ウォーターボトル、ステンレス vs プラスチック vs アルミ、どれがエコ? Vol.1


(Photos coutesy of Klean Kanteen (left), Kor One (center),
Brian Vallelunga from flickr (right))

ペットボトル水に代わり、主力となりつつあるウォーターボトル。
ところが、いろんな種類がありすぎて、いったいどれが環境や体にいいのかわからない、という声も。

ウォーターボトルの素材には、主に、プラスチック、ステンレス、アルミニウムの3つがありますが、どれが一番環境や体にやさしいのか、検討してみましょう。

プラスチック

プラスチックには、色々な種類があります。
ウォーターボトルに使用されるプラスチックも、メーカーによりさまざまです。

プラスチック製品を購入すると、アメリカでは下図のような、三角マークの中に1、2、3などの数字、その下にPETやHDPEなどアルファベットが書かれたマークがついています。
このマークは、米プラスチック協会(SPI:Society of Plastics Industries)が考案した"樹脂識別コード(RIC;Resin Identification Code)"というもの。
プラスチック製品を効率的にリサイクルするために、含まれる樹脂の種類でプラスチックを分類したものです。
アメリカでは多くの州で、プラスチック容器への樹脂識別コード表示が義務付けられています。

plastic recycle logos

それぞれのマークは、以下の種類のプラスチックを示しています。

#1: PETE/PET (ポリエチレン・テフタレート)
#2: HDPE (高密度ポリエチレン)
#3: PVC (ポリ塩化ビニル)
#4: LDPE (低密度ポリエチレン)
#5: PP (ポリプロピレン)
#6: PS (ポリスチレン)
#7: OTHER (その他)

#1-7は、それぞれ性質も用途も異なります(American Chemistry Counsilカリフォルニア州プラスチックリサイクル)。

#1のPETは、ペットボトルに使用されることが多い、透明で強度のあるプラスチック。
#2のHDPEは、衝撃に強く、レジ袋などに使われます。
#3のPVCは、丈夫で食品容器やハンドバッグ素材などに使われますが、製造時に可塑剤として使用されるフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)や、製造・使用時に大気や水中に排出される塩化ビニル、焼却時に発生するダイオキシンなど、環境や人体に悪影響を及ぼす危険性が高く、米食品医薬品局や環境保護庁が規制しています(米食品医薬品局米環境保護庁)。
#4のLDPEは、やわらかく、ラップなどに使用されているプラスチック。
#5のPPは、熱に強く、自動車部品や食品容器、ボトルキャップなどに使われています。
#6のPSは、CDケースや発砲スチロールなどに使用されています。
ポリスチレンの原料となるスチレンは、生殖・発達障害、白血病やリンパ腫を起こす可能性が指摘されています。
十分な証拠が揃っていないため、公式に発がん性・危険物質と認定されてはいませんが、流産や不妊の確率が増すという研究結果も出ています(米環境保護庁)。
#7その他に分類されるものは、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、PU(ポリウレタン)、PC(ポリカーボネート)など、1-6以外のすべてのプラスチックです。

これまで、ウォーターボトルに多く使用されていたのは、#7その他に含まれる、ポリカーボネートという種類のプラスチックでした。
ところが、ポリカーボネートに含まれるビスフェノールA(BPA)という成分が液中に溶け出し、胎児・乳児・幼児の脳や行動・生殖障害を起こす危険性があることが判明したため、米食品医薬品局は、食品容器へのBPA使用削減、あるいは代替物質の使用を推奨しています(米食品医薬品局)。

現在では、ウォーターボトルには、コプラスチック("トライタン"などの名前で流通)などBPAを含まない#7プラスチックや(例:KORなど)、危険性が少ない、#2のHDPE、#4のLDPE、#5のPPなどが使用されています。

ステンレス

ステンレス・スチールとは、鉄にクロムやニッケルなどを加えて錆びにくくした合金のこと。
鉄は錆びますが、クロムを混ぜることで表面に薄い膜ができ、錆びの進行を防いでくれます(ステンレス協会)。

ステンレスも、プラスチック同様にたくさん種類がありますが、原料別に以下の4種類に分かれています(British Stainless Steel Association、Euro Inoxステンレス協会)。

  • フェライト系:
    鉄、クロム(12.5-17%)、炭素(1%以下)
    厨房用品、建材、自動車部品などに使用
  • オーステナイト系:
    鉄、クロム(18%程度)、ニッケル
    家庭用品、合成繊維、工業用品などに使用
  • マルテンサイト系:
    鉄、クロム(12%程度)、炭素(1%以上)
    機械部品などに使用
  • 二相系:
    フェライト、オーステナイトの混合
    プラント用装置などに使用

最も広く使用されているのは、オーステナイト系。
ウォーターボトルに使用されることが多いのは、オーステナイト系18/8(クロム18%、ニッケル8%)という、調理器具などにも使われる高級ステンレスです。

ステンレスは、BPAを含まないうえ、丈夫で長持ちするという点で、プラスチックより優位性があるとされています。
ただし、ニッケルを含むため、ニッケルアレルギーのある人は使用できません。
使用しているステンレスの品質により人体への影響は大きく異なるので、素材や製造方法など情報を開示しているメーカーのものを選ぶ必要があります。

アルミニウム

アルミニウムは、ボーキサイトという鉱石から精錬して作られます。
強くて軽量なので、炭酸飲料やビールの缶、電車や自動車の車体にも使用されています。

アルミニウム製ウォーターボトルの問題点は、内側のコーティングに使われるエポキシ樹脂に、ビスフェノールA(BPA)が含まれていること。
昨今は、BPAを含まない樹脂コーティングに切り替えるメーカーが増えていますが(例:SIGGなど)、樹脂の成分まで開示している企業は少ないため、注意が必要です。

また、アルミニウムがアルツハイマーの原因になるという説があることも、懸念材料となっています(米労務省Alzheimer's Society)。
かつて、アルツハイマーで死亡した人の脳からアルミニウムが多く検出されたことや、腎臓障害を持つ患者が透析により体内にアルミニウムが蓄積してアルツハイマーになったことなどから、アルミニウムとアルツハイマーの因果関係が取り沙汰されるようになりましたが、現在では、両者の関係性を裏付ける十分な証拠はないとされています。
また、ボトルから漏れる程度の量なら心配する必要はないとする意見が多く、アルミ製ボトルは内側に樹脂コーティングがされているため、基本的にはアルミが溶け出すことはないとされています。
ただし、継ぎ目のある構造の容器や、コーティング部分が破損した場合は、アルミが漏れ出す可能性があります。

Vol.2に続く

2012/01/26 訂正
2009/07/09

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