世界最大のチョコレートメーカー、
カカオ生産者のサステナブル化を発表
~背後に潜む、チョコレート業界の問題点~

Chocolate
(Photo by John Loo, flickr cc)

世界最大のチョコレートメーカー、モンデリーズが、カカオ農家や産地のサステナブル化に4億ドルを投資することを発表しました。

モンデリーズとは、元クラフトフーズのこと。
今年10月、クラフトフーズが世界の菓子部門と北米食品事業に分社化した際、後者にクラフトの名前を残し、前者をモンデリーズと改名したのです。

オレオなどのブランドを持つモンデリーズ(2011年売上高約200億ドル)は、M&Mやスニッカーズのマーズ(同約162億ドル、世界2位)、キットカットのネスレ(同約128億ドル、3位)、キスチョコのハーシーズ(同約61億、5位)よりも、売上高が多い企業(International Cocoa Organization)。

その世界最大のチョコメーカーが、「カカオ・ライフ」という名のサステナブルキャンペーンを開始。
今後10年間で、コートジボワールに1億ドル、ガーナに1億ドル、その他ブラジルやドミニカ共和国、インドなどに2億ドル、合計4億ドルを投資し、カカオ生産者と地域の人々の生活改善、労働環境の改善、生産効率の向上、産地環境の保全を約束したのです。

チョコメーカー各社が取り組む、カカオのサステナブル化

実は、チョコレートメーカーがカカオ生産者の支援を発表したのは、これが最初ではありません。

売上高2位のマーズは、09年に、フェアトレードや環境保全の認証済カカオの購入率を2020年までに100%にすると約束。
同社が目指す認証は、UTZ(コーヒー、ココア、お茶の生産に関する、サステイナブル農法の導入、地域の環境保全、生産者の労働環境改善の認証)、レインフォレスト・アライアンス(生態系保全、人々の持続可能な生活環境の認証)、フェアトレード・インターナショナル(フェアトレード認証)の3団体。

今年4月には、ロシェやヌテラなどのブランドを傘下に持つ世界4位のチョコレートメーカー、イタリアのフェレロが、この動きに追随。
UTZ、レインフォレスト・アライアンス、ソース・トラストなどによる認証済カカオ購入率を2020年までに100%にすることを発表しました。

さらに、売上3位のネスレは、2011年に「カカオ・プラン」と題した、カカオ産地のサステナブル化キャンペーンを開始。
100%とは明言はしていないものの、認証済カカオの購入を増やし、産地に学校を建設するなどカカオ生産者とその地域の支援を約束しています。

各メーカーによるカカオ生産者支援の動きが盛んになるにつれ、未だ支援を発表していない大手企業に対し、人権保護団体や環境団体の圧力が増加。

これを受け、今年10月、売上5位のハーシーズが、マーズやフェレロと同様に2020年までに認証済カカオ100%にすることを発表。

そしていよいよ、売上1位のモンデリーズが動いたのです。
「カカオ・ライフ」では、100%認証済を謳っているわけではなく、投資する4億ドルがどのように使われるのかは分かりませんが、少なくとも生産者の支援を約束したのは素晴らしいこと。
また、これに先駆け、同社は10月に「コーヒー・メイド・ハッピー」というキャンペーンを開始し、2015年までにヨーロッパ向けのコーヒー豆をすべて認証済にすることを発表しています。

カカオ生産にまつわる社会問題

実は、チョコレートメーカーのこうした動きの背景には、カカオ生産にまつわるさまざまな問題があります。

ひとつは、児童労働。
本来学校に行き勉強すべき年齢の子供たちが、労働を強いられること。
貧しい国の子供たちが家業を手伝うのは悪いことではないように思われるかもしれませんが、人身売買が行われたり、行くべき学校があるにも関わらず朝から晩まで長時間労働を強いられるという、過酷な事実があるのです。
また、地域や国の将来を担う子供たちが学校で勉強できなければ、貧困問題の解決は遠のくばかり。
そのため、多くのグローバル企業が児童労働を禁止していますが、実際には、途上国生産地で今でも頻繁に行われています。
特に、カカオ産地では児童労働の比率が高いため、早急な対策が迫られているのです。

もうひとつは、需給バランス。
人口が増加し、これまで貧しかった国が豊かになると、食糧需要が増えます。
一方、地球資源は限られているもの。
増加する需要に合わせて、無限に食糧を生産できるわけではありません。
自然が持つ力を超えて生産されれば、土壌や水が汚染されて生産量が落ちるか、人々の健康被害が起こります。
穀物や野菜、肉、魚など栄養価の高い基礎食品の供給量を十分に確保できなければ、嗜好品であるチョコレートの原料となるカカオの生産量を増やすことはできないのです。
チョコレートメーカー各社は、カカオ生産のサステナブル戦略の中で、産地の環境を保全しながら、生産効率を高めてカカオ生産者の収入を増やすとしていすが、長期的に見れば、両者を実現するのは難しいことでしょう。

企業の成長が売上や利益の増加率で測られるのは、物が足りなかった時代の話。
今は、物が溢れている時代。
にも関わらず、物が足りない国や地域がある。
つまり、バランスが取れていないのです。
そして、今後人口が増え続ければ、たとえバランスが取れていても物が足りない時代が来るかもしれません。

かつて、チョコレートはとても稀少で高価な食べ物でした。
再び、物が足りない時代が来れば、嗜好品であるチョコレートは手に入り難くなるかもしれません。

背景にあるこうした問題を知れば、次にチョコレートを食べる時、フェアトレードやオーガニックに自然と手が伸びるようになるかもしれませんね。

Mondelez International
ウエブサイト:http://www.mondelezinternational.com/

2012/11/21

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