クーパー・ヒューイット美術館
「デザイン・フォー・ア・リビングワールド」展
Cooper Hewitt, Degin for a Living World
クーパー・ヒューイット国立デザイン美術館で開催中の「デザイン・フォー・ア・リビングワールド」。
いまやアートはデザイン性を追求するだけでなく、地球と共存する必要がある、というメッセージを発信しているこの展示会。
環境や社会に優しい素材を用い、アイザック・ミズラヒやヘラ・ヨンゲリウスなどの著名アーティストが製作したアート作品を展示しています。
まずは上ふたつの美しいドレスとヒール。
これらは、リズ・クレイボーンのデザイナーとして、また「プロジェクト・ランウェイ」に続くファッションデザイナー・オーディション番組「ザ・ファッションショー」のホストとしてなど、活躍目覚しいアイザック・ミズラヒ氏の作品ですが、このふたつ、何の素材から作られていると思います?
なんと、鮭の皮なんです!
最近はフェラガモなどの有名ブランドでも、魚の皮を素材にしたバッグや靴を作ったり、魚版バンブーのような、テラピアという成長が早く大量に育つ魚の皮を使って「レザー」小物が作られたりと、動物愛護派や環境保護論者のファッションピープルの間で、魚の皮に注目が集まっています。
魚は、身だけを食して皮を捨ててしまうことが多いですから、そうした捨てられる運命にある皮を有効利用することで、ゴミ削減にもなりますし、人間の物欲のために動物の命を無駄にしないという点でも、優れた素材。
動物のレザーよりも剥ぎやすく染まりやすい。だから、クロムなど有害物質を使用せず、ベジタブル・ダイで染めやすい、というのもフィッシュレザーの優れた点。
この鮭の皮を丸いチップにして、ひとつひとつドレスに縫い付けるという手の込んだ作業によって出来上がったのが、上のドレス。
まさに、クラフトマンシップxエコ素材のサステナブル作品です。
そしてもうひとつ、おもしろいエコアイディア作品で目を惹いたのは、上の写真のイヴ・ベハーさんのココアシュレッダー。
コスタリカのオーガニックココア農場で出会った女性のココアの飲み方にインスパイヤされて作られた作品だそうで、このツールでココアを削ると筒の中にココアが溜まり、カップに入れてお湯やホットミルクを注げばホットココアの出来上がり、というもの。
コスタリカのオーガニックココアの塊を、このツールと一緒にジュート素材の子袋に入れて提供するというアイディア。
その他、オーガニックウールのラグや、バンブー素材のデザインチェア、ゾウゲヤシの種のジュエリー、ケイト・スペードが手掛けるヤシの葉素材のバッグなど、デザイン性の高いサステナブルアートが盛りだくさん。
見た目だけでなく、素材にも注目してアートやファッションが作られ、楽しめるようになれば、躊躇なくデザイン性の高い作品を楽しめるようになります。
デザイン・フォー・ア・リビングワールド、つまり、私たちが生きる地球のためのデザイン、大切なことです。
クーパー・ヒューイットの「デザイン・フォー・ア・リビングワールド」展は2010年1月4日まで開催。
ぜひ訪れて、地球とアートの大切さ、感じてください。
本も発売されています(Amazon.co.jp→Design for a Living World
)
Cooper Hewitt National Design Museum
ウエブサイト:http://cooperhewitt.org/
2009/05/29