プーマ、環境損益計算書を発表

puma E-P&L
(Photo courtesy of Puma)

サステナビリティに力を入れるファッションコングロマリットPPR傘下のスポーツアパレル企業プーマが、環境損益計算書(E-P/L)を発表しました。
国際的な大企業としてこのような環境財務諸表を公表したのは、同社が初となります。

「環境損益計算書」とは、企業活動における環境負荷を貨幣価値に換算したもの。
つまり、企業が生み出す環境への悪影響はお金に換算するといくらになるのかを示したものです。

一方、通常企業が作成する損益計算書は、企業活動における金銭の出入を計算し、企業を貨幣価値で評価するもの。
つまり、企業が一定期間内にいくらお金を稼いだかということを示したもので、企業は稼いだお金の多さによって評価されています。

経済活動による環境汚染が進み、今後もこの状況を続ければ人類が地球で生存できなくなるかもしれないという状況下において、金銭的価値だけで企業を評価する時代は終わりを迎えつつあります。
たとえ金銭的に大きな利益が出ていても、環境に大きな負荷を与えている企業は価値が低いとみなされる時代になりつつあるのです。

こうした時代の流れを見越し、先陣を切って環境財務諸表を公表したプーマ。

プーマの環境負荷はいくら?

同社が算出した環境負荷の金銭的換算額は、9,440万ユーロ(約110億円)。
うち、プーマ社自身の負荷が720万ユーロ(7.6%)、サプライヤーなど同社以外の負荷が8,720万ユーロ(92.4%)ですが、いずれもプーマの製品を生産・販売するためにかかった負荷なので、ブランド評価としては総額で見るべきでしょう。

環境負荷といっても、この額は、温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素など6種)排出量と水使用量のみを貨幣価値に換算したもの。
同社は今後、ステージ1~3と段階を追って、上記以外の環境負荷や社会的負荷などさまざまな環境・社会的損益を貨幣換算し、最終的に「環境・社会・経済損益計算書」として発表する方針です。

今後各ステージで算出する項目は、以下のように計画されています。

  • ステージ1-1(今回発表したもの):環境負荷の経済価値
    • 温室効果ガス排出量
    • 水使用量
  • ステージ1-2:環境負荷の経済価値
    • 酸性雨を生み出す物質(二酸化硫黄、酸化窒素、アンモニア)
    • スモッグを生み出す物質(酸化窒素、一酸化炭素、粒子状物質)
    • 廃棄物
    • 土地使用による影響
  • ステージ2:社会的負荷
    • 適切な賃金、健康、安全
    • 労働条件
    • 生活基準
    • 安全性・持続性
    • 権限付与
    • 地域のまとまり
    • 人的資源
    • 多様性・男女同権
    • 健康・福祉
    • 文化遺産
  • ステージ3:経済的影響
    • 雇用創出
    • 賃金
    • 税金支払
    • 間接税支払
    • 間接雇用
    • 間接生産
    • 生産性・効率
    • 事業創造・成長

これらすべてを実現すれば、プーマは経済社会に大きな影響を与えることになるでしょう。

同社は、「環境損益計算書を公開することで、他業界・企業が、天然資源の使用を企業活動のコストと考える新たなビジネスモデルの導入を検討するよい機会となれば」としています。

現状では、環境会計における国際基準は確立されていません。
環境会計を導入していると謳う企業はあるものの、環境・社会的活動に掛かった費用を"環境ベネフィット"として算出するに留まっています。

プーマのこの活動がきっかけとなり、多くの企業が同社に追随して環境財務諸表を作成し、国際基準が整い、市場が環境コストを含めて企業を評価する時代が到来するかもしれません。

同社は、環境損益計算書の値はあくまで「同社の利益に影響を与えるものではない」としていますが、最終的には、両者を統合した損益計算書が企業の評価指標となるべきでしょう。

このような社会を実現するためには、私たち個々人が素晴らしい活動を行う企業を支持し、行動に移すことが大切でしょう。

Puma
ウエブサイト:http://www.puma.com/

PPR
ウエブサイト:http://www.ppr.com

2011/05/19

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