう事情で今秋冬は新アイテムを加えません。代わりに2011年春夏の作品作りを始めています。
次の春夏は、アニマルシリーズに加えて、ネイチャーシリーズにも力を入れていく予定です。

たとえサステナブルであっても、物を作れば少なからず環境への負荷がかかってしまいますが、デザイナーとして、ものづくりと環境との関係について、どう考えますか。

現代社会の生活の中で、物を作らずに生きていくことはできませんし、ものづくりにおいて環境への負荷がかかってしまうのは仕方がないと思います。
でも、その負荷をミニマムにしていくことは必要だと思いますし、ものづくりによって社会を良い方向に持っていくことはできると思います。
私が作っているアニマルシリーズやネイチャーシリーズには、商品名に必ずメッセージが添えられています。
たとえばエレファントシャツは"Save the Elephant ― Elephant Top"、くじらのドレスは"Protect Marine Life ― Whale Dress"、白樺のドレスは"Save the Forest ― Aspen Dress"、というように。
メディアに写真が掲載される際に商品名が一緒に記載されますが、多くの場合、それらのメッセージは省略されてしまうので、それがとても残念なのです。
だから、商品につけるタグとは別に、もっと目立つ形でメッセージを付けようかなと考えています。
私の作品を買ってもらうときに、ただ物を買うだけでなく、メッセージを受け止めて広めてもらいたいのです。
だからといって、メッセージTシャツのようにあからさまに言葉で伝えるのではなく、着る人が楽しめる形でメッセージが伝わればいいな、と思うのです。
アニマルシリーズを広げていくことは、私にとって楽しいことでもあり、私に課されたミッションでもあるのではないかと思っています。

ミカさんがデザイナーになったきっかけでもあるエコバルフセットや、エコブティックのゴミNYCが店を閉じてしまいましたが、ミカさんのブランドは経済の流れに影響を受けていますか。

まったく逆で、今年は今までにないほどの上昇気流を感じます。
世界中からオーダーがどんどん入ってきているのです。
宣伝をしたくてもできていない状況なのですが、それでも色々なところから声が掛かります。
先日、デイリー・キャンディ(掲載された商品は売上が激増するといわれているアメリカで人気の情報サイト)にも掲載されて、生産が追いつかない状況です。
マレーシア、中国、オーストラリア、ヨーロッパなど、世界中にエコブティックがオープンしているようで、問い合わせの連絡がたくさんあります。
だから、ニューヨークでエコブティックが閉店してしまっている理由がよくわかりません。
ウエブサイトでは個人向けに販売もしていますが、ニューヨークのお客様からのオーダーが多いですし。
エコバルフセットは、オーナーのヨハナがなかなか店にいられないことなどが閉店の理由だったようですが、ニューヨークは家賃が高すぎるのでしょうか。
ここ数年の不況で、エコとは関係のないブティックもたくさん閉店していますから、エコに限った話ではないのかもしれませんね。

ミカさんはグラフィックデザイナーとしても活躍なさっていますが、エコファッションデザイナーとどのように両立しているのですか

今は、平日日中はグラフィックの仕事をして、ランチタイム、夜、週末などでファッションデザインの仕事をしています。
世の中では不況といわれていますが、おかげさまで私はどちらもとても忙しいです。フリーランスに仕事が来る時代なのでしょうか。
私はグラフィックの仕事があるので、ファッションの仕事は楽しんでリラックスしてできます。絶対に売らなきゃという気持ちがないのが、逆にいいのかもしれませんね。

Vol.3に続く

2010/06/15

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