ゴミから作った楽器が奏でる美しい旋律
「カテウラ・リサイクル・オーケストラ」

南米の小さな国、パラグアイ。
この国の首都アスンシオンの近郊に、カテウラという街があります。

街といっても、ここはゴミ処分場。
この街に住む2,500家族のほとんどは、処分場に日々運ばれてくる1,500トン以上のゴミの山の中からプラスチックやダンボールなどを探し出し、リサイクル業者に転売することを生業としています。

土地も水もゴミで汚染され、ギャングや薬物中毒者が徘徊する、貧しいこのスラム街が、今世界中から注目を集めています。

なぜなら、この街には、ゴミから作った楽器で美しい音楽を奏でる「リサイクル・オーケストラ」があるから。

landfill harmonic
(Photo courtesy of Landfill Harmonic)

ドラム缶やフォークで作られたバイオリンやチェロ。
水道管とスプーン、古いコインから作られたフルート。
まるでおもちゃのような楽器なのに、カテウラの子供たちが奏でる音楽はホンモノの楽器に引けを取らない美しさ。

リサイクル・オーケストラを作ったのは、ゴミのリサイクル事業に携わっていた、元音楽教師のファヴィオさん。

生まれ育った街で男の子向けのオーケストラを結成した経験のある彼は、カテウラの子供たちが幼い頃からゴミ処理場の仕事に駆り出され、学校に行くこともままならないという状況を知り、この地でも子供たちに音楽を教えようと決意します。

手持ちの楽器で子供たちに音楽を教え始めたものの、レッスンを希望する子供の数が増え、楽器が足りなくなってしまいます。

バイオリンはカテウラの家一軒の値段より高いという状況で、新しい楽器を購入することは不可能です。
それに、たとえ高価な楽器を購入しても、盗まれてしまうのは時間の問題。

そこで、ゴミ処理場で働く大工のコーラさんと話し合い、ゴミをリサイクルして楽器を作ることに。
最初はバイオリンを見たこともなかったというコーラさんですが、すぐに持ち前の才能を発揮。
自分で拾ってきたゴミを使って、バイオリン、チェロ、ギター、ドラム、バスと、さまざまな楽器を作り上げていきます。
作れば作るほど技術も磨かれ、今では「安い木製のバイオリンよりも良い音が出る」(ファヴィオさん談)ほどに。

ゴミで作った楽器なら、家に持ち帰って練習しても盗まれることがないため、子供たちの演奏の腕も順調に上達していきます。

landfill harmonic
(Photo courtesy of Landfill Harmonic)

一方、アメリカでは、パラグアイ生まれの慈善活動家アレハンドラさんと、ドキュメンタリ映画のプロデューサーであるジュリアナさんが、パラグアイの人々を助けるためのドキュメンタリ映画を作れないかと模索中。

カテウラのオーケストラのことを知り、これを映画化することに。

「ランドフィル・ハーモニー」と題した映画の予告編動画を、2012年末にユーチューブに載せたところ、瞬く間に大きな話題に。
オーケストラは世界各国に招待されるようになったのです。

映画は現在も制作中で、13年末に完成予定。
14年には、映画の公開と同時に、オーケストラの世界ツアーを行うことが予定されています。

大量消費&格差社会に疑問を投げ掛け、それに対する解決策を提案するドキュメンタリ映画「ランドフィル・ハーモニック」。

来年の公開を待って映画を観るもよし、口コミで映画を宣伝するもよし、不要になった楽器をカテウラの子供たちに寄付するもよし(こちらから)、より良い社会を作るために私たちができることは、意外とたくさんあるものです。

Landfill Harmonic
ウエブサイト:http://www.landfillharmonicmovie.com/

2013/11/18

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