使用済ホテル石鹸のリサイクルプロジェクト

Hotel Soap Recycle
(Photo by micmol)

滞在中に数回しか使う機会のない、ホテルの固形石鹸。
チェックアウト後にどう処理されているのか、気になったことありませんか。

回収された使用済石鹸は、ほとんどの場合、再利用されることなく廃棄されます。
その数なんと、アメリカ国内で1日に260万個(Global Soap Projectより)。

一方で、石鹸を購入する経済的余裕がなく、不衛生が原因で死に至る子供たちが世界には大勢います。

この無駄と矛盾を何とかしようという動きが、全米で起こっています。

捨てられる運命にある使用済石鹸をホテルから回収、再成型し、石鹸を得られずに困っている国・地域・施設の人々に届けるというプロジェクトが、2つの非営利団体「グローバル・ソープ・プロジェクト」「クリーン・ザ・ワールド」と各ホテルとの協業で行われています。

両NPOはいずれも2009年に設立されましたが、前者はアトランタ、後者はフロリダを拠点とし、それぞれ異なる方法で石鹸リサイクル活動を行っています。

ウガンダ出身男性が手がけるプロジェクト

グローバル・ソープ・プロジェクトは、ウガンダ出身のデレック・カヨンゴさんが創設したNPO。
カヨンゴさんは、70年代のアミン大統領の大量殺戮時代にウガンダからケニヤに逃れて難民となり、後にアメリカに移住して大学を卒業し、いくつかの非営利団体で働いた後NPOを立ち上げたという経歴の持ち主。
自身が体験した辛い難民生活と同様の生活を強いられている子供たちに、何か手助けをしたいという思いで始めたプロジェクトなのです。

グローバル・ソープ・プロジェクトでは、使用済石鹸の回収作業と倉庫への配送・送付をホテル負担で行ってもらい、届いた石鹸をボランティアの手により種類別に分別、異物を除去、再成型し、専門機関により病原菌の付着がないかを検査した後、NGOのの協力の下、各国・地域・施設に配送するという方法を採っています。

これまでに300以上の米国内ホテルと提携し、ウガンダに600個、ハイチに600個、スワジランドに1万個、ガーナに2万個、ケニヤに5,000個、そして、提携NGOを通じて、アフリカのスーダン、中米のセントルチア、中東のアフガニスタン、中央アジアのウズベキスタンなど世界各地に計25トンのリサイクル石鹸を無料で配布しています。

2011年にはヒルトンホテルグループとの提携が実現し、初年度100万個以上の石鹸の回収が見込まれるうえ、3年間で130万ドルの寄付金を得ることに成功しました。
また、カヨンゴさんは、CNNの2011ヒーロー・オブ・イヤーの最終候補10人にも選出されています。

規模の大きなアメリカNPO

一方、クリーン・ザ・ワールドは、フロリダの2人のアメリカ人、ショーン・サイプラーさんとポール・ティルさんが設立したNPO。

グローバル・ソープ・プロジェクトよりも規模が大きく、洗練されたプロセスで、石鹸のみならず使用済シャンプー、リンス、ローションの回収・リサイクルも行っています。

回収プロセスは、提携ホテルから月々1部屋65セント~1ドルの手数料を徴収する代わりに、ホテル側に回収ボックスや回収マニュアルビデオ、ポスターなどの広告資材を提供し、ボックスの回収・倉庫への配送はクリーン・ザ・ワールド負担で行うというもの。
石鹸は、再成型せずに消毒処理したものを配布することもありますが、州の認証済検査機関で検査しているので、衛生上の問題はありません。

リサイクル工場は、オーランド、ラスベガス、カナダのバンクーバー、トロントの4拠点にあり、オーランドの工場では1日に4万個の石鹸をリサイクルできます。

これまでに、シェラトンやWホテルなどを傘下に持つスターウッドグループ、ディズニーワールドリゾート、マンダリンホテルなど1,200以上の北米ホテルと提携し、600トン以上の使用済石鹸を回収、900万個以上のリサイクル石鹸を米国含め45ヵ国に配布しています。
東日本大震災の際には、7,000個のリサイクル石鹸を東北に寄付したのだそう。

2つの組織は、規模も方法も異なりますが、ゴミを減らして有効活用するという同じ使命の下、活動を続けています。

提携しているホテルは、各ウエブサイトにて確認できます。

Global Soap Project
ウエブサイト:http://www.globalsoap.org/

Clean the world
ウエブサイト:http://www.cleantheworld.org/

2011/12/16

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