エコデザイナーインタビュー:カオリ・ヤマザキ Vol.3
(Photo courtesy of Kaori Yamazaki)
NYで活躍する日本人エコデザイナーのカオリ・ヤマザキさん。
デザイナー集団eko-labの一員として、瞬く間にNYを代表するエコファッションデザイナーになるも、脱退。
現在は「カオリ・ヤマザキ」ブランドを展開し、アメリカのみならず、世界中のエコファッションラバーを魅了しています。
無理せず自然体にエコファション・エコライフを実現する素敵な女性、カオリ・ヤマザキさんにインタビューを敢行しました!
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Vol.2 から続く
価格の高低によって、サステナブルの度合いは変わると思いますか。
素材に関しては、そんなに違いがないと思うんです。
オーガニックでないイタリア製のコットン素材なんかでとても高いものもありますし、逆にオーガニックコットンだけど安い素材もありますから、オーガニックだから高いというわけではないと思います。
それに、イタリア製の高価な素材は手触りもよくて素敵だけど、安い生地と比較してどれだけ品質が違うかといえば、そんなには違わない。
価格に差が出る理由は、素材の違いというよりは労働に対する対価の差じゃないかなと思うんです。
オーガニックをやってる人はフェアトレードを実践している人が多いんですが、オーガニック素材を使っているからではなく、フェアトレードだから値段が高くなってしまうんだと思います。
逆に安い服を売っているブランドは、フェアトレードじゃないから、スウェットショップで労働搾取しているから、安くできるんじゃないかなと思うんです。
たとえば、H&Mなどで売っているオーガニックコットンのTシャツが20ドルで、エコバルフセットで売っているオーガニックコットンのTシャツが60ドルということがあります。
エコバルフセットがマージンをたくさん取ってるわけではありませんから、同じ素材でそこまで安くできるのは、やっぱり労働賃金を削ってるからじゃないかと思うんです。
もちろん、生産している国の生活レベルの違いもあるので、一概に安いから労働搾取していると決めつけることはできないと思います。
ただ、ミゼリコーディアというオーガニック&フェアメイドのフランスのブランドは、ペルーに専用の縫製工場を作って、ペルー産のオーガニックコットンを使って生産していますが、ペルーは生活水準も賃金も決して高いわけじゃないのに、それでも卸価格がH&Mなど安いブランドの小売価格より高くなってしまうそうです。
途上国で生産しているからといって、そこまで安くはできないんです。
大量に生産することで安くできるということもありますし、色んな要素が絡んでいるんだとは思いますが、やっぱり私はフェアメイドではないから安くできるんじゃないかと思うんです。
どこまでがフェアなのかというのもまた難しいところですけれど。
たとえば、途上国ではなくニューヨークで縫製する場合でも、州で決められている最低賃金を支払ったからといって労働者が満足に暮らせるわけではないんです。
少なくとも最低賃金を支払う必要はあると思いますが、それで十分なのかも考えなくてはならないと思います。
素材に関しては、認証がついていれば安心だと思いますか。
認証がついていれば、安全だと信じるしかないと思います。
テキサスのような遠くのオーガニックファームまでわざわざ見に行くことはできませんから。
でも、私は認証がついていない素材を使うこともあります。
毛糸に関してはローカルの素材を使いたいので、ニューヨークや近隣州のバーモントの素材を使っていますが、USDA認証を取るためにはお金がかかるので小さなファームは認証を取っていないことも多いのです。
でも、彼らと直接会って話をしてみると、完全にオーガニックでやっていることがわかります。それならば認証を取っていなくても構わないと思うんです。
自分の作品を販売するときに、お客さんに素材のことを質問されてどれだけ答えられるかが大事だと思うんです。
私自身がちゃんと素材のことを理解していれば、認証にはこだわらなくてもいいと思っています。
今、世の中では、深刻な不況とサステナビリティの盛り上がりというふたつの流れがありますが、それらはカオリさんのようなサステナブルなブランドにどう影響していますか。
色んな人に不況の影響で大変でしょうと言われるんですが、実は、シーズン毎に売上が伸びているんです。
世界各国から、一年前にはなかった新しいエコショップのバイヤーたちが声を掛けてくれるので、そうした店や商品に対する需要が増えているんだと思います。
私の周りの小さなオーガニックブランドも同じ状況だと言っています。
逆に、サステナビリティに特別力を入れていない大きなブランドでは、不況の煽りを受けて売上は落ちているし、たくさんの人がレイオフされていると聞きます。
サステナブルな生活を送るうえで、注目していることや気をつけていることはありますか。
これからやろうと思っていること、もっと広まるといいなと思っていることがあるんです。
ミミズコンポスト(ミミズを利用した廃棄物の堆肥化)です。
先日行ったコロラドでは、コンポストのシステムが非常に進んでいました。
一家に一台、市からコンポストボックスが配布されて、家の前に出してあるそのボックスにゴミが溜まると、市が回収してコンポストしてくれるんです。
ちょっとした紙など、プラスチック以外ならほぼ何でもコンポストできてしまうんです。
ニューヨークにも、コミュニティガーデンでゴミを回収して、まとめてコンポストしてくれるというシステムがありますが、毎日ゴミをそこまで持っていくのは大変なので、私は自宅でミミズコンポストをやりたいなと思っているんです。
(数日後、カオリさんから、ミミズ1,000匹とコンポストボックスを購入したというお知らせがありました。)
2009/11/14