自動車メーカーのフォード社と
タンポポの意外な関係

ford x dandelion
(Photo by five blondes)

都会ではほとんど目にすることがなくなってしまった、タンポポ。

葉はサラダに、花は天ぷらに、根は炒ればコーヒーとして食すことができ、アメリカではスーパーマーケットの野菜売り場にも並んでいる立派な食用植物。
ところが、独特の苦味のためかメジャーな野菜にはなりえず、また、繁殖力が旺盛なために庭や公園に生えると雑草とみなされ、除去されることが多いのです。

そのタンポポを有効活用しようと立ち上がったのが、自動車メーカーのフォード社。

オハイオ州立大学との協業で、ロシアタンポポ(ゴムタンポポ)という品種の根の部分から抽出した成分を利用してゴムを作り、石油由来である合成ゴムの代わりとして、車内のカップホルダーやフロアマット、内装に活用しようという試みが進行中。

使用できる品種は限られているため、家庭の庭に生えている雑草タンポポを回収してリサイクルするといった方法は難しく、現在は同大学内の農業研究開発センターにて栽培されたタンポポを使用しているのだそう。

このプロジェクトはあくまで開発途中であり、実際にタンポポ・ゴムを製品化できるかは今後の検査次第だそうですが、戦時中のロシアでこの種のタンポポから多くのゴムが生産されていたという記録もあり、実現可能性は高そうです。

タンポポだけじゃない、フォード社の取り組み

フォード社は、タンポポ以外にもグアユールゴムというアメリカ国内で栽培可能な植物によるゴム開発も進めており、何とかサステナブルゴムの導入を実現したい様子。

実は、同社は1930年代、創設者のヘンリー・フォードの命により、大豆を原料とする繊維の開発に成功した経緯があり("グリーンファッション入門"より)、サステナブル繊維へのこだわりが強いのかもしれません。

ゴム以外にもサステナブル素材を積極的に導入しており、大豆原料のポリウレタンをシートクッションなどに、麦わらを原料に作られたプラスチックを収納ケースやドアの車内パネルに利用しています。

また、リサイクル素材の採用にも積極的で、ポストコンシューマ(市場から回収した)・リサイクルプラスチックを車体や車内のさまざまな部品に、プレコンシューマ(市場に出回る前に生産工場から回収した)・リサイクル糸をシートの繊維に、ジーンズを回収リサイクルした素材を内装パッドに、ナイロン製カーペットを回収リサイクルした樹脂をシリンダーヘッドカバーに再利用しています。

電気自動車やハイブリッド車などエコカー生産で先行する日本メーカーに対抗するため、こうしたエコ素材を採用することでサステナビリティに取り組む姿勢をアピールしたいという考えもあるのかもしれません。

どのような意図であれ、環境負荷が削減されるのであれば喜ばしいことですが、サステナブルな車の購入・利用を考える前に、自転車や徒歩、あるいは公共交通機関を利用するのが最も環境にやさしいということを、私たち消費者が認識し実行することが大事ではないでしょうか。

Ford Motors
ウエブサイト:http://corporate.ford.com/

2011/05/12

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