アメリカの食品業界、成分数の少なさを競う

添加物や糖分たっぷりのスナックやジュース。
健康とはほど遠い印象のこれらジャンクフード業界に、異変が起こりつつあります。

アメリカでは、肥満の原因が子供の頃から糖分・塩分の高いスナックや飲料を口にすることにあるという認識が広まっており、何年も前から、子供向けCMの廃止や学校の自動販売機でジュースやスナックを販売することを禁止するなどの措置が取られています。
そして、その傾向は子供だけでなく、大人に対しても進みつつあります。

たとえば、糖分として使用される成分は、砂糖、コーンシロップ(ブドウ糖果糖液糖)、ステビアなど合成甘味料のうち、いったいどれが体によいのかという議論が起こったり(今年初めに、スナップルは糖分をコーンシロップから砂糖へと切り替えたそうです(ニュースソース))、ニューヨーク州では、糖分の高いソフトドリンクに18%の「肥満税」をかけることをパターソン州知事が昨年末に提案し、議論を呼んでいます。

そして、最近目に付く傾向として、ワシントンポスト紙が、ジャンクフード業界全体で、成分の数の少なさを競うようになってきたという現象を特集しています。

たとえば、ポテトチップスなどで有名なフリトレーのトルティーヤチップスのCM(上)。
スーパーに買い物に来た女性が、13もの成分が入っている他社製品のトルティーヤと比較して、フリトレーのトルティーヤの成分は、とうもろこし、ベジタブルオイル、塩の3つだけだから、フリトレー製品を選ぶ、というもの。

そして、ハーゲンダッツでは、「Five」というシリーズのアイスクリームを発売。
スキムミルク、クリーム、砂糖、卵黄の4つに、味を決めるコーヒーやミント、果実などの成分がひとつ加わり、全部で5つの成分しか使用していないことを売りにしている商品。
ところが、既存のハーゲンダッツアイスクリームでも、同じ5つの成分しか使っていないので(少なくとも成分表示にはそう書いてあります)、あえて成分数が少ないことをアピールするために「Five」シリーズを展開したと思われます。

食品業界がこうした成分数を売りにする戦略を採っているということは、消費者がそれを気にしているという証拠。
逆にいえば、消費者が成分表示を気にしはじめたから、食品業界がそれに反応したということです。

もちろん、成分が少なければいいのではなく、糖分・塩分が少ないことや添加物を使用していないこと、さらに言えば、すべての成分がオーガニックであることが、体にとっても地球にとっても本来必要なことでしょうけれど、少なくとも、成分数を少なくシンプルにするという動きが出てきていることは歓迎すべきではないでしょうか。

消費者ひとりひとりの行動は小さくても、それが広まれば、食品業界全体を動かす力になるのです。
今の社会では、野菜や動物を育てるところから食事を作るところまですべて自分で行うというわけにはいきません。
だからこそ、ひとりひとりが購入する食品の成分表示に気を配り、添加物の入っているものは購入しない、オーガニック以外購入しない、という行動を起こすことで、社会全体が変わっていくことになるのだということ、心に留めておきたいものです。

ちなみに、ワシントンポスト紙は、成分数を減らしたとはいえジャンクフードであることは変わらない、という論調で締めています。
もちろん、スナックやソフトドリンクは糖分・塩分が高く、体に良くないものには違いないですが、これまでそうしたものを食していた人が、一気にこれまでの習慣を変えてジャンクフードは一切口にしない、というのも難しいでしょうから、少しずつでも、体にやさしく、地球と共存できるものに変わっていけば、世の中全体が変わっていくのではないでしょうか。

フリトレーは近々、商品パッケージを生分解可能なものに切り替えるそうです。
たとえ体によくなくても、少なくとも地球への負荷を減らす方向へと、一歩一歩進んでいます。
食品を提供する側と消費する側、両者が意識して少しずつでも良い方向へ進めば、より良い世の中に近づいていくのかもしれませんね。

ニュースリソース:ワシントンポスト紙

フリトレー
ウエブサイト:http://www.fritolay.com/

ハーゲンダッツ「Five」
ウエブサイト: http://www.haagendazs.com/products/five.aspx

スナップル
ウエブサイト:http://www.snapple.com/

2009/05/04

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