英マークス&スペンサー、
「世界で一番サステナブルなスーツ」を開発

Marks & Spencer Sustainable Suits
(Photo courtesy of Marks and Spencer plc)

イギリスの大手小売店マークス&スペンサーが、「世界で一番サステナブルなスーツ」を開発しました。

「世界一」というからにはすごい商品に違いありませんが、いったいどんなスーツなのでしょうか。

同社が最もこだわったのは、素材。

生地は、オーストラリア産のオーガニックウール。
単にオーガニックで育てた羊毛であるだけでなく、どの牧場の羊の毛なのかを追跡できます。
そして、繊維の染色には、イタリアの企業が開発した、有害物質未使用のGOTS認証済の節水型染色方法を採用。

裏地にはペットボトルをリサイクルした日本製ポリエステル、身頃の内部に使用されるキャンバス地とネームタグ・品質表示タグもリサイクルポリエステル、ポケットには同社製品の生産時に出た余り布を利用、ウエスト部分にも古い生地を再利用しています。

そして、ボタンは捨てられる運命にあった古いものを再利用、ジッパーはリサイクルポリエステル製。

と、とことんサステナブルな素材を採用しています。

ただし、縫製時に使用する糸は一般的なもの。
リサイクルポリエステル糸の採用を検討したものの、十分な品質ではないと判断し、断念したのだそう。

サステナビリティを実現するうえで重要な要素である、耐久性にも注目。
長く着られるよう、美しいカットと飽きのこないシンプルなデザイン、ハイクオリティな仕立てを追求しています。

さらに、ハングタグにQRコードを表示し、スキャンすれば誰でも簡単にスーツの素材や情報をダウンロードできる仕組みも考案しました。

数年もの歳月をかけて開発した、「世界一」サステナブルな"セヴィル・ロー"スーツ。
値段は、349ポンド(約43,000円)。
今年9月に、同社店舗とウエブサイトで500着限定で販売予定だそう。

イギリス産では世界一になれない?

少し残念なのは、ウール生産の長い歴史を持ち、セヴィル・ローでは世界最高品質のスーツを仕立てる技術を持つイギリスの企業であるにもかかわらず、敢えてオーストラリア産ウールを使用し、イタリアで染色・紡績、中国で縫製したこと。
そして、そのスーツを「世界で一番」サステナブルな「セヴィル・ロー」スーツと銘打ったこと。

せっかくの素晴らしい技術と歴史がありながら、本国イギリス以外に頼らざるを得なかったのは、350ポンド以下の値段で高品質を維持するという制約があったからでしょう。
これにより、安さを追求すれば本当の意味での持続可能性は実現できないという事実を、露呈してしまったといえるのかもしれません。

とはいえ、カタチばかりのCSR(企業の社会的責任)を唱える企業が多い中、マークス&スペンサーは「Plan A (Plan B<代替案>は残されていない、の意)」というサステナブル戦略の下で、積極的にサステナブル化を推し進める、環境&社会的優良企業。

このスーツの開発は、世界43地域に店舗を持ち、2,000社ものサプライヤーと取引する同社が、いかにサステナブルに生産できるかを検証する壮大な実験でもあったのです。

大企業でありながら、ここまでこだわり抜いた商品を開発したことは、手放しで称賛に値するといえるでしょう。

同社のサステナビリティへの取り組みは、これで終わりではありません。
このスーツの開発によって学び得たことを活かし、環境負荷削減に向けてさらなる発展を続け、世界で最もサステナブルな小売企業になることを目指しています。
まずは、今年中にサステナブルなレディースウェアを発表すること、今後すべてのスーツにリサイクルポリエステル製の裏地を採用することを検討しています。

見た目もスタイリッシュ、値段もお手頃、そしてなによりサステナビリティを追求し続ける、マークス&スペンサーのスーツ。

スーツの購入を計画している皆さん、
環境や社会のことを顧みないブランドものや安売りスーツではなく、「世界で一番」サステナブルなスーツ、検討してみてはいかがでしょうか。

Marks and Spencer
ウエブサイト:http://www.marksandspencer.com/

2012/06/25

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