エコデザイナーインタビュー:カオリ・ヤマザキ Vol.1

kaori yamazaki

NYで活躍する日本人エコデザイナーのカオリ・ヤマザキさん。
デザイナー集団eko-labの一員として、瞬く間にNYを代表するエコファッションデザイナーになるも、脱退。
現在は「カオリ・ヤマザキ」ブランドを展開し、アメリカのみならず、世界中のエコファッションラバーを魅了しています。
無理せず自然体にエコファション・エコライフを実現する素敵な女性、カオリ・ヤマザキさんにインタビューを敢行しました!

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デザイナーになった経緯を教えてください。

ニューヨークにある、Fashion Institute of Technology(FIT)という大学でテキスタイルデザインの学位を取り、その後、友達の紹介で、デザイナーのテス・ギバーソンのアシスタントとしてインターンをすることになりました。
私はファッションデザインについては何も知らなかったのですが、彼女の作品にはクロシェや刺繍が多かったこともあり、テスは、テキスタイルデザイン学部出身の私を気に入ってくれました。
2年間そこでインターンし、その間に、パターンメイキングやソーイングのスキルを学びました。
その後、アート・フィンド・ファンデーションという、今のエコバルフセットの前身の店のオーナー、ヨハナとテスが知り合いだったこともあり、テスが私の作品をその店に置いてみたら、と薦めてくれたのです。
それがきっかけで自分の作品を作り始めました。
一度作り始めたら、あれもこれもと、やりたいことが色々と膨らんできたんです。

カオリさんは、日本では上智大学の英語学部出身だそうですが、なぜそこからテキスタイルデザインの道に進もうと思ったのですか。

そうですよね、めずらしいですよね。
もともと、母親が織物や染色などをしていたこともあり、テキスタイルがずっと好きだったんです。
だから、本当は日本でも美大に行きたかったんです。
でも、親にアーティストになってどうするの、と言われ、そうだよね、と思い、とりあえず上智に行ったんです。楽しかったんですけどね、4年間。
大学では、美術研究会に入って、陶芸をやったり、映画を作ったりして、そういう友達の輪を広げていたんです。
でも、卒業が近づいても、就職する気にはどうしてもなれなくて、いくつかテストとして就職活動はしてみたんですが、やっぱりその気にはなれず、大学を卒業してしまいました。
その後、アートの世界でも学歴が大切になることがあるかなと思ったことと、4年間東京で暮らしてみて東京はもう十分と思ったこと、外国に行きたかったことから、留学を検討したんです。
予算内でテキスタイルデザインが学べる大学はそこしかなかったので、FITに留学しました。

サステナビリティに目覚めたきっかけは何だったのですか。

2006年に、私の作品を扱っていたアート・フィンドがエコバルフセットに変わり、オーナーのヨハナが、これからはオーガニックのものしか売らない、と決めたんです。
最初はオーガニックコットンが何かもわからなかったのですが、とにかく店に商品を置きたいならオーガニックにしないと、という感じでした。
そこから、オーガニックコットンを購入して作品を作り始め、色々な人と意見交換をしながら、サステナブルについて学んでいったんです。

その頃と今とは、サステナビリティに対する考え方は変わりましたか。

そうですね、だいぶ変わったと思います。

どういう風に変わりましたか。

そうですね・・・アート・フィンドの時代からそうだったんですが、ファッションをやってる自分がなんだかしっくりこなくて、今でもファッションデザイナーっていう肩書きがなんかイヤなんですよね。
ファッションがやりたくてオーガニックにしているのではなく、自分のやっていることが自分が住んでいる世界に還元されていくから、サステナブルでいたいというか。
たまたま今はファッションを通してやっているというだけで、自分の行いが良い方向に還元されている、ということが大事だと思うんです。
私の行いなんて世の中全体で見ればすごく小さなことかもしれないし、自己満足かもしれないけど、自分のやっていることで悪い影響を与えたくない、って思っているんです。

ファッションはしっくりこないということですが、今後違う方向に進もうと考えているのですか。

ファッションはもちろん続けていきますが、まだ夢の段階なんですけど、いずれ長く使えるものを作るという方向にシフトしていけたらいいなって考えているんです。
たとえば、FITのときにやっていた織物を再開して、手織りのブランケットとか作りたいなと思っています。
母が織り機を一台持っているので、送ってもらって、少し壊れているので直して使うのもいいかな、って。
でも、まだファッションは続けますよ。もっとやれるところまでやって、ファッションの世界である程度地位を築いてから、そういう方向に行きたいなと思っています。

デザインやものづくりのインスピレーションは、どこから得ているんですか。

自分が着たいもの、自分が着て心地がいいもの、がベースです。
もともと突飛なデザインや奇抜な格好は好きではないので、どうしてもベーシックになってしまうんですが、デザインする際に最初に考えるのは、今何が私に必要かな、っていうことです。必要じゃないものは、基本的には要らないものだと思っているんです。
たとえば、あのTシャツ、5年も着てもうだめになっちゃったから、Tシャツをつくろうかな、という感じで始めます。
服にエクストラなものがついていたり、なんでここにボタンが?というようなデザインはイヤなんです。ユニフォームやアーミージャケットみたいに、すべてのパーツが機能的で、必要で、基本的なものを作りたいと思っています。
そこに、自分なりのユニークな要素を加えるために、色のイメージを思い描いたり、本を繰ってみたりします。
布からインスピレーションを得ることもあります。
いくらデザインを考えても、ぴったり合うサステナブルな布がなければ実現できないので、スウォッチファイルをめくって、ある程度この布と決めてからデザインに入ることもあります。

Vol.2 へ続く 

2009/11/03

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