アメリカ食品ラベルの読み方
食品ラベルにはさまざまな表示がありますが、どのような意味があるのか、なぜその表記がされているのか、検討してみましょう。
<野菜・果物>
「GMO Free / Non-GMO」
遺伝子組換え食品(GMO;Genetically Modified Organism)ではない、あるいは原料として使用していない、ということ(遺伝子組み換え食品に関する詳細はこちら)。
アメリカでは、遺伝子組換え食品の生産・流通が認められていますが、それを表示する義務はありません。
現在、アメリカで栽培される大豆、とうもろこし、コットンの90%程度が遺伝子組換え作物なので(USDAのウエブサイト)、これらを原料とする食品のほとんどが遺伝子組み換えと考えられます。
にもかかわらず、食品の容器包装にはその旨が表記されていないため、多くの消費者は知らずに遺伝子組み換え食品を食べていることになります。
そのため、遺伝子組み換え食品を使用していないことを主張したい企業が、容器包装に「GMO Free」「Non-GMO」と表記するようになりました。
これに対し、米食品医薬品局は、消費者の誤認を招く可能性があるので、専門機関による調査結果がある場合を除き、こうした表記をすべきではないとしています(FDAのウエブサイト)。
実際に遺伝子組み換えを使っていないけれども検査や認証に必要な資金がないという場合、本当は遺伝子組み換えを使っているけれども売上を上げるために虚偽の記載をしている場合、両方が考えられますが、どちらなのか消費者には判断できません。
認証済オーガニック製品であれば遺伝子組換え食品は使用されていないので、オーガニックを選ぶか、遺伝子組換えでないことを証明する認証マーク(Non-GMOプロジェクト)が付いているものを選ぶとよいでしょう。
「Conventional」
農薬や化学肥料などを使用した「従来通りの(Conventional)」農法により生産されたもの、ということ。
商品のラベルやパッケージに記載されることはありませんが、オーガニックとの違いを明確にするため、小売店のPOPなどに使用されています。
オーガニック・ナチュラル専門店でも、コンベンショナルも扱うことがあるので、消費者が間違えて購入しないよう、このような表示がされています。
オーガニックを扱っていない店では、すべての商品がConventionalなので、敢えてConventionalと記載することはありません。
<肉類・乳製品>
「Grass (Forage) Fed」
草(Grass)や飼葉(Forage)を餌として育てられた(Feed)動物の製品のこと。
米農務省(USDA)は、「Grass Fed」の定義を、
「離乳前のミルクを除き生涯を通して、草(一年草・多年生植物)、広葉草本(マメ科植物、アブラナ属)、若葉、植物性の穀草類から成る飼葉のみを食べさせた反芻動物。穀物や穀物由来成分を与えてはいけない。成長期には継続的に牧草地に入れなくてはならない。干草、低水分サイレージ、貯蔵牧草、穀物を含まない作物残渣、その他食物繊維は飼料に含めてよい。定期的にミネラルやビタミンを与えても良いが、上記飼料以外の食材を偶発的に与えてしまった場合は(中略)レポートを提出しなくてはならない」
としています(米農務省ウエブサイト)。
本来、牛は牧場で草を食べて生きる動物ですが、脂身が多くやわらかい肉を作るため、狭い飼育場の中でとうもろこしなどの穀物が飼料として与えられて育てられます。
こうした人工的な畜産システムにより、さまざまな問題が起こっているため、本来の姿である牧場で草を与えて飼育する畜産農家が増えています。
米農務省は、商品に「Grass(Forage) Fed」と記載する場合は上記定義を満たしていなければならないとしていますが、あくまで自主規制なので法的拘束力はありません(NOPウエブサイト2007.10)。
また、民間団体のアメリカン・グラスフェッド協会(American Grassfed Association)が、グラスフェッドの認証を行っています。
「Naturally Raised」
自然に(Naturally)育てられた(Raised)動物の製品のこと。
米農務省(USDA)は、「Naturally Raised」の定義を、
「成長促進剤、抗生物質、哺乳類動物・鳥類・水生生物由来の飼料を与えられていない、肉や肉類の生産に使用される家畜」
としています(USDAウエブサイト)。
畜産業においては、肉質の改良や生産性を高めるために、化学薬品を投与したり、本来草食動物が食すことのない動物・水生生物由来の飼料を与えることが多く行われています。
このような不自然な状況を避け、自然な環境で家畜を育てることを求める消費者が多いため、商品ラベルやパッケージに「Naturally Raised」と記載されることがあるのです。
米農務省は、商品にこの言葉を記載する場合は、上記定義を満たしていなければならないとしていますが、あくまで自主規制なので法的拘束力はありません(NOPのウエブサイト2009.01)。
また、「Naturally Raised」の定義によると、飼料穀物を与えることは可能なので、、「Grass Fed」の方がより自然に近い畜産方法ということになります。
「Free Range」
放し飼い(Free Range)で育った動物の肉類や乳製品のこと。
米農務省は、「Free Range」を以下のように定義しています。
「動物が、飼育期間を通して飼料と新鮮な水を無制限に得ることができ、継続的に屋外に出入りできる環境下で育てられていること。屋外施設は、フェンスや網などの覆いがあってもなくてもよい。」(NOPウエブサイト)
この文言は米農務省(USDA)の規制対象なので、使用するためには上記の状況であることを証明しなければなりません(USDA Food Labeling)。
「Cage Free」
平飼い(Cage Free)で育った動物の肉類や乳製品に表示されます。
米農務省は、「Cage Free」を以下のように定義しています。
「動物が、飼育期間を通して飼料と新鮮な水を無制限に得ることができ、施設内を自由に歩きまわれる環境下で育てられていること。」(NOPウエブサイト)
一般的に、「Free Range」や「Cage Free」は、鶏肉や鶏卵に多く使われています。
こうした言葉が使われるようになったのは、現在の養鶏業では、狭い檻の中で鶏を育てる「ケージ飼い」が一般的だからです。
一般の養鶏場では、何万羽もの鶏が鶏舎内の檻の中で一匹ずつ身動きできないほどの小さな仕切りに入れられて飼われています。
鶏は羽を広げることも運動することもできず、ただひたすら目の前に供給される餌を食べ、卵を産み続け、その仕切りの中で生涯を終えます。
ただし、平飼いや放し飼いであっても、仕切られた檻がないだけで過密状況はケージ飼いと変わらないケースもあります。
米農務省では、ケージフリーであってもサルモネラ菌の発生率はケージ飼いの場合と変わらないとしています(USDAのウエブサイト)
最近は、動物愛護団体の働きかけにより、多くの企業や自治体がケージ飼いを廃止・禁止する傾向にあります(The Human Societyのウエブサイト)。
「rBGH/rBST Free」「Hormone Free, No Hormones」
牛の遺伝子組み換え成長ホルモン、ソマトトロピン(rBGH;Recombinant Bovine Growth Hormone、あるいは、rBST; Recombinant Bovine Sometribove/Somatotropin)を投与していない、ということ。
ソマトトロピンとは、動物の下垂体で自然に作られるプロテイン(成長ホルモン)のことで、乳の生産量を増やす働きがあることで知られています。
牛の乳生産量を増やすために、遺伝子組み換え技術を利用して人工的に開発されたソマトトロピンを、rBST(牛の遺伝子組み換えソマトトロピン)あるいはrBGH(牛の遺伝子組み換え成長ホルモン)と呼びます。
アメリカでは、rBGH/rBSTの使用が認可されているうえ、使用したことを表記する義務もありませんが(FDAのウエブサイト)、アメリカ以外のほとんどの国では使用自体が禁止されています。
rBGH/rBSTを投与された牛の牛乳を人が摂取することで、乳がんや大腸がんのリスクが高まるという研究結果もあります。
にもかかわらず、表記がないため、消費者が気付かずに摂取する可能性が高く、問題となっています。
これを危惧するrBGH/rBST未使用の牛乳メーカーが、商品ラベルやパッケージに「rBGH/rBST Free」や「Hormone Free」と記載したところ、rBGH/rBSTを使用する酪農家団体が抗議活動を行い、各州の司法で争われています。
司法闘争の結果、「rBGH/rBST Free」や「Hormone Free」の記載を違法あるいは限定使用すべきとした州もある一方、rBGH・rBSTを使用する乳製品の取扱を禁止した大手小売店やメーカーも多く、意見は分かれています。
rBGH/rBSTを使用していないことを証明する認証システムはまだありませんが、rBGH/rBSTを避けたい人は、認証済オーガニック製品はホルモン投与が禁止されているので、オーガニックを選ぶと良いでしょう。
また、牛肉に対して「Hormon Free」「No Hormones」と表記されることがありますが、ホルモン未投与であることを農務省に報告認知されている場合のみ表記可能です(USDA Food Labeling)。
豚や鶏へのホルモン投与は、国により禁止されています。
*日本語訳や信頼性に関する意見等は、あくまで参考のために掲載していますが、正式な記述をお探しの場合は必ず英語原文を参考になってください。
2011/12/27 訂正
2011/07/30 訂正