ニューヨークのメトロカード、
企業広告掲載で様変わり

MetroCard Ads
(Photo courtesy of MTA)

ニューヨークの地下鉄やバス乗車用のプリペイドカード、メトロカード。

1994年に硬貨型のトークンに代わり登場して以来、ニューヨークのアイコン的存在として親しまれてきた、黄色地に「Metro Card」と青字で書かれた大胆なデザイン。

アート作品にも使われることの多いこの象徴的なデザインが、このほど、企業広告に取って代わられるという事態に。

資金繰りに苦しむ地下鉄・バス運営会社のMTA(Metropolitan Transportation Authority)が、資金確保の新たな手段として、メトロカードの表面を企業広告用に販売し始めたのです。

カード裏面には95年から広告が掲載されていましたが、表面に広告が出るのはこれが初めて。

第一号となったのは、アパレル企業のギャップ。
旗艦店である34ストリート店の改装を告知するために、この新しい広告媒体を活用。
シンボリックな黄色に代わり、背景色はギャップカラーのネイビーブルーに。
そこに、カラフルな「BE BRIGHT NYC」の文字と、「改装した新しい店舗で買い物してください」の案内文。
本当にメトロカードかと疑ってしまうほど、これまでとはまったく異なるデザインに。
裏面には、一定期間全米の店舗でメトロカードを見せると20%オフになるというお知らせが書かれています。

幸いにも、すべてのメトロカードが、ギャップ広告カードに切り替わるわけではありません。
約1ヶ月半の期間限定、マンハッタン内の10駅のみの場所限定、販売総数の10%と枚数も限定されています。
駅のブースで駅員から購入する場合は、黄色のメトロカードとブルーのギャップカード、どちらか選ぶことはできますが、、券売機で購入する場合はどちらが出てくるかはわかりません。

「広告の告知をしてから、問い合わせの電話が鳴りやまない」と、MTAの社内外コミュニケーション部シニアディレクターのポール・フルレンジズ氏。

今後、ギャップ以外にもさまざまな企業の広告が掲載される予定だそう。

同社会長兼CEOであるジョー・ロータ氏は、「広告掲載が受け入れられるか、市場の様子を見る」が、「脆弱な財務状況を補填するために、使える要素は使いたい」としています。

メトロカードは、ニューヨーカーなら常に持ち歩いているもの。
旅行者も、滞在中に携帯している人が多いはず。
地下鉄やバスに乗る際には否が応でも目に入り、発行駅を指定すればリーチする対象者も限定できるので、企業にとっては格好の広告媒体。
問い合わせが殺到するのも当然でしょう。

一方、ニューヨーカーの反応は、アイコン的なデザインをなくしてまで広告掲載しなくてもと嫌悪感を露わにする人が多いものの、広告収入により公共交通機関の安定運営が確保できるなら仕方ないとする意見も。

サステナブルな社会を実現するには、公共交通機関の利用は必要不可欠。
必ずしも必要ではない物を売るための広告ではあっても、それによって地下鉄やバスの運営が安定し、サステナブルな社会に一歩近づけるのなら、仕方ないことなのかもしれません。

いずれにしても、私たちにできるのは、タクシーよりも公共交通機関や自転車・徒歩を選ぶこと、そして、たとえ20%オフでも要らないものは買わないこと、ではないでしょうか。

MTA
ウエブサイト:http://www.mta.info

2012/10/08

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