グリーン電力使用量の高い企業ランキング

green power
(Photo by Jeremy Levine Design @flickr)

米環境保護庁は、四半期に一度、グリーン電力使用量が高い米企業・団体ランキングを発表しています。

グリーン電力とは、太陽光、風力、地熱、環境負荷の少ない水力発電、バイオマス(廃棄物など特定のもののみ)、バイオディーゼル、これら資源を使用した燃料電池など、再生可能な資源から作られる電力のこと(環境保護庁)。

ランキングの対象となっているのは、環境保護庁が主催する電力グリーン化サポートプログラム「グリーンパワー・パートナーシップ」に加入している組織のみ。
米国内の公開・非公開企業、非営利団体、学校、自治体、政府機関など、グリーン電力供給事業者でない限り、どのような組織でもプログラムに参加できます。
ただし、参加条件として、組織内での最低グリーン電力消費比率が定められています(組織内の総電力消費量が1億kWhの場合はグリーン電力3%、~1,000万kWhなら5%、~100万kWhなら10%、100万kWh以下なら20%)。

対象となる電力は、米国内で発電される環境保護庁の認可を得た電力で、米国内で消費した分のみ。
電力会社からグリーン電力を購入する形でも、オンサイト発電(自社敷地内に発電設備をリースで導入・運営)でも、グリーン電力証書を取得(再生可能エネルギー発電の権利を購入)する形でも構いません。

公表されるランキングは、以下の10種類。

  • 全米グリーン電力使用量トップ50
  • 連邦政府機関トップ10
  • 自治体トップ20
  • 小売業界トップ20
  • 印刷業者トップ20
  • 大学トップ20
  • 幼稚園~高校トップ20
  • オンサイト発電トップ20
  • グリーン電力使用比率100%リスト
  • フォーチュン500企業リスト

2012年第1期の全米グリーン電力使用量トップ50ランキングの上位20は、以下の通りです。

  組織名

グリーン電力
使用量(kWh)

グリーン
電力比率
電力種類
1 インテル 2,502,052,000 88% バイオマス、地熱、小水力、太陽光、風力
2 コールズ 1,524,656,000 100% 太陽光、風力
3 ウォル
マート
872,382,088 28% バイオガス、太陽光、風力
4 ホール
フーズ
800,257,623 106% 太陽光、風力
5 ジョンソン&
ジョンソン
553,565,521 52% バイオマス、太陽光、風力
6 テキサス州
ヒューストン市
438,000,000 35% 風力
7 スターバックス 421,921,000 52% 風力
8 テキサス州オースティン市 406,000,000 100% 風力
9 ステー
プルズ
341,509,408 52% バイオガス、太陽光、風力
10 ヒルトン・ワールドワイド 315,000,000 94% 諸々
11 HSBC
(北米)
300,000,000 112% 風力
12 米エネルギー省 295,974,615 6% 地熱、太陽光、風力
13 テキサス州ダラス市 295,883,744 40% 風力
14 ロッキード・マーチン 274,907,487 15% 太陽光、風力
15 シスコシステムズ 268,644,637 27% 風力
16 アメリカ
空軍
265,777,826 3% バイオガス、バイオマス、太陽光、風力
17 米環境
保護庁
262,100,000 100% バイオガス、バイオマス、太陽光、風力
18 ワシントン
DC
244,267,000 50% 風力
19 TDバンク 240,351,395 106% 風力
20 BNYメロン 225,000,000 75% 風力

IT、流通、製造業、ホテル、金融、政府機関、自治体など、多様な分野がランクインしています。

ただし、これはあくまで、グリーン電力消費量が多いランキング。
たとえグリーンであっても、電力消費量が多いのは良いこととはいえません。
まして、グリーン電力比率が数%しかないのにランクインしているの場合は、組織全体の電力消費量は相当多く、そのほとんどが化石燃料由来の電力ということです。

組織ごとのエネルギー効率を正確に測り比較するのは難しいですが、少なくともグリーン電力比率が高い組織は環境意識が高いといえます。

そこで、以下、2012年第1期のグリーン電力使用比率100%リストの一部です。

  組織名

グリーン電力
使用量

グリーン
電力比率
使用電力
1 コールズ 1,524,656,000 100% 太陽光、風力
2 ホールフーズ 800,257,623 106% 太陽光、風力
3 テキサス州
オースティン市
406,000,000 100% 風力
4 HSBC (北米) 300,000,000 112% 風力
5 米環境保護庁 262,100,000 100% バイオガス、バイオマス、太陽光、風力
6 TDバンク 240,351,395 106% 風力
7 ドイチェバンク 170,000,000 123% 風力
8 ピアーソン 142,250,000 100% 諸々
9 NYSEユーロネクスト 127,322,263 100% 風力
10 カーネギー
メロン大学
119,515,000 103% 太陽光、風力
11 世界銀行 115,325,000 100% 風力
12 モホーク・ファインペーパーズ 104,000,000 102% 風力
13 ダノン 96,626,000 100% 風力
14 BMO
ハリス銀行
91,400,000 160% 風力
15 ドレクセル大学 84,268,000 100% 風力
16 ザ・タワー・
カンパニーズ
80,500,000 163% 風力
17 ING 75,823,000 100% 風力
18 ポートランド港 75,030,000 106% 太陽光、風力
19 ハーマンミラー 74,966,463 100% バイオマス、風力
20 パウダー
リゾート
68,000,000 100% 風力

グリーン電力比率が100%を超えている組織は、グリーン電力証書などにより、自社で消費する電力量以上に再生資源由来の電力を購入しているということです。

電力量の多い順に20組織のみを掲載しましたが、リストには約650もの組織が挙げられています。
最も電力量が少ないグリーン電力100%企業は、グランド・クルー・ワインツアー社(413kWh)です。
全リストは、環境保護庁のウエブサイトから見ることができます。

こんなにも多くの組織が消費電力の全量をグリーン電力でまかない、政府はランキングやリストを公表して電力グリーン化を促進しているのですから、今後さらにグリーン電力比率は増えていくでしょう。

現在アメリカで生産されている電力のうち、再生可能資源由来の電力は10%(2010年時、米エネルギー情報局)。
日本より高い比率とはいえ、石炭依存率が依然高く、それに続く天然ガスや原子力も大きな問題を孕んでいるいるため(水圧破砕法(ハイドロ・フラッキング)によるシェールガス開発の危険性)、グリーン電力比率のさらなる拡大が求められています。

GreenPower
(データ出所:米エネルギー情報局)

アメリカでは、16州とワシントンDCで電力自由化が実現しています(米エネルギー情報局)。
州により温度差はありますが、ニューヨークをはじめ、自由化が進んでいる州では、発電、送電、小売すべての分野に企業が自由に参入でき、企業や個人は希望する電力源を選ぶことができます。

自由化されていない州でも、地域の電力会社が提供するグリーン電力オプションを選べたり、グリーン電力証書の購入やカーボン・オフセットビジネスなどにより、簡単にグリーン電力を購入することができます。

州や市など多くの自治体は、グリーン電力の税優遇制度を導入し、電力のグリーン化を後押ししています。

今後より多くの企業がグリーン電力比率を100%にし、省エネ活動を促進すれば、再生エネルギー100%の社会も夢ではないでしょう。

そして、私たち自身も省エネとグリーン電力促進活動を行い、グリーン電力使用率100%の企業や団体を支援すれば、そうした社会の実現を早めることができるでしょう。

Environmental Protection Agency
ウエブサイト:http://www.epa.gov/greenpower/toplists/index.htm

2012/02/23 訂正
2010/08/24

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