「アパレル・ダイエット」「ショッピング・ダイエット」
アメリカ人の消費行動に変化の兆し

shopping diet
(Photo by jamelah from flickr)

りんごダイエットにヨーグルトダイエット、低炭水化物(アトキンス)ダイエット、最近では血液型ダイエットなんていうものも出てきたようですが、最近話題になっているのが「アパレル・ダイエット」や「ショッピング・ダイエット」。

といっても、体重や脂肪を落とすためのダイエットとは違います。
服や小物のムダをそぎ落とす、つまり、新たな服や小物の購入を控え、クローゼットに眠っている要らないものを整理して消費活動を見直すという、ファッションのダイエットなのです。

「アパレル・ダイエット」という言葉を提唱しているのが、小売・広告業界で25年のキャリアを持つ、シアトル在住のサリーさん。
2009年9月1日、20人の仲間とともに"1年間新しい服を買わない"ことを約束し、「グレード・アメリカン・アパレル・ダイエット」というブログを立ち上げました。
この活動がメディアで取り上げられるようになり、アメリカだけでなく世界各国から新たな次々にメンバーが参加。
現在は、18歳から73歳まで幅広い年齢のメンバー約300名の大所帯。
2010年8月末に1期目が終了し、9月からは2期目が始まっています。

メンバーがすべきことは、新しい服や靴、小物を買わないこと。
誰かにもらったものならOKですが、誰かに頼んで買ってもらったり、欲しいもののリストを作ったりしてはいけません。

約束を守れなかったからといって罰則があるわけではありません。
概念に賛同する人たちが行う自主的な活動なので、強制する必要なんてないのです。
一人より大勢で一緒に活動した方が楽しいし、社会に与える影響も大きくなる、だからグループで活動しているのです。

サリーさんが、この活動を始めたのは、自分の消費行動が企業にコントロールされているように感じたから。
元々、バーゲンハンティングが大好きだったというサリーさん。
安いからという理由で似合わないものを衝動的に買ってしまったり、特別必要がないものなのにいつか必要なときが来ると信じて買っておいたり。
結果残ったのは、タンスの肥やしになっているたくさんの服や小物と、クレジットカードの請求書。

政府や企業や多くのメディアは、消費減退は国力の低下や経済の停滞に繋がるという理由で消費の活性化を促しますが、サリーさんは消費行為自体を否定しているわけではありません。
消費者が企業のマーケティング活動の犠牲者になるのではなく、購入する商品をよく知り、意味のある消費をし、自分の消費行動に責任を持つべきだと思っているのです。

「アパレル・ダイエット」には誰もが簡単に参加できます。
参加を希望する人は、写真と自己紹介文をメールで送れば、IDとパスワードが送られるので、ブログにログインして自由に自分の活動や思いを書くことができます。
もちろん、ブログに参加せず自分だけで行ってもいいですし、1年がムリなら1ヶ月や半年など自分なりに期限を決めてプチ・アパレル・ダイエットをしたっていいのです。

少ない服でも着まわしでおしゃれに

新しく服を買わないだけでなく、手持ちの服を少なくしようという動きもあります。

昨年、1枚の服を1年間着まわすという"ユニフォーム・プロジェクト"が話題になりましたが(こちら)、もっと簡単に誰もが実践できる着まわしプロジェクトを考えたのが、「シックス・アイテムズ・オア・レス」のハイディさん。

1年に1枚だと、かなりのスタイリングの才能が必要だけど、1ヶ月に6枚の服なら簡単に実践できるのでは、とツイッターとフェイスブックで問いかけてみたところ、賛同してくれた人が4日で100人も集まったのです。
2010年の6月から7月の1ヶ月間実行してみると、世界中から反響があり、この試みを行った人を指す「シックサー(Sixer;"6"を表す"Six"+人物を表す"er")」という言葉も生まれました。

そしてなんと、この試みを、頻繁にテレビ出演するNBC局の金融担当記者ジーン・チャンツキーさんが行ったのです。
この試みは秘密裏に行われ、彼女は1ヶ月間何度もテレビに出演したのですが、結局同じ服を着まわしていることに気付く人は誰もいなかったのだそう。
彼女のスタイリングの上手さもあるのでしょうけれど、テレビに出演しているのに視聴者も含め誰も気付かなかったというのは、1ヶ月間6枚の服で過ごすことは可能だということでしょう。

ただし、ハイディさんもジーンさんもいっているように、少ないアイテムを何度も着まわすことで洗濯回数が増えるので、その際の水・エネルギー使用量を考慮すると、環境にやさしいかどうかは少し疑問です。
1ヶ月間の試みで着まわし上手になり、長期的に見て服の購入数が減るのであれば、環境メリットはあるといえるでしょう。

ショッピング・ダイエットやアパレル・ダイエットの本当の目的は、服の数を減らすことではなく、自身の消費活動を見直すこと。
イベントとして楽しむのは良いことですが、期間終了後に反動のないよう、概念をきちんと理解し、自分のペースで無理せず行うことが、効果的で長く続く秘訣なのかもしれません。

Great American Apparel Diet
ウエブサイト: http://www.thegreatamericanappareldiet.com/

Six items or less
ウエブサイト: http://sixitemsorless.com/

2010/11/12

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