エコデザイナーインタビュー:ミカ・オーガニック Vol.1

mika organic
(Photo courtesy of Mika Organic)

絶滅危惧種の動物や自然界の生物を描いたグラフィックが素敵なミカ・オーガニック。
世界各国のグリーンファッションショップからオーダーが絶えない人気のサステナブルブランドですが、デザイナーのミカ・マチダさんは、実は日本からアメリカ・ニューヨークに移住した日本人。
キュートでほんわかした外見とはうらはらに、エチオピアの部族の村を訪問したり、ペルーのアマゾンを探検するなど、実はワイルドな行動派。
釣りや動物や自然を愛する、ピュアで熱いハートを持つミカさんに、エコデザイナーとしての思いからエチオピアやペルーでの体験まで、様々なお話を伺いました。

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デザイナーになった経緯を教えてください。

20歳頃からずっと、趣味で自分の服を作って着ていました。
ニューヨークのFIT(Fashion Institute of Technology:ファッション工科大学)でグラフィックデザインを学んでいたとき、着ていた服を友達が気に入ってくれて、"アートフィンド(エコバルフセットの前進の店。アーティストのハンドメイド作品を中心に取り扱うショップ)に作品を置いてみないか"と誘われたのです。
その友達は、シンジェン・チュン-ヒルヤードというエコデザイナーですが、彼女は学生だった当時から、アートフィンドで自分の作品を販売していました。
私はグラフィックデザイン専攻でしたし、縫製は家庭科で習った程度でしたから、最初は"自分の服を販売するなんて絶対にムリ!"と思っていたのですが、やってみたらおもしろくなってきちゃったのです。
それまでは、いわゆる"ファッションデザイナー"という職種の人に会ったことがなかったのですが、アートフィンドで作品を販売している他のデザイナーたちに会い、たくさんインスピレーションを得ました。
工業用ミシンの使い方から何から彼女たちに色々と教えてもらい、自分で服を作って売るようになりました。
私の専門はグラフィックでしたし、FITでシルクスクリーンプリントを学んでいたので、自然な流れでオリジナルのグラフィックをシルクスクリーンでプリントした服を作るようになり、"MIKA MACHIDA"というブランドを立ち上げました。

そのときはまだオーガニック素材を使用していなかったのですか。

はい。2004年か05年だったと思いますが、アートフィンドがエコバルフセットに名前を変え、オーガニック素材の作品のみ扱うようになりました。
オーナーでエコデザイナーのヨハナ・ホフリングから、現在のファッション業界や服作りがいかに環境に負荷をかけているかを聞き、とてもショックを受けました。
それからオーガニックやサステナビリティに興味を持つようになり、少しずつ学び始めました。
"MIKA MACHIDA"でもオーガニックコットンなどサステナブル素材を使用した服を作っていましたが、オーガニックのブランドとしてやっていく自信がついた09年に、ブランド名を"MIKA ORGANIC"に変えました。

MIKA ORGANICではどのような素材を使用しているのですか。

認証済みのオーガニックコットン、オーガニックリネン、オーガニックウール、ヘンプです。
但し、小さな畜産農家が作っている毛糸などは、認証がなくても使うことがあります。小規模な農家は認証を得るための時間やお金を捻出することができないので、彼らの話を聞いて生産方法がサステナブルだと理解すれば、認証がなくても使用します。
また、最初はバンブーも使っていましたが、調べていくうちに、バンブー素材を生産する過程がサステナブルではないと考えるようになり、使わなくなりました。
ポリエステルなどの合成繊維もサステナブルではないので使いません。
リサイクル素材も使いません。リサイクルする過程で化学薬品を使用するなどサステナブルではないと思うからです。

プリントに関しては、水性インクを使用していると聞きましたが。

オーガニックに目覚める前から水性インクを使用していましたが、現在はインクの原料をチェックし、毒性のないもの、環境への負荷が最小限のものを使うようにしています。
特に最近は、主に黒インクを使うようにしています。白いインクはプラスチックが入っているからです。
本当は、天然染料を使用して天然染色を行いたいのですが、プロセスがあまりに大変なので、ビジネスとして行うのは無理だと考えています。

絶滅危惧種の保護団体に利益の5%を寄付なさっていますが、そのシステムを始めたのはMIKA ORGANICに変えてからですか。

いいえ、オーガニックにする前からです。
アートフィンド時代、デザイナー一人につき一点、サファリをテーマに作品を作るというプロジェクトを日本の企業から依頼されました。
そのときにエレファントシャツ(上写真)を作ったのですが、とても好評で、"エレファントシャツのデザイナー"として認識されるようになりました。
それに、作っているプロセスがとても楽しかったのです。
小さい頃から動物が好きで、動物の本ばかり見ていたこともあり、アイディアが次々浮かんでくるのです。自然にアニマルシリーズを作り、寄付をするようになりました。
エレファントシャツは今でも販売していますが、サファリプロジェクトで作ったものからはだいぶ改良されています。

アメリカでは動物愛護と環境保全とが混同されやすいように思いますが、ベジタリアンやヴィーガンについてはどう思われますか。

私はベジタリアンではありませんが、肉を食べる量はミニマムにするように心掛けています。世の中で起こっていることを知れば知るほど、ベジタリアンになれたらいいなとは思います。
でも、子供の頃から肉を食べる生活をしていますので、簡単には生活を変えられません。
以前エチオピアの部族の村を訪れたことがあり、彼らはとてもサステナブルな生活をしていて感銘を受けたのですが、そこでは飼っているヤギを殺して食べます。野菜だけでは栄養が取れないという理由ですし、食べきれないほどヤギを殺したりはしません。
彼らのようにサステナブルな方法であれば、肉を食べても良いと思うのですが、アメリカのように生き物を扱っているとは思えない方法で動物たちを処分するのは問題だと思います。
命のためではなく、お金のためにそういう行為を行ってはいけないと思います。
私はフィッシングがとても好きで、この仕事をしていなければ漁師になりたかったくらいなのですが、 以前は釣った魚は放しませんでしたが、現在は食べる分だけ確保して残りはリリースします。

Vo.2に続く

2010/06/12

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