フェアトレード Fairtrade
(Photo by Kaare Viemose, courtesy of Transfair)
耳にすることは多いけれど、詳しいことはよくわからないという言葉、たくさんありますよね。
「フェアトレード」も、そのひとつかもしれません。
フェアトレードは、直訳すると「公正な取引」という意味。
フェアトレード認証機関の国際フェアトレードラベル機構は、以下のように定義しています。
「フェアトレードとは、対話と透明性、敬意に基づいて行われる、公正な国際取引を目指す貿易パートナーシップのこと。
特に途上国の過小評価されがちな生産者や労働者に対し、よりよい取引条件を提示し、権利を守ることで、サステナブルな開発に貢献する。」
(FLO International)
また、同団体の主目的として、以下5つを挙げています (FLO International)。
- サステナブルな生産に必要なコストを賄える分の価格を、生産者に支払う。
- 社会的・経済的・環境的な開発に投資できるよう、フェアトレード・プレミアム価格を支払う。
- 生産者が希望する場合、前払いする。
- 長期的なパートナーシップを築き、生産者が主導権を持って取引できるようにする。
- 社会的・経済的に公正で環境的に責任ある生産・取引を実現するために必要最低限の基準と発展的な基準を設定する。
つまり、これまで不当に扱われることの多かった途上国の生産者に対し、製品の適正価格と、事業や地域の発展のために追加のプレミアム料金を支払い、長期契約によって安定をもたらし、児童労働の禁止や健康保険の付与、労働組合の設立などを保証することで人権を守る。
それが、公正な取引、フェアトレードです。
フェアトレードを実現するために必要なこと
フェアトレードが機能するためには、信頼のおける認証システムが必要です。
企業が個々に「公正に取引しています」と訴えたところで、真偽はわかりません。
そこで、1980年代以降、労働状況や資金の流れを監視し、公正に取引されていることを認証する組織が各国で生まれました。
そして、1997年、各国に散在している認証団体をひとつにまとめるため、フェアトレード・ラベリング・オーガニゼーション(FLO)が設立されました。
FLOは、消費者が分かりやすいよう、それまではバラバラだった認証マークを世界でひとつの統一マーク(左下)にしようと試みています。
アメリカのフェアトレード認証団体であるフェアトレードUSAは、2011年末にFLOから離脱し、独自の認証マーク(右下)を使用していますが、日本をはじめ世界中のほとんどの国が統一マークに移行しています。
FLOが認証する製品は、バナナ、ココア、コーヒー、果物、米、ハチミツ、砂糖、茶、ワイン、ジュース、スパイス・ハーブ、コットン、花、スポーツのボール、金。
たとえば、コーヒーの場合、FLOでは、アラビカコーヒーの適正価格を1パウンド1.40ドルと決め、市場価格がそれ以下の場合でも1.40ドル、市場価格がそれ以上になった場合は市場価格を支払うよう、定められています。
オーガニックで生産された場合はさらに30セント高い価格を支払います。
さらに、生産者の生産性向上や地域社会発展のために使ってもらうよう、20セントのプレミアム価格を上乗せして支払います。
ほんの僅かの差ではありますが、途上国の生産者にとっては、大きな違いなのです。
なぜフェアトレードが必要?
弱い立場を守ること、公正に生きること。
こんなにあたりまえのことがなぜ声高に叫ばれているのかというと、残念ながら、現代社会ではこうしたあたりまえのことが行われていないからです。
昔は、自分が住む国や地域で作られたものを自分たちで消費する、自給自足が当たり前でした。
ところが、先進国の生活レベルが上がり、労働賃金が高くなったため、自国での生産が難しくなりました。
安い労働力を求めて、まだ発展していない国へと生産拠点を移し続け、食品や必需品の値段は下がっていきました。
国際貿易が行われるようになると、生産・流通の仕組みが複雑になり、製品がどこでどのように作られ、どのような経路で流通し、消費者の手に届くのか、見え難くなくなりました。
その結果、不正が横行するようになり、途上国の生産者が貧困に喘ぎながら生産した製品を、豊かな先進国の人々が非常に安い価格で入手し、余ったお金で贅沢に暮らすという、不均衡な構図ができあがってしまいました。
国際貿易自体が良くないわけではありません。
確かに、世界中の国が自国で消費するすべての製品を自給できれば、物流による温室効果ガス排出量が削減できますし、不当な取引は減るでしょう。
しかし、コーヒーやバナナ、マンゴーなど特定の気候条件でしか栽培できない作物はたくさんありますし、国民性による得手・不得手があるので、各国が役割分担することは悪いことではありません。
また、生産拠点を移すことにより途上国に発展の機会が生まれるというメリットもあります。
問題は、正当に取引されていないことなのです。
市場の原理に任せて自由に貿易すれば、必ず不正な取引が起こります。
力のない貧しい人ほど、その被害を被ります。
その不正を取り締まる機能が必要なだけなのです。
かつての先進国のように、途上国の人々が経済発展に向けて努力すればよいのでは、と思うかもしれませんが、それができない状況にあります。
途上国では、かつて、自分たちが食べていける分の作物を自給し、幸せに暮らしていました。
自由貿易が行われるようになると、先進国が要請するコーヒーやチョコレートの原料となるカカオや砂糖などの特殊な作物を作るようになりました。
しかし、作物の価格は下がり続け、農薬や殺虫剤の依存により生産コストの上昇と土壌の劣化が起こり、気候変動により収穫が不安定になりました。
栽培した作物は、生産コストにも満たないほどの安価で取引され、作れば作るほど貧しくなるという悪循環が生まれました。
多額の借金を抱え、日々生活するだけで精一杯の状態で、他の事業に投資する資金など得られず、貧困から抜け出せすことができなくなっているのです。
生産者に十分な価格が支払われないのは、市場で取引される価格が安いことに加え、中間業者による搾取があります。
多くの小規模農家は、直接買い手と取引することができず、数々の中間業者を経て製品を市場に出します。
中間業者が不当に高いマージンを得ると、たとえ買い手が十分な対価を支払っても、生産者が受け取る金額はごく僅かになってしまうのです。
また、途上国では児童労働が頻繁に行われています。
大規模農家や製品生産工場では、本来学校に行くべき年齢の児童が非常に安い賃金で長時間労働を強いられています。
子供たちが学校に行き知識をつけなければ、将来の発展はあり得ません。
貧困に喘ぐ人々は、病院に行き薬を買うためのお金がないため、薬さえあれば簡単に治るような病気でも死に至ってしまいます。
こうした問題に対処するため、世界中から多くの支援や寄付が行われています。
支援や寄付はとても大切なことですが、永遠に先進国が途上国に寄付し続けるわけにはいきませんし、途上国の人々は自立を望んでいます。
正当な価格を支払い、労働者の権利を尊重するフェアトレードを行うことで、途上国の人々が貧困から抜け出して自立し、発展する機会が生まれるのです。
私たちにできること
先進国に住む人々は、自らの豊かな暮らしが、途上国の犠牲の上に成り立っていることなど、知る由もありません。
途上国の人々がどのように暮らし、なぜそれが起こるのかを知れば、人々はあまりにも安い製品を買わなくなるのではないでしょうか。
私たちにできることは、
フェアトレードマークのついた商品を選び購入すること、
フェアトレードのこと、世界で起こっていることを、みんなに伝えること。
みんなの力が集まれば、世界は変わっていくはずです。
世界中のみんなが幸せになるためには、先進国に住む私たちの力が必要なのです。
知ってるだけでは何も変わりません。
行動に移すことが大切なのです。
日本で扱っているフェアトレード商品は、フェアトレード・ラベル・ジャパンのサイトから確認できます。
Fairtrade Labelling Organization(FLO)
ウエブサイト:http://www.fairtrade.net/
フェアトレード・ラベル・ジャパン
ウエブサイト: http://www.fairtrade-jp.org/
2012/03/01 訂正
2008/08/06