未来の都市型農業?
ヴァーティカル・ファーミング(垂直農法)
(Photo courtesy of The Vertical Farm Project)
数々のメディアが取り上げ、にわかに話題となりつつある未来の都市型農業、ヴァーティカル・ファーミング(垂直農法)。
広大な農地を有さずとも、都市部の高層ビルなど限られた敷地、且つ室内で農業を行い、拡大する都市人口の食を支えよう、という概念です。
そんなこと、いったいどうやって?
って思うかもしれませんが、実は、単に水耕栽培を利用するという簡単なこと。
子供のころ、理科の実験で、ビーカーに水を入れてヒヤシンスなどの植物を球根から育てた経験がある方もいらっしゃるかと思いますが、水耕栽培もそれと同じようなもの。
土を使わずに水と養液を与え、温室で植物を育てる農法です。
土を使わないから農薬も不要、益虫を効果的に使うことで殺虫剤も不要、大型の農機を使う必要もないし、温室だから天候に左右されることがなく恒常的に収穫できます。
与える養液を有機溶剤にすれば、化学肥料を使わない有機栽培にもなるし、廃液を浄化し再利用すれば水使用料も通常の農業より格段に減ります。
(Photo courtegy of The Vertical Farm Project)
水耕栽培を都市部の高層ビル内まるごと使って行えば、場所を取らないうえ、郊外から作物を輸送するためのCO2排出量を省くこともでき、都市部の住宅から出た廃液やレストランから出た食品廃材も簡単に再利用することができるため効率的、ということなのです。
ニューヨークには既に、水耕栽培をしながら雨水や川水のリサイクルや太陽光発電を行う、総合的な都市型エコ生活の実験・教育施設サイエンス・バージがありますが、そこで教えている手法を大規模な構想に発展させたのが、ヴァーティカル・ファーミングといえます。
コロンビア大学のディクソン・デスポミエ教授が1999年に提唱したのが最初と言われているこの概念。
デスポミエ教授によると、1ブロック大の30階建て高層ビル全体を使ってヴァーティカル・ファーミングを行えば、5万人分の食を供給できるとのこと。
貧しい人たちの食を支える画期的な手法だと主張する人もいます。
新しい概念ゆえ、反対派も多いためになかなか資金が集まらず、まだ実例はありませんが、ニューヨーク・マンハッタン区長のスコット・ストリンガー氏がこの新しい概念に興味を示しているのだとか。
反対派の主張としては、本来土で育つはずの野菜を、水と養液で育てるなんておかしい、何か弊害が出るのでは、という意見が多い様子。
農地に適した土地が減っているとはいえ、まだまだ土地がたくさんあるアメリカでは、土壌を改良し、自然・有機栽培を増やすことの方がサステナブルな方法といえそうです。
ただ、地球の食糧問題を解決する糸口となる可能性もありますから、試してみる価値はあるはずです。
砂漠と石油の国ドバイが興味を示しているという報道もありましたが、国土が狭く都市部に人口が集中している日本でも、試してみる価値があるのかもしれませんね。
Vertical Farming Project
ウエブサイト: http://www.verticalfarm.com/
2009/11/30