エンパイヤステートビルのエコ化、
サステナブルな建築物改修計画のモデルに
ニューヨークの観光スポット、エンパイヤステートビルディングが、エコ化を宣言!
展望台と毎日色が変わるライトアップが有名なエンパイヤステートビルですが、本業は、多くの企業が入居するオフィスビル。
オフィスであるということは、電気や冷暖房などによるエネルギー使用量、水使用量、ゴミの量も多いということ。
その量、一日の水使用量750,400リットル、一年の使用電力量4,000万キロワット時、一月のゴミ排出量100トンという膨大さ。
1930年に建てられた古い建物だから、建築物自体の省エネなんて考えられてもいなかったでしょうし、103階建てという高層ビルだけに、エレベータの数だけで73機もあるというから、それだけの量のエネルギーも必要なのも納得。
でも、そこで納得しなかったのが、ビルの経営者。
ニューヨークのランドマークでもあるエンパイヤステートビルだからこそ、他のビルの見本となるべくエコ化を図ることを決意。
もちろんそれだけでなく、エコ化=利益を上げることにもつながることに着目し、運営側もテナントも地球環境も全員がハッピーになるという判断のうえ、大掛かりなエコ化に着手したのです。
同ビル周囲には、「The Empire State REBuilding」と書かれた看板が(下写真)掲げられ、再生をアピールしています。
目標は、エネルギー使用量と温室効果ガス排出量を38%削減し、エネルギースターのスコアを90に上げ、LEEDゴールド認証を得る、というもの。
その手法は、クリントン前大統領のクリントン気候イニシアチブやロッキーマウンテン研究所などの専門家チームがプロジェクトに参画し、60以上もの省エネ戦略の中からベストなものを抽出したのだそう。
代表的な戦略として、6,500の窓照明の改修、ラジエータの断熱改修、テナントの照明・採光・電源プラグの改良、空気制御装置の交換、冷却装置の改修、ビル全体の管理システムの改良、換気管理システムの改良、ウエブベースのテナント用エネルギー管理システムの導入、などを挙げています。
大きくまとめれば、照明、換気、冷暖房システムの改良によりエネルギー効率を上げる、ということのようです。
このプロジェクトにかかる初期投資額は、2,000万ドル。
プロジェクト完了予定は2013年、改修後は、年440万ドルの省エネ効果が得られるという算段。
この改修により削減される二酸化炭素排出量は、今後15年で105,000メートルトン(車17,500台相当)だそう。
でも、ニューヨークのランドマークとはいえ、ひとつのビルの改修に際し、クリントン財団やロッキーマウンテン研究所などの権威が参画したというのは、すごいこと。
その理由は、このプロジェクトを、老朽化した建築物のサステナブルな改修計画のモデルとして、世界中にこうした改築プロジェクトを広めるためなのです。
環境への配慮というだけでは、オフィスビル経営者も改修の着手に尻込みしてしまうかもしれませんが、採算性がある、利益率が上がる、となれば、意欲を燃やすことになるかもしれませんよね。
実は、ニューヨーク市では、二酸化炭素排出量のうち70%以上が商用・住居用のビルによるものだそう。
そんな高層ビル都市であるニューヨークにある、世界的に有名なエンパイヤステートビルだからこそ、世界のサステナブル建築改修プロジェクトのモデルとして相応しいとされたのでしょう。
このプログラムをモデルとして、世界中の建築物がエコ化を進めれば、大きな変化が生まれるに違いありません。
古いビルは壊して立て直すのではなく、改修して古い資産を大切にする、且つ、改築するなら環境に配慮した形に、そんなマインドが世界中に広まれば、サステナブルな世の中が実現する日はそう遠くはないのかもしれませんね。
ニュースリソース:
・Jones Lang LaSalle Press Release
・Rocky Mountain Initiative Press Release
Enpire State Building
ウエブサイト:http://www.esbnyc.com/
2009/05/14