ニューヨークの自転車シェアリング、始動！
カーシェアリングはジップカーなどで既におなじみですが、いよいよ自転車シェアリングがニューヨークで始動しました。
本格始動は2012年夏からですが、昨日行われたプレス発表で詳細が明らかになりました。
運営を任されたのは、ボストンやワシントンDC、オーストラリアのメルボルンで導入実績がある、アルタ社(Alta Bicycle Share)。
設備の導入、稼動後のメンテナンス、修理、クリーニング、カスタマーサポートまですべて同社が行います。
導入場所は、マンハッタン79ストリート以南とブルックリンの600箇所。10,000台の自転車が設置されます。
その後、79ストリート以北、クイーンズ、ブルックリン南東部、スタテンアイランドなど他地域にも拡大することが検討されています。
通勤に利用してもらうことを目指しているため、設置場所はオフィス街と住宅街が中心になる予定ですが、もちろん観光客も使えます。
具体的な設置場所は、今後土地所有者や地域住民・企業などとの相談のうえに決定されますが、現在、市のウエブサイトでは設置場所のリクエストを受け付けています。
利用システムはとても簡単。
まず、会員登録をします。
年間会員の場合はインターネットでの登録が必要ですが、1週間や1日といった短期の場合は、自転車設置場所にあるソーラーパーネル稼動のタッチパネル端末を使い、その場で登録することも可能。
金額はまだ決まっていませんが、年間登録の場合は年100ドル以下になる予定だそう。
年間会員は事前に送付される鍵を、短期会員は登録時に割り振られた番号を使用して、自転車のロックを解除します。
自転車は借りた場所に返す必要はなく、好きな時に好きな場所で借り、好きなだけ乗って好きな場所に返すことができます。
ただし、年間会員は30-45分間以内であれば無制限に借りられますが、 それを越すと追加料金が必要となります。
また、携帯アプリで事前に各設置場所の自転車利用状況を確認することも可能です。
ニューヨークは自転車の盗難がとても多い街ですが、シェアリング設備のロック機能は非常に頑丈なうえ、特殊な自転車ゆえに再販や改造が不可能なため、問題はないとのこと。
既に導入実績のあるパリでは、24時間以内に返却されなかった例は1年間で6,000台中15台。
しかも、ほとんどはその後無事回収されたのだそう。
ニューヨーク市の自転車シェアリング構想は、2008年にスタートしました。
09年には市当局による調査分析が完了し、公聴期間を経て、昨年10月に運営会社の公募を開始。
6社が応募しましたが、アルタ社とシカゴやデンバーの導入実績を持つB-サイクル社の2社に絞られ、最終的にアルタ社に決定。
3年の月日を経て、ようやく実現がすぐそこまで迫ってきたのです。
ニューヨーク市では、車を利用する人のうち10%が1.5マイル(2.4km)以下、22%が1マイル(1.6km)以下、56%が3マイル(4.8km)以下と、かなり短距離利用が多いのです。
つまり、状況さえ整えば、車から自転車に切り替え可能なはずです。
車利用者全体の88%にも上る短距離利用者が自転車を使うようになれば、排気ガスによる大気汚染や交通渋滞が減り、ニューヨークはクリーンな街に生まれ変わることができるのです。
それに、自転車をこぐことはよい運動にもなるので、市民の健康管理にも役立ちます。
市は自転車通勤者を2015年までに07年比で2倍、2017年までに3倍にするという計画を立て、さまざまな対策を行っています。
自転車シェアリングもそのひとつですが、自転車専用道路の拡張にも力を入れています。
06年から10年までの4年間で自転車専用道路は250マイル(402km)も増え、現在は700マイル(1,127km)に。
そのため、自転車利用者も急増し、06年から10年の間には倍に、09-10年の1年で13%増えています。
ニューヨークでは、夜間道路に自転車を留めておくと盗難の危険性が高いため、自転車所有者の多くは家の中で保管しています。
ただし、ニューヨークは家賃が高く、狭く古い家に住む人が多いため、自転車を所有することはなかなか大変なのです。
シェアリングシステムが実現すれば、これまで自転車を利用したいけど保管場所の問題で諦めていた人たちが利用することができるようになります。
また、24時間365日気軽に利用できるシェアリングシステムなら、タクシーを使っていた人も自転車に切り替えるかもしれません。
車は便利な交通手段ですが、環境や人の健康のことを考えるなら、できる限り、歩きや自転車、電車やバスといった公共交通機関を使うのが良いですね。
New York City Bike Share
ウエブサイト：http://nyc.gov/bikeshare/
2011/09/15
