エコデザイナーインタビュー:
ベリル・マン(アジュナ)
(Photo courtesy of Ajna, 2010 Spring Collection)
イギリスのロイヤル・カレッジ・オブ・アートを卒業後、ダナ・キャランに見初められ、ニューヨークでファッションデザイナーの道をスタートした、ベリル・マンさん。
その後、フセイン・チャラヤン、セイ、カルバン・クラインなど数々の著名ブランドを経て、再びダナ・キャランに戻りニットウェアのデザインディレクターとして活躍。
サステナビリティの重要性に気付き、2007年に自身のブランド「アジュナ」を設立したべリルさんへの一問一答インタビュー。
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ブランドを立ち上げた経緯を教えて下さい。
繊維のリサーチをしにペルーのオーガニックコットン農場に行ったことがきっかけです。
その時に出会った生地がとても気に入り、私がやりたいことはこれだと思いました。
ブランドを立ち上げる前は何をしていたのですか。
ダナキャラン・コレクションのニットウェア担当デザインディレクターをしていました。
サステナビリティについて考え始めたきっかけは。
サステナビリティに興味を抱き、深く研究し始めたのは、2007年のことです。
メジャーなファッションブランドで長年働き、ファッション業界は地球資源を守ることに関して責任を持つべきだと感じました。
そして、自分がその第一線で働き、美しく、かつ責任あるハイファッションを作りたいと思いました。
(Photo courtesy of Ajna, 2010 Spring Collection)
素材選びの基準は。
地球の天然資源を保護することに役立つ素材、害のない素材、無駄の少ない素材を選んでいます。
私は自然が好きで、自然からインスピレーションを得ます。
農場や工場を調査する際には細心の注意を払い、製品が認証済オーガニックであるか、従業員を倫理的且つ公正に扱っているかを確認します。
私の服はクリーンでミニマルなスタイルなので、過剰な染色や加工を施す必要がありません。
本物のレザーや毛皮は、美しいとは思えませんし、動物の権利を守りたいと思っているので、使いません。
シルクに関しては、蚕の幼虫を害さずに生産するピースシルクを好んで使います。
最近興味を持っている、新しい素材はありますか。
リサイクル素材です。
リサイクルシルク混やリサイクルポリエステル混のジャージー素材は、私のコレクションにおいて必須です。
こうしたサステナブル素材が市場で成功を収めれば、多くの世界的な問題を解決できると思います。
また、洗濯する必要のない、節水効果のある素材にも興味があります。
素材以外で、サステナビリティに関して心掛けていることはありますか。
ルックブックやタグなどの印刷物には、リサイクル紙と大豆インクを使用し、電力を風力発電で賄い、カーボンオフセットを行っている印刷業者に依頼しています。
そして、公正な労働基準を持ち、労働者に公正な賃金を支払っている企業とのみ取引しています。
また、可能な限り、地元ニューヨークでローカル生産しています。
どのような方が、アジュナの服を購入していますか。
クラシックでスタイリッシュで洗練された女性、見た目だけでなく着心地がよいことを求める女性、自信があり聡明な女性のためにデザインしています。
アジュナの服は、どのような店で販売されていますか。
セレクトショップやオンラインショップです。
他のサステナブルブランドとの違いは何ですか。
アジュナの服は、クラシックだけれども新しく、クリーンで長く愛用できます。
毎シーズン新しいテーマやストーリーを決めている多くのファッションブランドと異なり、アジュナのコレクションはシーズンに関係なく永遠に着られ、高品質でデザイン性が高いことが特徴です。
(Photo courtesy of Ajna 2011 Spring Collection)
サステナブルファッションデザイナーとしての目標は。
すべての女性は美しくありたいし、美しいものを所有したいと思うものです。
私は女性たちに、その美しさはどこから来ているのか、私たちが購入するものが地球や人々にどのような影響を与えるのか、といったことに疑問を抱くきっかけづくりをしたいと思っています。
ただ美しいだけでなく、地球と人々を守ることができるようなファッションを作り出し、あるいは所有することができると考えています。
サステナブルファッションを提供する大企業に、どのように対峙していますか。
今私ができることは、美しく、倫理的で、責任ある服を作り続け、消費者を啓蒙し続けることだと思います。
消費者が私たちの商品に目を向けてくれるようになれば、大手小売企業がアジュナを取扱ってくれるだけでなく、宣伝もしてくれるようになると思います。
厳しい経済状況の中、これまでブランドを継続できた理由は何だと思いますか。
私を突き動かしているのは、情熱です。
私は自分が見るもの、感じることを信じます。
過去数年はとても厳しかったですが、それは経済自体がサステナブルでないからであり、すべてのビジネスが実行可能で持続可能なまったく新しい仕組みに生まれ変わる必要があるからだと思っています。
サステナブルファッション業界は、現在でも成長していると思いますか。
はい、そう思います。
ただし、経済を活性化するためには、持続可能で効率的に事業を運営できる良い仕組みを見つけ出さなければなりません。
斬新なデザイン、新しい技術や素材が登場することを楽しみにしています。
アメリカでサステナブルファッションのムーブメントが起こってから現在までに長い年月が経ちましたが、その間に何が変わったと思いますか。
若くフレッシュなサステナブルデザイナーが生まれ、多くのサステナブル素材が利用できるようになり、さまざまなサステナブルイベントが行われるようになったと思います。
ニューヨークには素晴らしいサステナブルファッションのコミュニティがありますし、私は素晴らしい人々に囲まれていることに誇りを持ち、ラッキーだと感じています。
サステナブルファッションは、今後どういう方向に向かうと思いますか。
将来も、素晴らしいデザインとスタイルの服が作られ続けると思います。
そして、サステナブルファッションは、多くのセレブが普段着としてもレッドカーペットでも着用し、大手百貨店でも販売されるようになるでしょう。
大きな変革が起こるのに、そんなに時間はかからないと思います。
消費者が自分たちが何者であるかを理解すれば、変革が始まると思います。
Ajna
ウエブサイト:http://www.ajnacollection.com/
2012/03/27