ニューヨーク・グリーンショー：
「スクエア・プロジェクト」
スタディ・バイ・タラ・セントジェームス
ニューヨークファッションウィーク中、サステナブルなブランドのみを集めたファッションショー「グリーン・ショー」が開催されました。
グリーン・ショーは、ボドキン、イジー・レーン、バハー・シャパー、ハウス・オブ・オーガニック、ララ・ミラー、ミスター・ラーキン、スタディ・バイ・タラ・セントジェームスの7組のエコブランドが、2日間に渡り、ショーやプレゼンテーションを行うという、なんとも贅沢なイベント。
会場となったハイエンド・セレクトショップ「キング・オブ・グリーンストリート」内にランウェイが設置され、エコメディアのエディターやバイヤーたちがサステナブルな2010春夏コレクションを堪能しました。
トップを飾ったのは、スタディ・バイ・タラ・セントジェームス。
デザイナーのタラ・セントジェームスは、エコブランド「COVET」の元クリエイティブ・デザイナーですが、スピンアウトし、自身のコレクションとフォトグラファーやミュージシャンなどのアーティストを集めたサステナブルなブランド「スタディ」を立ち上げました。
アーティストを集めたブランド、というのは、ファッションもアートのひとつと考え、それぞれのアーティストがそれぞれの領域の作品製作を行い、コラボレートするブランド、ということ。
たとえば、ファッションに関しては、ショーを行うにも広告宣伝するにも、何においてもアーティストとのコラボレーションが必要になります。
服やジュエリーをウエブ上で販売するには、商品を撮影するフォトグラファーやウエブサイトを作成するウエブアーティストが必要ですし、新作発表の場であるファッションショーを行うには、招待状を作るグラフィックアーティスト、ショー開催時の音楽を担当するミュージシャン、スタイリングを考えるスタイリスト、モデルのメークをするメークアップ・ヘアアーティストが必要です。
普通は、ショーや広告作成の時だけこうしたアーティストたちと契約するという形をとりますが、「スタディ」では、これらアーティストを全部集めてひとつのブランドとする、というおもしろいコンセプトを実践しています。
さらに、参画するアーティストそれぞれが、可能な限りサステナブルな素材を使ってサステナブルな手法で作品を製作するという、とても地球フレンドリーなアート集団でもあるのです。
今回「スタディ」が行ったショーは「スクエア・プロジェクト」と名付けられ、これまたおもしろい方法で準備・開催されました。
まずは下のビデオを見てみてください。
The Square Project from Jesse Benjamin on Vimeo.
つまり、素材を購入したりアーティスト達への支払をしたり、ショーを行うための資金すべてをみなさんの寄付によって集めよう、というプロジェクトなのです。
寄付は一口10ドルからと、かなり小口。
これなら誰でも参加できます。
参加した人は、金額に応じてさまざまなギフトや権利がもらえます。
たとえば10ドルなら、スクエアプロジェクトのブログ上でのサンキューメッセージ、50ドルなら特製ブレスレットのプレゼント、500ドル以上でショーのフロントローに座ることができ、1000ドル以上ならランウェイを飾ったコレクションの中から気に入った服を一着選び、そのデザインの服をその人のサイズで作ってくれるというゴージャスな特権がもらえます。
そして、ショーが開催されるまでに集まった資金は、なんと、54口、6,862ドル！
オバマ大統領が、国民ひとりひとりから小口の献金を得、大統領選に勝利したように、「スタディ」もプロジェクトに賛同するひとりひとりの力によってファッションショーを行えるようになったのです。
とっても民主的で、とっても暖かくて楽しいプロジェクトだと思いませんか。
こういうことを実現できちゃうニューヨーク、やっぱりすごいかもしれません。
こうして集められた資金を活用して開催されたショーには、出資者たちがたくさん集まり、熱気に溢れ、大成功を収めました。
コレクションの製作過程はブログで公開され、デザイン画の一部や、どのようにしてアイテムが製作されたかなどが順次アップされていたため、ショーでは、実際にそれらがどのような服に仕上がっているのかを確認することもでき、より一層楽しめるものに。
それぞれのアイテムは、モデルがランウェイを歩くほんの短い時間ではわかりにくいですが、すごく凝ったものばかり。
オーガニックコットン生地をテープ状にカットし、それを編み上げ、染めていくという、ものすごく労働集約的な作業を経て完成したアイテムもあり、ショーを見ているとその苦労が感じられ、感慨もひとしお。
多くのアイテムは何通りにも着られるようにデザインされており、もちろんすべてサステナブルな素材で作成されているので、とても環境・社会フレンドリーです。
製作過程を知ること、そして、たとえ資金面であっても、コンセプトに共感してもの作りに参画することで、物に愛着が沸き長く大切にしようという気持ちになります。
そんなことを改めて気付かせてくれた「スタディ」のスクエア・プロジェクト。
このプロジェクト自体が、サステナブルといえるのかもしれません。
Square Project, Study by Tara St. James
ウエブサイト：http://4equalsides.com/
2009/09/18
