ニューヨークの地下に緑豊かな公園を作る
おもしろ企画「ローライン」

ニューヨークの人気観光スポット、高架廃線跡地に作られた空中公園ハイライン
その人気にあやかり、今度は地下の廃線跡地に公園を作ってしまおうという、おもしろい企画が進行中。
その名も、ハイラインならぬ、「ローライン」。

実際のプロジェクト名称は「デランシー・アンダーグラウンド」ですが、企画主催者はニックネームとして「ローライン」と呼んでいます。

ローラインは、1948年までウィリアムズバーグ・ブリッジ横断用の路面電車の車庫として使われていた、現在の地下鉄駅デランシーに隣接するスペースを改造し、公園にするという企画。

さらに、地下でありながら太陽光を採り入れ、芝生や草木が光合成して育つ緑豊かなグリーンスペースにするという画期的なアイディア。

地下で太陽光や光合成というのはあり得ない空想話ではなく、既に商品化されている科学技術を前提とした現実的な提案です。

地上に太陽光収集装置を設置し、採取した光を光ファイバーケーブルで地下に運び、反射板を使って照らすという仕組み。
太陽光がそのまま運ばれるので植物が光合成でき、ケーブルを通ることで紫外線が緩和されるため人体にやさしいという利点があります。
この技術は、日本では既に商品化され、一般家庭や商業ビル、公共スペースなどで利用されています。

この企画を発案したのは、NASAでの職務経験を持つジェームズ・ラムゼイ氏と、グーグル勤務の職歴を持つダン・バラシュ氏という、30代のふたり組。

ハイラインもふたりの若者のアイディアが地域や政府を巻き込み実現に至りましたが、ローラインでもまったく同じように、若いふたり組が考案した企画がロウアーイースト地域やニューヨーク市民の支援を得ながら実現に向けて進められています。

この車庫跡地は、資金難に喘ぐニューヨーク都市交通局が、収益確保の手段として再開発を検討している場所。

60,000スクエアフィート(5,574㎡)の広さがあり、商業施設やレクリエーション施設などあらゆる提案を受け入れています。

交通局はローラインに好感を示していますが、この再開発をあくまで収益手段と考えているため、公共スペースであるローラインがどこまで受け入れられるかはわかりません。
ラムゼイ・バラシュ両氏は、天候に左右されないイベントスペースとしてアートイベントやコンサート、ファーマーズマーケットの開催、また、ローカルビジネスやサステナブルビジネスの場として十分な資金回収が望めると主張しています。

ただし、ローラインは多くのメディアで取り上げられ、市民の関心が非常に高いことから、優位に立っています。

交通局などへの技術デモ用に行ったクラウドファンディングでは、2月末の開始からわずか1週間強で目標額の10万ドルを達成(Kickstarter)。

市民にとっては、単なる商業スペースより、皆が利用できる公共スペースの方が有益ですから、ローラインが支持を得るのも頷けます。

今後の展開は不透明ですが、市民や観光客にとって新たな憩いの場となることが期待されています。

Delancy Underground: Low Line
ウエブサイト:http://delanceyunderground.org/

2012/03/13

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