環境にやさしい服の素材
(Photo by ep2media from Flickr.com)
コットン、ウール、ポリエステル・・服の素材は色々あるけれど、どれが環境にやさしくてどれがやさしくないのか、イマイチ良くわかりませんよね。
まず、服の素材には大きく分けて、天然繊維と化学繊維があります。
天然繊維とは、コットンや麻など植物や、ウールやシルクなど動物の毛でできている繊維のこと。
一方、化学繊維とは、ナイロンやポリエステル、レーヨン、アセテートなど、人工的に作られた繊維のこと。
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天然繊維は自然界に存在するものだから環境にやさしく、化学繊維は人工的だから環境にやさしくない、というイメージがありますが、一概にそうとは限りません。
天然繊維でも、コットンは栽培時に大量の農薬や殺虫剤が使われます。
ウール(羊毛)は、羊に成長促進剤や防虫剤が投与されたり、羊の餌となる穀物や草に農薬や殺虫剤が使われています。
オーガニックコットンやオーガニックウールなどもありますが、たとえオーガニックであっても、コットンは栽培時に大量の水を必要とし、羊のゲップには気候変動の原因となるメタンが含まれています。
安全であるはずのオーガニックも、大量に栽培・飼育されれば、大きな環境負荷を生み出すことになるのです。
また、天然繊維製の生地や服でも、染色や加工の際に有害な化学物質を使用している場合があります(オーガニックコットン)。
一方、人工的に作られる化学繊維は、有限資源である石油を主原料としていたり、生分解できなかったり、生産時に化学物質の使用が不可欠だったりと、環境面で天然繊維より劣る点が多くあります。
ただし、生分解が可能な植物由来の再生繊維もありますし、生分解不可能でもリサイクルできるポリエステルやナイロン、それに、環境に配慮した染色・加工を施している化学繊維もあります。
こうした化学繊維は、農薬や殺虫剤、化学物質を使用する天然繊維と比べて環境にやさしいこともあるのです。
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では、いったいなぜ、天然繊維に農薬や殺虫剤を使用したり、人工的に化学繊維を作るようになったのでしょうか。
ひとつの理由は 、繊維製品の需要が高まったから。
昔は、必要最小限の繊維製品が生産され、人々は数少ない製品を大切に繰り返し使っていました。
ところが、経済成長とともに、人々は必要な分だけでは満足できなくなり、おしゃれのため、あるいは、ただ所有したいといった理由で、必要以上にたくさんものを買うようになりました。
需要が増えれば、供給も増やさなければなりません。
ところが、天然繊維は、繊維のもととなる植物や動物を栽培・育成し、収穫あるいは刈り取ってから、繊維にし、糸にし、布にしなければならず、時間がかかります。
そのため、農薬や殺虫剤、化学物質によって植物や動物の成長速度を早めたり、栽培・育成にかかる時間を省ける化学繊維を作ることで、需要に見合う供給量を確保するようになったのです。
もうひとつの理由は、科学技術の発展。
技術開発により、天然繊維に似た素材を人工的に早く安く作ることができるようになりました。
さらに、天然繊維よりも機能性の高い素材も作ることができるようになり、化学繊維が広く普及したのです。
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環境のことを最優先で考えるなら、昔のように、必要最小限の製品を作り、買い、一生大切に使うべきでしょう。
でも、先進国で生活する以上、毎日同じ服を着たり、ボロボロの服を着て出掛けるわけにはいきません。
社会に適合するためにはある程度の量の製品が必要ですし、着心地のよさを追求したり、スポーツなどで機能性が必要な場合には、化学繊維は不可欠です。
それに誰だって、必要ではないけどどうしても欲しいものや、誰かのために買ってあげたいものがあるはずです。
では、どうすればよいのでしょう。
服や布製品を選ぶ際には、できる限りオーガニックの天然繊維製のものを選ぶこと。
オーガニックコットンだけでなく、オーガニックリネンやヘンプなど、さまざまな種類をバランスよく選ぶこと。
オーガニック天然繊維だけでは難しい場合は、リサイクル繊維製や生産工程で環境に配慮したことを証明する認証マークが付いているもの、環境のことを考えているブランドのものを選ぶこと。
そして、安いからとか、いつか使うかもしれないからといった理由で、不要なものを買わないこと。
たとえものがたくさんあっても、いらないものに囲まれている生活は、心を満たしてはくれません。
本当に欲しいと思えるものだけを厳選すれば、自分らしい充実した人生をになるでしょう。
みんながこうした行動を取れば、環境にやさしくない繊維やものは自然に淘汰され、社会全体がサステナブルになるはずです。
次に買い物をするとき、ちょっと立ち止まって、素材タグを見てみてください。
そして、本当に欲しいものなのか、考えてみてください。
買っても買わなくても、きっと、さわやかな気持ちになりますよ。
*エコ素材に関する詳しい説明は、こちらの本に記載されています。
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2012/01/18 改訂
2008/06/17