ハイライン High Line

highline
(Photo by Iwan Baan © 2009)

歴史建造物である高架線路跡地を改築し、ハドソン川に面した空中公園として、素敵なパブリックスペースに生まれ変わったハイライン。

地上30フィート(約9メートル)の高さからハドソン川越しに見渡せるニュージャージーの景色は美しく、眼下に見下ろすチェルシーやミートパッキングディストリクトの街並みもなんだか新鮮に映ります。

全長1.45マイル(約2.3km、現在はそのうち半分公開)の長いスペース。
のんびりと散歩してもよし、至る所に設置されたベンチやデッキチェアでくつろぐもよし、本を片手に日焼けしてもよし、夜のデートに訪れてもよし、さまざまな用途で使える便利スペース。

凝った建築デザインも、ハイラインの楽しみのひとつ。
南から北に一直線に続く10アベニューを見下ろせる、劇場のような造りの階段ベンチ、その名の通り、床の木がめくれあがってしまったかのような「ピールアップ」ベンチ、ハイラインをまたぐように建っているスタンダードホテルなど、斬新な建築物ばかり。

FSC認証済の「トコン」という木でできたベンチやデッキ床、各所に埋め込まれたLEDのライトなど、環境配慮型建築としても見所満載。

highline
(Photo by Iwan Baan © 2009)

ハイラインは、1930年代に建設され、1980年に最後の列車が走って以降使われていなかった古い高架線路を再利用してつくられた公園。
古くなった輸送インフラを壊さずに、緑の多い憩いの公共スペースとして再利用し、ポスト工業化都市の世界的なモデルにしようというニューヨーク市の試みなのです。

古い建造物を残したい、住民たちの熱い思い

そして、それだけでは終わらない、住民たちの熱い思いが込められた建造物でもあります。

元々ハイラインは、さらに南のスプリングストリートまで開通していましたが、1960年代には、当時既に使われなくなっていたガンスブート~スプリングストリートの線路が解体。
ガンスブート以北も、80年以降列車が走らなくなってからは解体の話が何度も出ていましたが、ハイラインを愛する地元の活動家たちが反対し続けたことにより解体を免れます。

そして、1999年、近隣住民であったジョシュア・デビッドさんとロバート・ハモンドさんがフレンズ・オブ・ハイラインというNPOを設立し、ハイラインの保全・有効活用するための活動を開始します。
2002年には、線路の所有者であるニューヨーク市の協力を得ることに成功し、周辺住民との対話を重ね、建築デザインを全国から募集し、とさまざまな努力を続け、ようやく2009年6月に一部オープンが実現したのです。

ハイラインは、ただの空中公園ではなく、30年間も地元の人々によって守られ、再利用計画が本格化してから10年もの歳月を掛けてようやく完成した、近隣住民の汗と涙の結晶なのです。

highline
(Photo by Iwan Baan © 2009)

高架線路は、西10-11アベニューの間、ガンスブートストリートから34ストリートまで続いていますが、ハイラインとして利用できるのは、ガンスブートから30ストリートまで。
2009年6月にガンスブートから20ストリートまでの南側がオープンし、2011年には21-30ストリートの北側が完成しました。

残りの31-34ストリートは、ニューヨーク市ではなく、MTA(ニューヨーク都市交通局)の所有物なので、市が公共スペースとして自由に使えるわけではありません。
ここはもともとハイラインを走る列車の操車場として使われていた場所で、現在でもMTAの電車の倉庫となっています。
ハイラインにつながるこの場所を公共スペースや住居スペースとしてなんとか利用できないか、さまざまな案が出ていますが、残念ながら、今のところまだ結論は出ていないそう。

ハイラインの南端、ガンスブートストリートには、レンゾ・ピアノ氏設計の新ホイットニー美術館を建築中で、こちらは2012年にオープン予定。

09年の南側オープン時には、アレキサンダー・マックイーン、ダイアン・フォン・ファステンバーグ、アーネスト・ソーン、ゼロ・マリア・コルネホなど、周辺にショップがあるメジャーブランドたちが、ハイライン柄のTシャツやタオル、スカーフ、バッグなど、限定オリジナルグッズを販売しました。
ハイラインが地元ショップに愛されている証拠です。

とにかく、話題満載、見所満載のハイライン。
大都会ニューヨークで、地元の人たちとともに草花と戯れ、ハドソン川から吹く風を楽しんでみるのも、良いものではないでしょうか。

Highline
ウエブサイト:http://www.thehighline.org/

2011/11/22 訂正
2009/07/16

  • ピックアップ記事