アイディアエコ家電カンファレンス、
「グリーナーガジェッツ」 Greener Gadgets

Greener Gadgets

ガジェットとは、おもしろアイテム、斬新なもの、といった意味ですが、グリーン(エコ)なガジェットや最新グリーンテクノロジーを紹介するカンファレンス「グリーナーガジェット」がNYで開催されました。

展示会場には、自転車に乗るときに腕に付けて風力で充電する、小型扇風機みたいな充電器「ハイミニ」(上写真。ソーラーパネル付)や、携帯型ソーラーパネル「ソリオ」(下写真)、ソーラーパネル付バッグ、あの100ドルパソコン「XO」など、かわいくてエコなグリーンガジェットが盛りだくさん。

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一方、カンファレンスでは、ノキアやヒューレッド・パッカード、ソニーなどメーカーの環境担当者から、上記新商品開発をしたデザイナーさんたちまで、幅広いスピーカーが素晴らしい講演・パネルディスカッションをしてくれました。

まず最初は、デジタルフォトアーティストのクリス・ジョーダン氏による講演。
自身の、携帯電話や空き缶などゴミの写真をアートにした作品を披露。いかに世の中がゴミにあふれ、リサイクルが重要かを認識させられます。
グリーンガジェットは「クール」でなければ広く市民の支持を得ることはできないこと、サステナブルな世の中に変えていくためにはかっこよさを押し出す必要があるのだということを熱く語ってくれました。

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続いて、世間を驚かせた100ドルパソコン「XO」を製作した技術者であり、「OLPC(One Laptop Per Child)」を通して発展途上国の子供たちにXOを届ける試みを行ったマリー・ルー・ジェプセン氏の講演(現在はOLPCから脱退し、08年1月より、XO製作で培った技術を商業ベースに乗せるための企業「ピクセル・チ」の代表を務める)。
XOはただ安いだけではなく、実はとてもグリーンなパソコン。安く作るため、無駄を省いて本当に必要なものだけに機能を集中させたら、とても環境に優しいものになったのだそう。世の中がいかに無駄が多いかを考えさせられます。
外で遊ぶことの多い子供用だから、太陽の下でも字が読めるディスプレイ。
電力供給のほとんどない発展途上国だから、超省電力。
暑い国であり学校や家庭の環境が整っていないから、頑丈で壊れにくく、5歳の子供でも修理できる簡単な設計。
環境汚染を避けるため、長持ちでリサイクル可能、PVCや水銀を使用しない安心素材。
これらはすべて誰にとっても必要なことなのに、普通のパソコンには備わっていない機能。グリーンであるために高価である必要はない、金儲けをしようとするから不必要な機能が次々に加わっていく、と厳しいお言葉。
XOの製作に協力的だったマイクロソフトのウインドウズを入れようと試みたが、あまりに重すぎるソフトウエアゆえ、断念したというエピソードも。
誰もが「無理」と言い放った100ドルパソコンへの挑戦、無理と言われるからやりがいが出るという心意気、恐らくは相当苦難の道だったであろう100ドルパソコン実現の道を明るく淡々と語るジェプセン氏。自身の信念の赴くままに真正直に生きるその人柄に、尊敬と賞賛の拍手が贈られた、素晴らしい講演でし た。

次に、ノキア、HP、ソニーのリサイクル担当の方、家電のグリーン化レベルを格付けするEPEAT(Electronic Product Environmental Assement Tool)の方、電化製品からアパレル、建築まであらゆるカテゴリの「素材」に関する知識を有しコンサルティングするマテリアルコネクション社の方によ る、パネルディスカッション。
主なテーマは、家電のリサイクルについて。彼らにとって廃棄物はゴミではなく原料の一部。どうやって不要家電を集め、再生・再利用するかという「リバースロジスティックス」がキーワードでした。
古いインクカートリッジや携帯電話など、消費者にとってはリサイクルしたくてもどこに出せばよいのかわからないことが多く、以前は商品のパッケージの中に入っていたリサイクル袋が、なぜか今ではなくなってしまっている現実。分解してリサイクルしやすいようデザインするなど企業努力は続けているとのことですが、企業と消費者とのコミュニケーションが必要なのでは、と考えさせられます。
そして、企業の売上・利潤追求と環境保全との共存について。
新商品を購入するより、部分的に交換しアップグレードできれば、無駄が大いに省けるはずですが、悲しいことに、売上・利益を上げることが至上命題となっている企業にとっては、新商品を販売することを選ばざるを得ません。デザイナーにとっては、「改良」よりも全く新しい商品を「開発」することに魅力を感じてしまうというエゴから抜け出すのは難しい。
自然資本主義の考え方に準拠しますが、金銭的なことだけでなく、環境対策を企業評価項目に入れていかないと、地球と人間は共存していくことはできないでしょう。

さらに、インテルやフィリップスなどの方による家電のエネルギー効率についてのパネルディスカッションでは、エネルギー効率を上げるための企業努力や技術革新もさることながら、消費者にその実績を伝えるための評価システムや商品ラベルの大切さ、企業間の知識共有の大切さに関しても議論が及びました。

そして、グリーンガジェットの発明者・製作者たちのパネルディスカッションや、世界中から集まった斬新なグリーンガジェットのコンペティション優勝者発表など、盛りだくさんのカンファレンス。家電と環境問題の関係について、学び、楽しむことができ、間違いなく家電業界にもグリーン化の波が押し寄せていることを感じた「グリーナーガジェット」でした。

Greener Gadgets
ウエブサイト:http://www.greenergadgets.com/

2008/02/04

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