ニューヨーク市、リサイクルの取り組み
(Image courtegy of NYC Department of Sanitation)
ニューヨーク市から出るゴミは、1日に5万トン。
25%は家庭から、残りは学校や産業などから出るゴミです。
こんなに大量のゴミが出るにもかかわらず、市内には埋立地や焼却炉がありません。
大気汚染の懸念によりアメリカでは一般的に焼却炉は使用されていないため、2001年に市内最後の埋立地フレッシュ・キルズが閉鎖されてからは、ニュージャージーなど近隣州の埋立地にすべてのゴミを運んでいます。
ゴミを他州で処分するには、運搬・引渡コストや輸送時の環境負荷が伴います。
市は、トラック輸送に伴う温室効果ガス排出量を削減するため、船や鉄道を利用した運搬に移行する計画を立てています(SWMP)。
また、ゴミの処分コストを削減するため、さまざまな3R (Reduce, Reuse, Recycle)促進策を実践し、市民にゴミを減らすよう働きかけています。
3R政策
リサイクルする以前に、ゴミを減らすことが大切です。
そこで、市は、長持ちするものや容器包装の少ないもの、環境にやさしいものを選ぶ「グリーン購入」の方法や、ダイレクトメールの受取拒否方法など、ゴミ削減(Reduce)のための施策を、市のウエブサイトやイベントで提案しています。
それでも出てしまったゴミは、捨てる前に再利用の可能性を検討すべきです。
市は、不用品の寄付・売買・修理の情報提供や、ビジネス向けの不用品売買マッチングサイト(ニューヨークのリサイクル促進プログラム)、スリフトストアとのコラボで服や古着を回収するプログラム(リ・ファッションNYC)などにより、再利用(Reuse)を促しています。
そして、どうしても再利用できないもののみをリサイクル(Recycle)します。
市は、リサイクル法(NYC Recycling Law: Local Law 19)や商業用リサイクル条例(Commercial Recycling Regulations:Local Law 87)で定められた規則を徹底し、長期環境計画プランNYCで2030年までにゴミを75%削減する目標を立てています。
家庭ゴミ・リサイクル分別
家庭ゴミのリサイクル分別回収は、以下4種に分かれています。
- 紙類
- ボトル・ビン・缶類
- フロンガスを含む大型家電
- 堆肥ゴミ
各分別の詳細は以下のとおりです。
1. 紙類
- 新聞、雑誌、カタログ
- 紙
(白、色付き、線入り、コピー用紙、コンピュータ印刷用紙、ホチキス付、すべて可) - 郵便物、封筒(色付き、窓付きの封筒も可)
- 紙袋
- 包装紙
- ソフトカバーの本、電話帳
(ペーパーバック、コミック本など。らせん綴じでないもの) - なめらかなダンボール紙
(食品の箱、靴箱、ペーパータオルやトイレットペーパーの芯、ファイルフォルダー、包装用ダンボールなど) - 波型ダンボール
対象外:
- ハードカバーの本
- ペーパーナプキン、ペーパータオル、ティッシュ
- 汚れた紙コップ、紙皿
- 食べ物や液体で汚れた紙類
- セロテープや糊が大量についた紙類
- プラスチックやワックス加工された紙
(飴紙、テイクアウト用の紙容器など) - 印画紙
2. ボトル・ビン・缶類
- 牛乳パック、ジュースパック
(その他、スープや紅茶など飲料用無菌紙パックなど) - プラスチック製ボトル(それ以外のプラスチックは不可)
- ガラス製瓶・容器(それ以外のガラスは不可)
- 金属製の缶
(スープ缶、ペットフード缶、空のスプレー缶、乾いたペンキ缶など) - アルミホイル、アルミ皿
- 日用金属
(金属製ハンガー、鍋、工具、カーテンレール、ナイフ、大部分が金属製の小型家電) - 金属製の大型家具・家電
対象外:
- ボトル以外のプラスチック用品
(ヨーグルト容器やデリのテイクアウト容器、プラスチック製おもちゃ、コップ、袋、ラップなど) - 瓶・容器以外のガラス用品
(鏡、電球、陶磁器、ガラスコップなど) - 発泡スチロール製品(コップ、卵容器、皿など)
- 電池
- レジ袋
3. フロンガスを含む大型家電
- フロンガスを含む家電(冷蔵庫、冷凍庫、エアコン、除湿機など)
冷蔵庫・冷凍庫はドアを外し、事前に予約した回収日に出す。
4. 堆肥ゴミ
- 落ち葉や庭ゴミ
(紙袋か容器に入れ、指定日に出す。特定地域のみ対象。回収後堆肥化される)
*現在、市の財政難によりサービス停止中
- クリスマスツリー
(飾りを外し、クリスマス後の指定日に出す。回収後、裁断し、マルチ(根覆い)用木材チップとして活用)
1、2は、透明のビニール袋か、市の公式ラベルを貼ったゴミ容器に入れ(大型家具・家電はそのまま)、地域ごとに定められた回収日に歩道脇に出すと、市清掃局により回収されます。
回収後、市内の民間リサイクル工場に運ばれ、仕分け、選別などの作業を経て、再生紙や再生ボトルとして生まれ変わります。
3、4は、不定期回収です。
リサイクル規則に違反した場合は、罰金が課されます。
罰金は、初回25ドル、2回目50ドル、3回目100ドル、4回目以降は500ドル。
10戸以上の集合住宅で、6ヶ月以内に4回以上違反した場合は、違反したゴミ袋1つにつき500ドル、上限24時間以内20袋、1万ドルの罰金が課されます。
公立学校、市営建築物、非営利団体は、家庭ゴミの規則に準じます。
事業ゴミ・リサイクル分別
事業ゴミは、市の清掃車が回収しないので、企業やビル毎に民間の回収会社に委託します。
リサイクル対象物は、飲食関連とそれ以外で異なります。
違反すると、家庭ゴミと同様の罰金が課されます。
飲食関連:
- 波型ダンボール
- 大型金属製品
- 金属製缶、ガラス製瓶・容器、プラスチック製ボトル、アルミホイル製品
- 建設廃材
飲食以外:
- オフィス用紙、新聞、雑誌、カタログ、電話帳
- 波型ダンボール
- 繊維製品(繊維・服飾業界などゴミの10%以上が繊維用品である場合)
- 大型金属製品
- 建設廃材
ストリートフェアなどの街頭イベントでも、リサイクルが義務付けられています。
違反すると、一件に付き100ドル、上限1日500ドルあるいはイベント全体で2,000ドルの罰金が課されます。
- 金属製缶、ガラス製瓶・容器、プラスチック製ボトル、アルミホイル製品
- 波型ダンボール(つぶして縛っておく)
自主的なリサイクル
どんなに厳しく規則や罰金を設定しても、すべてのゴミを調査することは不可能なので、違反はなかなかなくなりません。
市が家庭ゴミの中身を調べたところ、リサイクルや堆肥化可能なものが半数以上もありました(ニューヨーク市清掃局)。
- 堆肥化可能な生ゴミや紙ゴミ、落ち葉など:34%
- リサイクル可能な紙、ガラス、プラスチック、メタル:23%
- リユース・リサイクル可能な繊維製品:7%
- リサイクル可能な家電:0.7%
これらをすべてリサイクルや堆肥化すれば、ゴミを大幅に削減できます。
ただし、それを実現できるか否かは、家庭や企業の努力次第です。
生ゴミや紙ゴミ、落ち葉などは、各家庭や地域で堆肥化できます。
市のウエブサイトで提供されている堆肥化手法の情報や、地域ごとの堆肥化プログラムを利用できます。
レジ袋や発砲スチロールなど市の回収対象外品は、メーカーや小売店の回収プログラムが利用可能です。
以下の製品は、ニューヨーク州法で、企業による回収が義務付けられています(ニューヨーク市清掃局)。
- 自動車用バッテリー (販売店が対象、持込者に5ドル返金)
- 飲料ボトル、缶 (販売店が対象、持込者に5セント返金)
- 携帯電話 (販売店が対象、1人10台まで)
- 家電 (販売店やメーカーが対象)
- 自動車用オイル (修理工場や販売店が対象、1人1日5ガロンまで)
- レジ袋 (小売店が対象)
- 充電式電池 (販売店が対象)
- 注射器など鋭利なもの (病院や介護施設が対象)
- タイヤ (自動車パーツ販売店・修理店・自動車ディーラーが対象、新タイヤ購入時のみ)
- 煙感知機 (原子力規制法により、メーカーが対象)
- 無停電電源装置バッテリー (販売店が対象)
以下の製品は、メーカー・小売店が自主的に回収プログラムを提供しています(ニューヨーク市清掃局)。
服、ベビー用品、化粧品、建材、電球・照明、サーモスタット、浄水器、#5プラスチック、薬品、カメラのフィルム、コンピュータ、テレビ、プリンタインク、包装資材、パレット、ガスタンク。
人口増加と新興国の生活向上により、今後も世界的にゴミが増え続けることが予測されています。
現在のペースでゴミが増え続ければ、地球はゴミで埋もれ、ゴミに含まれる有害物質で環境汚染は加速するでしょう。
既に各地で最終処分場不足が起こり、ゴミの押し付け合いが始まっています。
人は、ゴミを出さずに生活することはできません。
しかし、限りなくゴミをゼロに近づけることは可能です。
ゴミは、私たちひとりひとりの問題です。
自治体や企業に責任を押し付けず、市民自らが率先して消費やゴミを減らす努力をすることが大切でしょう。
NYC Waste Less
ウエブサイト:http://www.nyc.gov/
2012/03/08 訂正
2008/11/07