スロー・ファストフードのチポレ、遺伝子組み換え原料を公表

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いつも食べている店の食品が遺伝子組み換えだとわかったら、食べるのをやめますか、それとも、公表した勇気を称えて支持しますか。

こんな大それた賭けを試みたのは、ファストフードでありながら、オーガニックやローカル産原料を積極的に取り入れているメキシカン・スロー・ファストフードのチポレ。

ウエブサイト上のみではありますが、ファストフード業界で初めて、遺伝子組み換え原料の公表に踏み切りました。

排除しきれないほど蔓延する、遺伝子組み換え

同社サイトによると、使用している原料のうち、遺伝子組み換え原料が使われているのは、以下。

バルバッコア(細切り牛肉)、ステーキ(角切り牛肉)、鶏肉、ハニービネグレットソース、ファフィータ用野菜、玄米、白米、トルティーヤ

逆に、遺伝子組み換えでないものは、以下。

カニタス(細切り豚肉)、チーズ、黒豆、白豆、ガカモレ、レタス、サルサ、サワークリーム

同社メニューの中で、トルティーヤも米も使わない商品はありませんから、要するに、すべてのメニューに遺伝子組み換え原料が含まれているということ。

ナチュラル派として知られる同社がこれだけ遺伝子組み換え原料を使用していることに、驚いた人が多い様子。

といっても、肉や野菜や米自体が遺伝子組み換えなのではありません。

ファフィータ用野菜やガカモレ、豆はオーガニック、肉は抗生物質やホルモンの投与を控えて育てられたもの、チーズやサワークリームは牧草のみで育てた牛の乳から作ったもの、とチポレは原料を厳選しています。

では、何が遺伝子組み換えなのかというと、主に、肉や米や野菜を炒めたり味付けする際に使う大豆油。

アメリカ産の大豆やトウモロコシは90%以上が遺伝子組み換えなので、これらを原料とする加工品は、オーガニックでない限り、ほとんどが遺伝子組み換え。

オーガニックの大豆油もありますが、家庭用ならともかく、大量に油を使用する全米チェーンの同社がオーガニック油に切り替えれば、価格に反映せざるを得ません。

ファストフードとはいえ、同社のブリトーやタコスは7~10ドルと、かなり高め。
これ以上価格を上げれば、顧客が離れてしまう可能性がありますし、そもそも同社は積極的にオーガニックやローカル産原料を取り入れている企業。
よほど意識の高い店でない限り、油までオーガニックにこだわるのは難しいのです。

同社は今後、遺伝子組み換えゼロに向けて取り組み、大豆油から、遺伝子組み換えが認可されていないひまわり油や米ぬか油に変えていく予定。
それでも、アメリカの食品業界事情を考えると、完全に排除するのはとても難しいのだそう。

敢えて公表する理由

こうした状況の中、同社が公表に踏み切ったのは、企業にとって透明性が大切だと考えているから。
遺伝子組み換え食品が蔓延しているとはいえ、明記すれば、事情を知らない顧客が離れてしまう可能性があります。
そのリスクにもかかわらず、同社は公表する道を選んだのです。

これを立派な行為ととらえるか、遺伝子組み換えをゼロにするまで同社の製品を食べないと考えるかは、人それぞれ。

たとえ後者を選んでも、遺伝子組み換え大豆やトウモロコシの油やシロップを使用している加工食品はとても多いため、食生活から遺伝子組み換えを排除することは難しいでしょう。

日本も輸入大豆の60%以上、トウモロコシの70%以上がアメリカ産ですから、状況は大して変わらないでしょう(農林水産省大豆農林水産省トウモロコシ)。

自社の利益のために、消費者を危険にさらして涼しい顔をしている企業は多いもの。
しかし、私たち消費者には、選ぶ権利があります。
正しい知識を身につけて、自分や社会にとってメリットのある製品を選べば、自然に自社のことしか考えない企業は淘汰されていくでしょう。

*そもそも、遺伝子組み換えって何?という方はこちらから!

Chipotle
ウエブサイト:http://www.chipotle.com

2013/06/25

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