アバクロンビー&フィッチは
サステナブルでない企業?

abercrombie & fitch
(Photo by scalleja from flickr)

社会にやさしい企業リスト100を発表しているCR(Corporate Responsibility:企業責任)誌が、社会にやさしくない”ブラックリスト”企業30社を発表。

そこに含まれていたのは、高校生や大学生を中心に絶大な人気を誇るファッションブランド、アバクロンビー&フィッチ。

確かに、アバクロンビー&フィッチでオーガニックコットン製の商品を見かけることも、同社が環境問題に取り組んでいるという話を聞いたこともありませんが、ブラックリスト入りするというのは相当な理由があってのことでしょう。
では、いったい、アバクロンビーの何がいけないなのでしょうか。

CR誌がブラックリストを選定した基準は、"透明度の低さ"。

上場企業は、財務情報を公開することを義務付けられていますが、企業たるもの、投資家向けの財務的な情報だけでなく、従業員を正当に扱っているか、廃棄物を適切に処理しているか、といった、環境や社会に対する責任をどれだけどのように果たしているかをきちんと説明し、情報公開するべきである、というのがCR誌の考え。

こうした情報に関して法的な公開義務はありませんが、企業側が公表しなければ私たち消費者は知る術がありませんし、"社会にやさしい企業リスト100"を調査・発表しているCR誌にとっても、それら基礎情報がなければ社会にやさしいかどうかを測定することもできず、そもそもそのような不透明な企業は信頼するに値しない、というわけです。

たとえ熱心に情報公開している企業であっても、誇大にアピールしたり、虚偽の情報を発表している可能性はありますが、そのような悪い行いには、いずれ裁きが下るもの。
むしろ、情報公開すらしていないのは言語道断。裏で何か良くないことをしているから公開できないのでは、と捉えられても仕方ありません。

そんなわけで、CR誌は、"社会にやさしい企業リスト100"の調査を行った際に情報公開度合いが非常に低かった企業を、"ブラックリスト"として発表することにしたのです。

ブラックリスト内の有名企業

"ブラックリスト"に挙がった全企業はCR誌のウエブサイト(こちら:PDFが開きます)で公開されているので誰でも閲覧できますが、実は、そのほとんどがあまり知名度のない企業。
その中で、アバクロンビー&フィッチと、ダイエット関連製品・サービスを販売するウェイト・ウォッチャーズの2社は、一般消費者向けに商品を販売している知名度の高い企業として、注目を集めたのです。

CR誌の"ブラックリスト"の選定方法は、"社会にやさしい企業リスト100"と同様、ラッセル100インデックス(米国株価指数のひとつ)の中から、環境、気候変動、労使関連、人権、社会奉仕活動、コーポレート・ガナバンス、財務の7カテゴリの349データを基に行っています。
CR誌は、これらデータの収集を専門企業に依頼していますが、"ブラックリスト"に挙がった30社は、データ提供依頼に一切返答しなかったのだそう。

あくまで、アバクロンビーをはじめ、"ブラックリスト"に名前の挙がった企業は、情報を公開していないだけで、サステナブルでない行いをしているわけではありません。
でも、もし本当に環境や社会のためになる行いをしているのであれば、自然に公表したくなるはずでしょうし、公表しないのには、できない、あるいはしたくない何らかの理由があるのでしょう。

企業には企業なりの環境・社会的責任がありますが、消費者である私たちにとっての環境・社会的責任は、単に商品のデザインや価格のみにとらわれることなく、企業がどのような考えを持ち、どのような行動を取っているかを常にウォッチし、そのうえで何を購入・消費し、どう行動するかを決めることでしょう。

企業の考えや行動を知るのはなかなか難しいことですが、だからこそ、今回"ブラックリスト"を発表したCR誌の勇気を称え、不透明な企業に対して毅然とした態度で接することが、消費者としての環境・社会に対する責任といえるのかもしれません。

意図せずして環境・社会に悪い影響を与えることのないよう、購入・消費するものには慎重に選びましょう!

CR Magazine
ウエブサイト: http://www.thecro.com/

2010/04/27

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