ニューヨーク市のグリーンビル政策:
「NYCクール・ルーフ」「グリーン・ビルディング・トレーニング・プログラム」

nyc green building

車社会のアメリカにおいて、電車やバスなど公共交通機関が発達している稀有な存在のニューヨーク。
多くの都市では、車が温室効果ガスの主要な発生源となっていますが、高層ビルが密集するニューヨークでは、温暖化ガス発生要因の約80%は建築物なのです。

そこで、建築物のグリーン化強化策に乗り出したニューヨーク。
これまでにも、屋上緑化計画や市営建築物への温暖化ガス排出規制など様々な施策を行ってきましたが、この秋、「NYCクール・ルーフ」プログラムと「グリーン・ビルディング・トレーニング・プログラム」、新たにふたつの建造物グリーン化促進策を発表。

「グリーン・ビルディング・トレーニング・プログラム」は、1年間で1,000人のグリーン管理人を輩出する、というもの。
ビル管理人や運営責任者が、ビル運営に伴うエネルギー効率化やコスト削減策などに関する40時間のトレーニングを受け、プログラムを修了すれば、LEED認証を行う米グリーンビルディング・カウンシルとビルディング・パフォーマンス・インスティチュートにより、グリーン管理人として認証されます。

既に今年1月からパイロットプログラムが開始されており、プログラムを修了した認証済グリーン管理人は現在40名。さらに、今年末までに300名が修了予定だそう。そして、1年間でその数を1,000名に、というのがこのプログラムの目標なのです。

もうひとつの政策が「NYCクール・ルーフ」。
ニューヨークの市営建造物のの屋上100万スクエアフィート(92,900㎡)分を白いペンキで塗り、それにより建物の温度を下げ、省エネ効果を上げよう、という試みです。

ただ屋上を白く塗るだけのことですが、真夏日なら、屋上表面温度は華氏60度(摂氏16度)も下がり、最上階の部屋は華氏10~20度(摂氏5~10度)も室温が下がるのだそう。
そのため、冷房の必要性が減り、1階建てなら50%、5階建てなら10%もエネルギー効率が上がるとのこと。
このプログラムを完遂すれば、ニューヨーク市の温度は華氏1度下がります。

このプログラムでペンキ塗りを行うのは、ボランティア。
自分達の住む場所だから自分達で環境対策を行おう、というのは当然のことですし、市民の環境への意識を高めるうえでも、「参加」することはとても大切。
それに、屋上のペンキ塗りなら、敢えてプロに頼まなくてもできますし、ボランティアを活用すればコスト削減にも大きな効果があります。
ニューヨーク市が主張する、経済効果のある環境対策にぴったりの施策といえます。

このキャンペーンのキックオフイベントとして、ニューヨーク市は、アル・ゴア元副大統領を招聘。
クイーンズ・ロングアイランドシティにあるYMCAの屋上1万スクエアフィート(929㎡)に、ボランティアたちの手で白いペンキを塗る試みを行いました。

イベントに続き、9/24から10/9の間に、ヒートアイランド現象が市の平均値より高いロングアイランドシティにある建物の屋上10万スクエアフィート(9,290㎡)分を白く塗るパイロットプログラムを展開。
その結果を、コロンビア大学の気候システムリサーチセンターが観察し、省エネ効果とコスト削減効果を測り、来年以降に本格プロジェクトが稼動することになります。

現在、市で新築される建物は、屋上を白くすることが義務付けられていますが、古い建物の多いニューヨークでは、新築の比率は微々たるもの。
もちろん、古い建物を大切に使うのは、その分建築時の無駄を排除できるので良いことなのですが、市は2030年に30%温室効果ガス削減を達成することを目標にしており(plaNYC2030)、2030年時点でも中古建造物85%残っている試算が出ているため、中古物件を残したままでも目標達成できるよう、今回のプロジェクトに着手したというわけです。

20年以上先の目標に向かい、地球環境を守るため、必死に努力を続けるニューヨーク市。
東京も同じように環境努力を続けていますが、ニューヨークも東京も、環境負荷の高い大都市だからこそ、環境対策は人一倍必要なのだということを、世界の他都市に訴えかけているといえるでしょう。
世界中の多くの都市がこうした試みに触発され、環境対策を行えば、大きな効果が期待できます。

地球環境を守るなら、まずは自分の住む場所から。
グリーン管理者プログラムに応募するにせよ、ペンキ塗りボランティアに参加するにせよ、私たちひとりひとりができること、きっとたくさんあるはずです。

ニュースリソース:NY市ウエブサイト

1Year:1,000 Supers
(32BJ Thomas Shortman Training Fund)
ウエブサイト:http://www.1000supers.com/

2009/10/08

  • ピックアップ記事