大手小売企業の間で食品寄付が流行
(Photo courtesy of Walmart)
景気回復の気配が見え始めたアメリカですが、失業率は依然改善の兆しが見えぬまま。
2009年12月には、アメリカの飢餓率が約15%と1995年以来の高水準に上っていることを、米農務省が発表しました。
飢餓率15%とは、100世帯のうち15世帯が十分な食事を得られてないということ。
アメリカは先進国でありながら、所得格差が非常に大きいために、このような驚くべき数値が出てしまっているのです。
しかも、アメリカで最も飢餓率が高いのは、ニューヨークのブロンクス地区。
ブロンクスは、高所得者層が住むマンハッタンから電車でたった数十分の距離なのに、約37%もの世帯が十分な食事を得られていないのだそう(Gallup社調査)。
億単位の所得を得る人が優雅に暮らすそのすぐ近くで、日々の食事に困るほど生活に苦しんでいる人たちがたくさんいるのです。
もちろん、途上国での飢餓状況とはレベルが異なるかもしれませんが、国内でこれほどの格差が生じていることは大きな問題です。
そこで、この状況を何とか打開しようと立ち上がったのが、米大手小売企業。
ウォルマートやターゲットなどが、こぞって食品や金銭的な寄付を発表しています。
ウォルマート、5年間で20億ドル分の寄付
ウォルマートは、飢餓対策として今後5年間で20億ドル分の金銭・現物寄付を行うことを発表。
内訳は、食品残渣の寄付が17億5,000万ドル分(ウォルマート、サムズクラブ、物流センター合算値:11億パウンド=499,000トン)、飢餓救済団体への金銭寄付が2億5,000万ドル。
さらに、ウォ社の物流担当者の知識を飢餓救済団体の食品配送用に提供したり、政府や食品メーカー等と協力して食品寄付を行うことも約束しました。
5カ年計画の第一段階としてまず行うのが、800万ドル分の飢餓救済団体への寄付。
これには、フィーディング・アメリカという全米最大の飢餓救済団体への冷蔵トラック60台分=600万ドル相当の購入なども含まれるのだそう。
そして、子供たちへの健康的な食事の提供1,000万ドル分。
アメリカの子供たちに200万食を提供する、全米レクリエーション・公園協会が行う"サマー・フィーディング・プログラム"への200万ドルの寄付などが含まれるそうです。
食品寄付は、企業の食品残渣を減らすことにつながるので、環境へのメリットも大きく、そのうえ、廃棄物処理にかかる経費を人助けに流用でき、企業イメージの向上にもつながるなど、一石二鳥どころか、一石三鳥の効果が期待できます。
ウォ社は既に2009年度に1億2,700万パウンド(=57,610トン)の食品残渣寄付を行っていますが、今後サムズクラブや物流センターにシステムを拡張し、寄付量を10倍にするということのようです。
学校に寄付するターゲット
一方、ターゲットは「ミールズ・フォー・マインド」という学校への食品寄付プログラムを展開。
このプログラムでは、フィーディング・アメリカへの230万ドルの金銭的寄付と、各地域の食品寄付団体への120万ドルの金銭的寄付、そして2,000万パウンド(=90,720トン)の食品寄付が行われます。
まずはパイロットテストとして、ミネアポリス、マイアミ、バルチモア、ロサンゼルス、シカゴの5都市において、プログラムを開始。今後、全米の学校に拡張していく予定なのだそう。
現在はテスト段階なので、学校内での食品提供、あるいはトラックを利用して食品提供するなど、色々なパターンでテストを行い、ベストプラクティスを探っているとのこと。
さらに今後は、子供たちへの栄養学の教育プログラムや、親が参加するプログラムの展開も考えているのだそう。
ターゲットはこれまでにも食品寄付を積極的に行っており、様々な団体を通して年間25億パウンド(=113万4,000トン)を寄付しています。
特にフィーディング・アメリカとは2001年からパートナーシップを組み、09年には2,000万食を寄付したとのこと。
食品を扱わないメイシーズ、寄付集めに貢献
さらに、食品を扱っているわけではない百貨店のメイシーズまでが食品寄付プログラム「バッグ・ハンガー」を行っています。
食品を扱わないメイシーズでは、店で食品残渣は出ませんが、その代わり、従業員のボランティア活動を通して食品・金銭的寄付集めを行っているのです。
このプログラムは1998年に始まった歴史あるもので、13年目となる今年、従業員が行ったボランティア活動時間は27,796時間。
結果、21万1,978パウンド(=96.15トン)の食品寄付と、230万ドルの金銭寄付を集めたのだそう。
もちろん、食品残渣が大量に出るウォルマートやターゲットには量的にはかないませんが、従業員のボランティア精神を育てることにつながりますし、寄付した人たちの飢餓に対する意識も高まるでしょうから、社会的に大きな意味があるプロジェクトといえるでしょう。
これら企業のように、食品を扱うすべての小売企業が食品残渣寄付を行い、食品を扱わないすべての企業がこのようなボランティア活動を行えば、もしかしたら飢餓率はゼロになるかもしれません。
ビジネス活動というのは、多かれ少なかれ、環境や社会に悪い影響を与えざるを得ないもの。
企業内の無駄なシステムを見直して、社会全体のためになるよう活用すれば、無駄が無駄でなくなり、みんなが喜ぶ循環型ビジネスシステムが出来上がるかもしれません。
Walmart
ウエブサイト: http://www.walmart.com/
Target
ウエブサイト: http://www.target.com/
Macy's
ウエブサイト: http://www.macys.com/
2010/05/17