ウエブセレクトショップのユークス、
レーザーレーサー水着ドレスを限定販売
(Photos courtesy of Yoox)
ウエブセレクトショップ「ユークス」のエコプロジェクト「ユークシジェン」が、エコブランドのフロム・サムウェア(From Somewhere)と水着メーカーのスピード社(Speedo)とのコラボ水着を限定販売しています。
といっても、この水着、ただの水着ではありません。
まずは、水着の概念を覆す美しいデザイン。
水着素材でありながら、トップス、スカート、レギンス、ドレスと、水着以外の用途でも活用できるアイテムが揃う、画期的なコレクションに仕上がっています。
特に、ユークシジェン限定販売となる水着ドレス3点(写真)はデザイン性が高く、ビーチ・プールサイドのパーティで着用すれば目立つこと間違いありません。
そして、これら3アイテムは、収益の全額が"グリーンクロス・インターナショナル"というゴルバチョフ元ソ連大統領の呼びかけによって設立された環境NGOに寄付されるので、とてもエシカル。
さらに、コレクションすべてが、本来廃棄処分となるべき余剰在庫の水着を再利用したものなので、サステナブル。
そのうえ、使用したのはレーザーレーサーという超ハイテク水着なので、水着としての性能も世界最高レベルなのです。
良いこと尽くめのように見えますが、実はこのコラボコレクション、複雑な背景の下に生まれたものなのです。
記録更新を連発した高性能水着、公式大会で着用禁止に
レーザーレーサーとは、スピード社が開発した高性能競泳用水着。
2008年に、同素材の水着を着用した水泳選手が次々に世界記録を塗り替え、大きな話題を呼んだのは記憶に新しいところ。
日本では、英国メーカーである同社と契約関係になかった日本水泳連盟が、同年開催された北京オリンピックで日本人選手のレーザーレーサー着用を許めるか否かという点で揉め、メディアの注目を集めました。
結局オリンピックでは日本人選手を含め多くの選手が着用し、数々の記録を生み出しました。
その他大会も含め、レーザーレーサーを着用した選手による世界記録更新数は91にも及んだのだそう(Speed社HPより)。
ところが、その後世界中の水着メーカーがレーザーレーサーを超える高性能水着の開発に取り組み、競争が激化。
結果、水泳の記録更新が、選手の力だけでなく水着の機能性に依存されるという事態に陥ってしまいました。
そこで、世界水泳連盟はこの開発競争に終止符を打つべく、2009年に水着の新規則を発表。
公式大会に使用可能な水着は、織・編物の繊維製、男性用は腰下・膝上、女性用は首や肩を覆わず膝上に制限、ジッパーなどの使用は禁止、素材の厚さや浮力、浸水性などの検査を経て、事前に連盟の承認を得たものでなければならないという厳しい規制が設けられました。
足首まで覆われたスタイルで、織・編物には該当しないポリウレタン製、しかもジッパー付きのレーザーレーサーはこの基準に合致せず、世界最高水準の性能を保持しながら、使用不可能な製品となってしまったのです。
そこに、余り布を使ったサステナブル製品作りに取り組んでいた、グリーンファッションブランドのフロム・サムウェアが着目。
大量の売れ残り在庫を抱え、処分に困っていたスピード社と利害が一致し、今回のコラボが実現したのです。
スピード社は、フロム・サムウェア以外にもさまざまなデザイン企画に対し、レーザーレーサーの余剰在庫を提供しています。
NASAの技術をも活用して開発したという高品質な製品が、無益な企業間競争と各国の覇権争いの末にゴミと化してしまったのは非常に残念なことですが、同社がそれをただ無駄に廃棄するのではなく、美しい製品に生まれ変わる機会を提供し、この不毛なストーリーを伝えることで世間に問題提起をしたことは、有意義なことといえます。
そして、こうした同社の考えを受け継ぎ広めることができるのは、消費者である私たち。
悲しいストーリーを背負ったこの美しい水着ドレス、ただスタイルがかっこいいだけではなく、着用することで意味を生み出すことができるのです。
言葉で語らなくても、ただ着ているだけで自分の意思を主張できる、それもファッションの素晴らしさといえるでしょう。
服や小物が溢れかえる現代社会。
ただ服や小物を生産・消費するだけでなく、ファッションの意味を考える機会が必要なのかもしれません。
YooxGen
ウエブサイト:http://www.yoox.com/yooxygen/
2011/05/05
*2011/05/11「ユークスジェン」→「ユークシジェン」に訂正